スーパーヒーローたちにあこがれて

 自身のレーベル〈KAIWA(RE)CORD〉から、女優・創作あーちすと、のんによるファースト・アルバム『スーパーヒーローズ』が、満を持していよいよ5月9日にリリースされる。それは、そのタイトルの通り、音楽界のスーパーヒーローたちのバックアップによって制作された、そして、普段からロックなものが好きだという彼女が、ブルーハーツ、クロマニヨンズ、忌野清志郎といった、彼女のスーパーヒーローたちにあこがれて作ったというフルアルバムである。

のん スーパーヒーローズ KAIWA(RE)CORD(2018)

 そうした指向性を反映してか、アルバム自体は(筆者の世代にはなおさらそう感じられるのか)パンクあるいはニューウェーヴを思い出させる、あるいは90年代ぽくもあるロックぽい楽曲が多く収録されている。アルバムには、「私の尊敬するアーティストの方に書いてほしいなと思った」と言うように、真島昌利、Sachiko M、尾崎亜美、高橋幸宏、矢野顕子、高野寛、といった錚々たる面々から提供された楽曲が収録され、「いろんな面を見せられるアルバムになったら」という彼女の意向が反映されている。作曲者のテイストとのんのテイストとが非常にバランスよく融合している。そこに、彼女自身の作詞作曲による曲が12曲中5曲収録されているが、こちらは先に挙げたパンクぽいテイストが統一感のある仕上がりになっている。また、彼女のバンド〈のんシガレッツ〉による演奏も収録されている。

 「お願いした中で、いちばん最初にあがって来たのが真島さんの“さぁいこう”で、どういうふうに編曲するか考え抜いて、最初はぜんぜんバンドサウンドじゃなかったんですが、最終的にライヴのバンドメンバーで演奏しようということになりました」といった経緯によって録音に参加、このバンドサウ ンドによって、アルバムの調子が特徴付けられているように感じられる。 そして、作曲陣だけではなく、演奏もまた、鈴木慶一、土屋昌巳、小原礼、屋敷豪太などなど、スーパーヒーローの面々が参加している。

 

 アルバムは、1曲目の“へーんなのっ”からいきなり勢いよく始まる。目に入るあらゆるものが変に見えてしまう、耳に入るいろいろな言葉が変に聴こえてしまう。この世界のあらゆるものに違和感を感じるといういかにもロックでパンクな曲である。が、それが、変だから、変なのに、好きであるとオルタナティヴに変化していくところが揺れ動く乙女心を表わしているのか。作曲もそうだが、作詞もまた今回はじめて手がけたものであるというが、「大人のルールってなんだよ変だ」の一行が投げ込まれているように、どこかロックな感覚が備わっている。しかし、「最初はすごくかわいいポップな曲を作ろうと思って作り始めて、かわいい言葉を使っていた」のだという。また、矢野顕子は、忌野清志郎へのオマージュとしての曲を提供。エンディングでは矢野の“ひとつだけ”のイントロが聴こえてくる。

 現在あらゆる方面への創作意欲があふれ出しているのんの、音楽への意気込みが伝わってくる作品だ。 (取材協力:Coffee&Bindery Gigi)

 


のん(non)
93年7月13日生まれ、女優・モデル・創作あーちすと。映画「この世界の片隅に」では主演声優を務める。2017年11月に初シングル“スーパーヒーローになりたい”を発表。2018年1月に2ndシングル“RUN!!!”、5月9日に、ファースト・アルバム『スーパーヒーローズ』をリリース。5月8日には、〈のんシガレッツ/ファースト・ライブ〉を渋谷クラブクアトロにて開催決定!

 


LIVE INFORMATION

のんシガレッツ/ファースト・ライブ
○5月8日(火) 18:00 開場/19:00 開演
会場:渋谷CLUB QUATTRO
出演:のんシガレッツ/大友良英/高野寛/弓木英梨乃
nondesu.jp/