四方の海は、キューバの空気をどんな風に湿らせるのだろう。アロルド・ロペス・ヌッサの新譜を聴いてふとそんなことをおもった。キューバ出身のピアニストがこれまでリリースしてきたアルバムは、キューバの外へと向かう彼の意識によってそれぞれディレクションされてきたが、この新しい音楽は、キューバの空気で耳を濡らす。島の伝統のエレガントなジェスチャーがピアノ・トリオの律を整える。それはうっとりするようなメロウな響き、それは足元をぐらつかせるアーシーな、怒りにも似たビート。ソン、ルンバ、ボレロの伝統のディテイルに彩られた、喉の奥が暑くなるようなキューバが、押し寄せる。