オハイオから大きく飛び立ったヤンチャなパイロットが、3年ぶりのフライトへ向けてコックピットに着席したよ! 今度はどんな場所まで私たちを連れ出してくれるの?――期待に胸膨らませながら2人のこれまでを振り返ろう!!

 トゥエンティ・ワン・パイロッツはUSのミレニアル世代を代表するバンドだ。650万枚以上のセールスを記録した前作『Blurryface』(2015年)で、彼らはグラミー賞を獲得。その授賞式にブリーフパンツ姿で登場したことも話題となったものだが、いよいよ10月5日に待望のニュー・アルバム『Trench』がお目見えする。その前にいま一度グループの歩みを振り返っておこう。

TWENTY ONE PILOTS Trench Fueled By Ramen/ワーナー(2018)

 

ミレニアル世代の新しいロック

 舞台はオハイオ州のコロンバス。実家の地下室で曲作りをしていたタイラー・ジョセフ(ヴォーカル/ピアノ)のもとに、ニック・トーマス(ベース)とクリス・サリー(ドラムス)が集い、トゥエンティ・ワン・パイロッツという物語が始まった。バンド名はアーサー・ミラーの戯曲「みんな我が子」から取られている。3人は2009年に自主制作盤『Twenty One Pilots』を発表し、オハイオ州内でツアーを敢行。その後、2011年にニックとクリスが脱退し、代わりにクリスと同じギター・ショップで働いていたジョシュ・ダン(ドラムス)が加わって現在の編成に。2人は2作目『Regional At Best』(2011年)を携えて精力的にライヴを行い、そのステージに圧倒された観客の口伝えという地道な方法で名前を広めていく。そしてとうとうフェルド・バイ・ラーメンと契約を交わすことになるのだ。

 ラーメンと言えばフォール・アウト・ボーイを筆頭に、パニック!アット・ザ・ディスコやジム・クラス・ヒーローズ、ファンらをブレイクさせて一大ブランドを築いたレーベル。ポップ・パンク/エモを起点にハイブリッドなロックを鳴らすアーティストが数多く在籍するこの場所は、トゥエンティ・ワン・パイロッツにぴったりのホームとなった。

 2012年の移籍第1弾EP『Three Songs』を挿み、翌年1月にグレッグ・ウェルズをプロデューサーに迎えて通算3枚目のフル・アルバム『Vessel』をリリース。鮮やかなラップと憂いを含んだ歌を自在に操るタイラーのマイク・パフォーマンス、弾丸のように強力なリズムを叩き出すジョシュのプレイが一体となったサウンドは、ヒップホップやEDMを独自のセンスで融合した〈新世代のロック〉と呼べるもの。アーバンものもクラブ・ミュージックもごく普通に親しんできた2人の目には、同作を聴いてつまらないジャンル論を繰り広げるメディア関係者がさぞかし滑稽に映った……かもしれない。

 ちなみに、日本では『Vessel』収録の“Guns For Hands”がCMに使われていち早くヒット。これに関してジョシュは「信じられないよ。活動を始めた当初は自分たちでCDを配っていた。昔はそうやって俺たちの音楽を広めていたんだ。だから、地元のオハイオから遠く離れた日本でトゥエンティ・ワン・パイロッツの曲がTVから流れ、ヒットするなんて物凄くクールだね」と、当時の取材で語っていた。