ドビュッシー没後100年を飾る感動的な名盤が登場した。落ち着いた、暖か味のある音色で、おずおずと語りだされる冒頭から、思わず惹き込まれる。トルコ出身のピアニスト、作曲家のファジル・サイは、12曲の小品からなるドビュッシーの前奏曲集第1巻を、まるで生き物のように息づかせながら弾いている。緩急や強弱、色彩を変幻自在に変化させ、時にデモーニッシュな激しい高揚を聴かせる。各小品が一つの生命体として完結し、同時に全12曲として小宇宙を形成するのが素晴らしい。続くサティ作品でも多彩な表情を聴かせているが、スタティックな佇まいを失わないのは、両作曲家の様式を踏まえてのことだろう。