INTERVIEW

Alaska Jam『EPISODE:Ⅰ』 KEYTALK小野ら多忙な4人が〈ジャム〉する理由

(左から)小野武正、石井浩平、森心言、山下賢
 

KEYTALKの小野武正(ギター)、MOP of HEADの山下賢(ドラムス)、ハロプロなどの作・編曲家としても活動する石井浩平(ベース)の3人に、現在はDALLJUB STEP CLUBでも活動する森心言(ヴォーカル)が加わって、2010年に結成されたAlaska Jam。バンド名のとおり、〈ジャム〉を基調に作り出される楽曲は、ロック、ファンク、ヒップホップなどを越境しつつ、とにかくソリッドにしてグルーヴィー。例えば、3ピースになってからのBase Ball Bearや、Suchmosのロック寄りの曲との比較も可能かもしれない。それぞれが別で活動するバンドでは、現代的なビート・ミュージックとも接点を持ちつつ、Alaska Jamとしてはあくまで生演奏にこだわり、レコーディングは一発録りで、極力オーバーダブもしないというポリシーは、異彩を放っている。

これまで着実なペースで3枚のミニ・アルバムを発表してきたが、新作EP『EPISODE:Ⅰ』は初めての自主リリース。今回の取材に関しても、小野自身が窓口となって実現したもので、それは彼らのバンドに対する本気度の表れだと言っていいだろう。11月15日には代官山UNITでのワンマン・ライヴを成功させ、来年は結成10周年。音楽的なルーツをあらためて紐解くと同時に、新たなフェイズに入ったバンドの今をメンバー全員取材で追った。

Alaska Jam EPISODE:Ⅰ ICONVICTION(2019)

多忙な4人の新たな出発

――まずは前EP『BE YOUNG! BE HAPPY!』から3年ぶりの新作を自主でリリースするに至った経緯を話してもらえますか?

小野武正(ギター)「前作を出した後も、ずっと曲作りはしてたんです。ただ、みんないろいろ他でも活動しながらの曲作りなので、ポンポン曲が出来るわけではなく、出来てはライヴで試して、ボツにしたりとか、そういう制作のスピード感もあっての3年ですね。妥協せず、4人全員がいいと思えるものを出したいっていう思いの表れでもあるかなって。あと、これまではwonderground musicにお世話になってたんですけど、いまはもうレーベル業をやっていないので、自分たちで出すことはわりと自然な流れだったというか」

森心言(ヴォーカル)「焦ってもいいものは出来ないなって、今までの活動から、何となくのアラスカの空気感としてわかってたんですよね。前作のときは〈早く出さなきゃ〉って焦りがあったかもしれないけど、今回はまずちゃんといいものを作るのが一番だなって思ったので、焦りはなかったですね」

――武正くんはKEYTALK、心言くんはDALLJUB STEP CLUBでの活動もあり、浩平くんと賢くんにしても、並行していろんな活動をしながらの3年だったわけですよね。浩平くんでいえば、作曲の仕事を多くやっていたり。

石井浩平(ベース)「そうですね。前はサポートも結構やってたんですけど、最近はSHE IS SUMMERくらいに絞ってて、あとはハロプロさんとか、バンドで言えば、omoinotakeのアレンジを手伝ったり。そういうなかでの経験を、アラスカにも取り入れられたらいいなっていうのはいつも思ってます」

――賢くんでいえば、MOP of HEADの活動はもちろん、ドラマーとしてのサポート仕事もかなり増えてますよね。向井太一くんだったり、今度m-floのサポートもするそうで、同期を使ったライヴが当たり前になったなか、バンドのライヴ感と打ち込みのビート感を兼ね備えている人が求められてることの表れかなと。

山下賢(ドラムス)「シーケンスを使うことは当たり前で、最少人数でいかに(ライヴを)やれるかっていう傾向が、3年前くらいから強くなってる気がします。なので、今はパッドにも行けて、クリックでも遊べるプレイヤーじゃないと厳しい時代になってきてると思うんですけど、僕はMOP of HEADで同期をやってきたから、何の抵抗もなく、スッと入ってはいけて。でもだからこそ、アラスカはおもしろいんですよ」

取材協力:下北沢T
 

――アラスカは完全に生音だけで、ある意味真逆ですもんね。武正くんに関しては、昨年KEYTALKがビクターからユニバーサルに移籍したじゃないですか? それに伴う活動の仕方の変化はありますか?

小野「どちらにしても専属契約なので、アラスカで音源を出すときは専属解放の手続きをしないとなんですけど、アラスカの活動を受け入れて、専属解放をさせていただいてのリリースなので、感謝ですね。それは事務所であり、KEYTALKのメンバーの理解もあってのことなので、みんなに感謝してます。今後はよりいい形で、アラスカの音楽をもっともっと作っていきたいですし、世の中の人に知ってもらいたくて。その気持ちは20代のとき以上に強くなってるかもしれない。それも今回一枚作って、〈やっぱりかっこいいな〉って、あらためて思えるものが出来たのが大きいです」

「今回EPのタイトルが『EPISODE:Ⅰ』ですけど、〈やっと出せた〉というよりは、〈ここからまた新しいことが始まる〉っていう気持ちが大きくて。まずはこれを聴いてもらって、〈じゃあ、次は何を作ろうか?〉っていう、今はそういう気持ちの方が強いですね」

 

バンアパとレッチリをミックス

――あらためて、アラスカの音楽性のルーツを紐解きたいのですが、そもそもはプレイヤーの3人がインストのジャムバンドをやっていて、そこに心言くんが加わることで、今のアラスカの原型が出来たそうですね。そもそも3人時代はどんな音楽性を志向してスタートしたのでしょうか?

小野「ドアタマは僕と賢の2人で始まってて、〈かっこいいことやりたい〉って話をしたのは覚えてるんですけど、具体的に〈ああなりたい〉みたいな名前がほとんど出てこなかったのが逆に印象的というか、〈この2人だったら、なんかかっこいいことできるはず〉って感じだったんですよね。その感じは今のアラスカのメンタリティーにも繋がってるというか、会話の中でいろんな固有名詞が出たりもするけど、最終的に〈こうなろう〉っていうのはなくて、この4人で音を出して、新しいものを作りたいっていう気持ちの方が強いですね」

山下「(当時念頭にあったバンドを)あえて言うなら、the band apartじゃない?」

小野「そうだね。バンアパはやっぱり音自体かっこいいし、メロコア・シーンに突如現れた、あの感じもかっこよかったので、ジャジーでもあり、パンクでもありっていう感じは影響受けてますね。かといって、バンアパになりたいかっていうとそうではなく、根底にはありつつも、そこからいろいろ肉づけされていって」

石井「もともと3人が好きなバンドは似てたよね。バンアパだったり、ハイスタだったり」

小野「逆に心言は日本のインディーズとかあんまり聴いてなくて、わりと洋楽ライクだったから、それも〈新しいものが出来そう〉って思えた要因ですね。テンションコードで、16分のカッティングとかで合わせるのが好きっていうのがありつつ、そこに心言っぽいメロディーの乗せ方とか、ヒップホップ・マナーとかが入ってきて。心言もいわゆるラッパーではないけど、ヒップホップを愛してて、中高のときは洋楽をめっちゃ聴いてたっていう、そのバックグラウンドが合わさったのは大きかったです」

「ファンクでロックでっていう土台は3人のときからすでにあったので、その頃から軸は変わってないと思うんですけど、僕がアラスカに出会ったとき最初にパッと浮かんだのはレッチリでした。でも、〈~になりたい〉っていうのは僕もなかったし、やればやるほど、いろんな側面が出てきた感じですね」

2013年のミニ・アルバム『HELLA HELLA GOOD!!』収録曲“モラトリアムコレスレロール”
 

――バンアパとレッチリって共通点もありつつ全然違うバンドだから、そのミックスがアラスカの土台になってるっていうのはおもしろいし、わかりやすい気がする。あとは極力オーバーダブをしないっていう、ソリッドなサウンドも特徴ですよね。

小野「普通のバンドはギター1人でも音源だとバッキングとリードの両方が鳴ってて、それはそれでいいんですけど、この4人でライヴをやるときはギター1本なわけだから、ライヴでかっこいいギターならそのまま音源にしてもかっこいいと思うし、必要最低限が一番かっこいいっていうのは自分の美学としてもあって。厳密に言うと、ギミック的に音を重ねてる部分はあって、バッキングは重ねないけど、エフェクティヴな要素とかはアリっていうのが自分のなかのルールなんです。なので、〈オーバーダブは絶対嫌〉ってことではなく、単純に〈こっちの方がかっこいい〉って思うし、バンド然としたバンドが好きなので、アラスカはそれを体現できてると思うから、そこは誇れるところですね」

――なおかつ、さっき賢くんと話したように、同期を使ってライヴをすることが当たり前の時代になったからこそ、アラスカの特異性は余計に際立ちますよね。

山下「生音だけって、逆に珍しいですもんね」

小野「音数少ない方が1本1本を太く出せるので、そこは魅力だと思います。音数が増えると、1個ずつマスキングされて、音が細くなっちゃうんで、全員の音がちゃんと太く出るっていうのも、アラスカならではの魅力かなって」

――シンセやサンプラーを使うバンドが増えたなかでの、ある種のカウンター精神があったりもしますか?

小野「いや、そこは結果的にそうなってるだけというか、単純に、こういうやり方、こういう音が好きだっていうだけですね。KEYTALKもいまは同期でいろんな音を使っていて、それはそれで素晴らしい作品になってると思うし」

「曲の作り方がセッションだっていうのも大きいと思います。誰かが作ってきたものをやるってなると、どうしても同期の音が必要になったりするかもしれないけど、僕らは4人の音しかない状態で曲作りをしているので、そのなかで一番活きるフレーズが自然と出てくる。そこに音を足しちゃうと、フレーズ自体おかしくなったり、4人のグルーヴが壊れちゃうから、曲作りの方法によって、自然と今みたいになってるのかなって。もともとジャムから始まってるから、ライヴで即興を入れたりするのも、このバンドの良さですしね」

山下「同期を使って音源をそのまま再現するのとは対極で、アラスカは付け加えるものがゼロだから、そこはバンド力が問われるところでもあるというか」

石井「大事なのは、このかっこよさをいかにわかりやすく伝えるかだと思うんですよね。うちらが言葉で〈かっこいい〉って言ってるだけじゃダメで、〈ギターのソリッドなサウンドがかっこいい〉っていうことをわかりやすく音で伝えることが必要。今回の作品はきっとそういう作品になってるんじゃないかなって」

小野「あらためて言葉にしてもチープになっちゃいますしね。やっぱり、音の説得力が一番。今回もかっこいいものができたと思うけど、もっともっと突き詰めていきたいです」

40周年 プレイリスト
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