キュウソネコカミのメジャー3作目、その名も『ギリ平成』。メタルやスカ、ミクスチャーなどのジャンルを取り入れるなど、音楽的な新挑戦もしつつ、ユーモアあふれる独自の目線で日々の怒りや時代性をうまく切り取っている。ヤマサキ セイヤ(ヴォーカル/ギター)とヨコタ シンノスケ(キーボード/ヴォーカル)に話を聞いた。

キュウソネコカミ ギリ平成 Getting Better(2018)

平成最後の12月、キュウソネコカミが前作より364日ぶりにアルバムをリリースする。その名も『ギリ平成』。時代を感じさせるタイトルだが、アルバム冒頭からキュウソ節が大爆発。“推しのいる生活”でファン心理を歌ってファンの心をギュッと掴んだかと思えば、2曲目“The band”はバンド目線で〈いつかさよならは来るけれど〉とドキッとするフレーズも飛び出す。

ヨコタ「何も考えてなかったけど、たしかにいい流れだな!」

ヤマサキ「“推しのいる生活”を書いたおかげで、そういう〈推し〉のいる人たちの気持ちがわかってきて。自分も毎日インスタに写真が上がるのを待ってるかわいい女の子とかはいるんですけど、〈推し〉と言えるほどお金は出してないんです(笑)。だからまだ違うんだよなって。でもこの曲の言う〈推し〉っていうのは異性だけじゃなくて、人にオススメできるものだったら何でもいいんです」

そして、“ただしイケメンに限らない”、“馬乗りマウンティング”、“ピクピク”など、一般人の目線や、どんな人でも経験するストレスを昇華させることも忘れない。

ヤマサキ「背伸びしたくても出来ないし、歌詞も背伸びしたらバレちゃうし。だから出来ることをやってるだけなんです。あとはやっぱり上京してないことも大きいのかもしれないですね。世に言う〈華やかなアーティスト生活〉っていうのはあえて避けてるし。きっと僕ら東京に出たら毎晩遊んで、知り合いの芸能人が増えまくって、展示会に行って、安く服買って(笑)」

ヨコタ「有名人の誕生日パーティーに出てな!」

ヤマサキ「そうそう。そういうことを避けて、みんなが思うことを思える位置にいるから、みんなと同じようにイライラしたり、冷静な目で見れたりするんやと思います」

ラストナンバーは“ギリ昭和”。〈ギリ昭和〉に生まれた彼ららしいユーモアをもって、いち時代に区切りを付けるナンバーだ。

ヤマサキ「アルバムタイトルより先にこの曲ができましたね。“ギリ昭和”の歌詞には新年号で叫ぶ部分もあって、そのアイディアありきで曲作りが始まりました(笑)」

ヨコタ「新年号が発表されてから書いたら先に誰かにやられると思って、6月にできたものをいち早く発表してます。先に曲を出しておいて、どんな年号が来ても歌詞を予約してるみたいな(笑)。もし新年号が〈ガシャマル〉とか言いにくいものだったとしても、〈言いにくいわい!〉ってズッコケるのも俺たちらしいし(笑)」

ヤマサキ「アルバムタイトルも、この(平成が終わる)タイミングってわかってるからこそのタイトルです。年号制が始まって以来、おそらく史上初の〈終わる予告〉じゃないですか。ツアーも〈ギリ平成〉までやるんで、それもあるし!」

キュウソネコカミの快進撃は、平成以降も止まることはなさそうだ。