あなたは〈テクノ法要〉をご存知だろうか。テクノ法要とは、福井市にある浄土真宗本願寺派・照恩寺の住職・朝倉行宣によるテクノのトラックに乗せてお経を読み上げる、新しいスタイルの法要のこと。新しいのはトラックだけでなく、お経の文字や仏像の映像が投影されるプロジェクション・マッピングや、レーザー・ビームなど最新鋭の視覚効果も使用されているのが大きな特徴だ。法要の舞台は年々大きくなり、昨年幕張メッセで行われた〈ニコニコ超会議2018〉では大勢が詰めかけ、生放送の視聴者数は65000ユーザーを超えた。

4月24日には、浄土真宗の仏典〈正信偈〉などを収録した初のCD作品『テクノ法要by 朝倉行宣 第1集 ~光のつながり』をリリース。昨年以上の規模が期待される〈ニコニコ超会議2019〉も控え、Mikikiでは朝倉住職と、テクノ法要の映像を手掛けるメディア・アーティスト川村健一の対談を実施。また、川村健一が講師を務めるタワーレコードのプログラム〈TOWER ACADEMY〉のTouchDesigner講座についても話を訊いた。
※ヴィジュアルプログラミング開発環境

川村健一(メディア・アーティスト/写真左)、朝倉行宣(照恩寺住職/写真右)
 

朝倉行宣 テクノ法要 by 朝倉行宣 第1集 ~光のつながり TOWER RECORDS(2019)

奇を衒ったものではなく、仏教の進化

――まずは朝倉さんにお聞きしたいのですが、そもそもテクノ法要を始めようと思ったきっかけは何ですか?

朝倉行宣「きっかけは複数あるんですけど、まずはお寺という存在の危機的な状況――若い人がお参りにいらっしゃらないのを何とかしたいという思いがあります。それと仏教というものは仏教芸術と密接に繋がっているものなのですが、〈1000年の前のものがずっと残っているのは素晴らしいけど、いつアップデートするんだろう?〉という思い。この大きな二つの思いが合致して、〈じゃあ何かやってみよう〉ということで、出来る範囲のことから始めた試みがテクノ法要なんです」

――いま〈仏教芸術のアップデート〉という言葉が出ましたけど、仏教が生まれてからずっと仏教芸術は変わっていないということですか?

朝倉「仏教芸術の歴史を考えると、お釈迦様が生きていた頃には仏教芸術というものは全くなかったと考えられています。いまでは当たり前になっている仏像というものも、お釈迦様が亡くなってから500年間は作ってはダメだとされていました。それが、一説によればヨーロッパのヘレニズム文化と交流を持つことによって仏像というものが発生したと言われています。仏教はいろんな文化との交流があって、その時代時代の感覚を取り入れた結果、現在に伝わるものになっていく。そう考えると、仏教にいまの技術を取り込むというのは、仏教をこれから先の1000年に残すための足がかりになるのではないか、と思っています」
※古代ギリシャ文化。仏像はヘレニズム文化の影響を受け、ギリシア彫刻を模して造られるようになったと言われている。

――決して突飛なことを始めるつもりではなく、それが仏教のあり方としては普通だということですね。

朝倉「はい。ですから仏像が発生した時にも〈こんなことをしてもいいの? 作っちゃダメなはずのものだぞ〉という批判もあったはずなんです。でもそれが素晴らしいものだから、2000年の歴史を持つようなものになった。例えば宇治の平等院なんて当時の人はビックリしたと思いますよ。だって絢爛豪華な装飾を施された、いわゆるアミューズメント施設ですもん。あれこそ当時の最先端の技術と想像力を最大限に働かせて、お坊さんとクリエイターが作り上げたクリエイト物だと思います。そういう挑戦を、僕を含めたいまの僧侶は怠っているのではないか、と思うんです」

――ということは、お釈迦様が亡くなった後に仏像が生まれたのが仏教芸術のひとつの革命だとしたら、テクノ法要もその革命のひとつということでしょうか?

朝倉「仏教芸術の歴史を語ると長くなるので割愛しますが、時代時代でアップデートが行われているんですね。奈良時代は奈良時代の美術があり、平安には平安の、鎌倉には鎌倉のクリエイトがあり、時代ごとに進化したり変化したりしています。現代にその変化がないということは、仏教の〈すべてのものは永遠にはありませんよ〉〈すべてのものは形を変えていきますよ〉という根本の考え方から遠くなっている気がするんです」

――そういう時代に則した変化がないことが、仏教離れが起きている原因でもあるのでしょうか?

朝倉「伝統を守っているがゆえに残っている部分もあるので単純には結論づけることはできないですが、そういう部分も大きいと思います。そこに新しいファンを取り込む工夫が不足してるんではないかなあ、と」

――なるほど。〈じゃあ新しいファンを取り込む普通とは何だろう〉と考えた時に朝倉さんが思い付いたのが〈テクノと法要のミックス〉だった、と。なぜテクノだったんですか?

朝倉「極楽浄土の音というものを表現したかったので、そうなると現実にある音よりも現実にない音の方がハマる気がしたんですよね」

〈ニコニコ超会議2018〉でのテクノ法要の模様
 

――現実にない音というのは生楽器ではない音ということですか?

朝倉「はい。自然界にはあり得ないような音で構築していくのが好ましいのかな、と。それともうひとつが、仏教の〈阿弥陀〉という言葉には〈時間を飛び越えた永遠の存在〉という意味があるのですが、時間がスキップするような音の表現をするために、例えばグリッチっていう音をよく使ったりするんです」

――そういう自然界にない音を表現するのに、テクノが向いている。

朝倉「映画の〈マトリックス〉とか、ああいう映画の影響もたくさんあるんですけど。この現実は仮想の現実・プログラムされたものである、とか。ああいうのは非常に仏教的な考え方なんですよね」

――仏教芸術をアップデートしようという時に、テクノというチョイスはすんなり出てきたんですか?

朝倉「もともと僕が大好きな音楽だったというのは大きいですけど、仏教の意味合いを考えた時に無理がなく、ぴったりハマると感じたんです。例えばハードロックで表現するとか、フォーク調の歌詞を載せようかなとかも考えたんですが、極楽というきらびやかで時間も超越した素晴らしい世界というものを表現するには、テクノというのが一番合っていて作りやすかったんですね」

――なるほど。最初は色物っぽい印象を受けましたが、〈お坊さん×メタル〉のような軽めのミクスチャーもあるのに対して、実際聴いてみるとちゃんとお経だしちゃんとテクノで、どちらも本格指向ですよね。

朝倉「僕も真面目にやってる気持ちが強くて、お経のメロディーに当たる部分は500年前や800年前のものを極力そのまま使っているんです。だから決してネタではなくて。最初はお経そのものではなく、現代風に訳したリリックを乗せようかとも思ってたんですけど、実際に経典の言葉を訳そうとすると膨大な情報量になってしまって、とても収まりがつかないんですね。だったら伝統のメロディーを大切に使わせていただいて、多くの人に興味を持ってもらうための足掛かりにしたいなと。で、テクノ法要の最後には必ず御法話というお説教をさせてもらうんですけど、説明が足りない部分はそちらできちんとフォローしています」

――たしかに現代語訳にする時、意訳になっちゃったりして、言い回しとかためらいますよね。

朝倉「本当にそういうのは難しいところで、実際の内容で語弊があったりするとそれこそ宗教界側から〈その捉え方はちょっとニュアンスが違うんじゃない?〉〈それは違うでしょ〉って言われちゃうことも当然考えられるし」

――そういうのもあってストレートな読経に。

朝倉「もともと読経のメロディーが好きなんですよね」

――お経には音程もあるんですよね。

朝倉「僕が中心的に勤めさせてもらっている〈正信偈〉というお勤めのメロディーは、実は540年ほど前に作られたもので、当時のポップソング、流行歌のメロディーを流用して作られているものなんです。だから考え様によっては、当時からポップな要素を取り入れている」

――いま聴くと、そんなにポップには聴こえないですけど(笑)。

朝倉「それは時代が違うからで。かつては落語も若者のポップ・カルチャーだったようなことです。音楽シーンでも、例えばディスコを取り入れた盆踊りがあるように、時代によって変わっていくものなんです」

――だからこそテクノ法要も自然な流れのもとに発生したもので、決して奇を衒ったものではないということですね。

朝倉「ええ。仏教と音楽というのは、実は仏教がインドで発生した時期から一体となっていまして、当時は文字がなかったので、お釈迦様の教えを残す術は言い伝えるしか方法がなかったんです。そこでただ言葉を読み上げるよりも、フシとかメロディーがあったほうが覚えやすいし、そういうテクニックが発展していったっていう説もあるんです。だから音と一緒に伝えていくというのは、仏教2500年の考え方なのかなあと思っています」

2017年に照恩寺で行われたテクノ法要の模様
 

 

年配のお坊さんから怒られたりしないんですか?

――ここからは川村さんにも参加していただき、映像のお話もお聞かせください。まずお二人の出会いはどういったものでしたか?

川村健一「僕が初めて築地本願寺でのテクノ法要を観に行った際に、演出をしていたのがTouchDesignerコミュニティでお世話になっていた森中さんという方で、〈次何か機会があったら僕も混ぜて〉ってお願いして、参加させてもらったのがきっかけです。なので、その演出を観て初めてテクノ法要を知ったんです」

――その時は朝倉さんが映像をやっていたんですか?

朝倉「最初の築地本願寺の時は映像も僕が作っていて、そこに森中さんがLEDなどの照明の演出で参加していただいてたんです。そもそも森中さんからFacebookに〈おもしろいので僕が何かできませんか?〉というメッセージが来て、そこからのコラボレーションですね。その後〈ニコニコ超会議〉というイヴェントに出ることになりまして、そこから川村さんを含むチームで参加していただくようになりました。感動しましたね」

――川村さんが最初に本願寺でテクノ法要を見た際は、どういうところに惹かれたんですか?

川村「僕も最初は申し訳ない事に、名前を見た時に〈一過性のエンタメ・イヴェントなのかな〉って思ったんです。ただ、実際に観に行ったら、〈なんでこんな自然なんだろう〉ってテクノと法要のかけ合わせにすごい可能性を感じて、変な先入観を持っていたことに気が付いたんです。で、法要の最後に朝倉さんの説法があり、そこで〈これは本当に真面目な取り組みだったんだな〉ということに気付かされて」

――音と映像での雰囲気だけじゃなく、そのお説教できちんと教えを伝えるのが重要なんですね。

朝倉「やはり伝えたいものがあるから行いを起こすわけで、あくまでも音楽と映像はきっかけで、丁寧に言葉で伝えないといけない部分もあります。最初は〈おもしろそうだな〉と思って足を運んでいただいて、伝えたいことを優しく伝えていく。そういうことを大事にしています」

――川村さんは本願寺でテクノ法要をご覧になって、自分のなかに〈こういう映像を作りたい〉というものが思い浮かびましたか?

川村「僕は音をビジュアライズするということをよくやっているので、〈これならこういう見せ方があるんじゃないか〉って思いました。それで初めて映像を作らせていただいたのが〈ニコニコ超会議〉でした」

――最初に川村さんの作った映像を見て、朝倉さんはいかがでしたか?

朝倉「世界観もバッチリ表してくれているし、本当にカッコよくて。逆にいまは川村さんが作る映像に影響を受けて音楽を作っています。〈こういう表現の仕方があるんだ〉って毎回刺激になってるし、それがどんどん発展していくのがうれしくって楽しくって」

――テクノの実世界にない音というのと、川村さんが作るデジタルの映像の相性の良さもあるんですか?

朝倉「それも当然ありますし、例えば川村さんの表現で、阿弥陀仏の仏像が突然崩れたりするんです。それって僕が理想とする形で、仏像というのは先ほども言った通り、お釈迦様が亡くなって500年経ってから作られ始めたものなんです。だから誰も正解の形を知らないものだし、阿弥陀仏も実在のものではないので、形そのものには正解がないんです。だから仏像には本来の形ってなくって、光そのものだったりしてもいいんです。これを表現するには、CGでないとできないものがたくさんあって」

――なるほど。川村さん自身は、テクノ法要以前からご自身の宗教観はお持ちだったんですか?

川村「僕は宗教をよく分からないんですよ。家にガネーシャ像が飾ってあるくらいで、それもオブジェクトとしてカッコいいくらいのもので。ただ、僕からすると朝倉さんがやられていることって非常に広告的なところも感じるんです。世の中にさまざまなサーヴィスがあって、多くの場合、ユーザーとサーヴィスの間にはギャップがあります。そのギャップをクリエイティヴで解決するのが僕らの仕事です。そういったことをこの伝統を重んじる領域で、ここまで先進的なことをやられているっていうのは、非常にすごいことだなと思っていて。ここまでエッジの効いたことってなかなかできないと思うんです」

――だってこんなこと、怒られてもおかしくないですよね。

朝倉「いえいえ。本来の坊さんの仕事というのはお釈迦様の宣伝マンであって、広報活動が中心なので」

――年配のお坊さんからしたら〈そんな邪道なことはけしからん〉という人がいたりしないんですか?

朝倉「100%の人が理解できることなんてまずあり得ないので、それぞれの主義主張があって当然です。だから一人でも二人でも支持してくださる方がいらっしゃって、それがだんだん広がっていくしかないのかなと思っていますので、批判や反対勢力があって当たり前ですよ」

――それも受けて立つ、と。

朝倉「受けて立つというよりも、しなやかに柔軟に捉えています。僕は伝統を残したいから新しいことをしたいんですが、伝統を残したいからそのままでいたいという人もいるでしょうし」

――最初は〈けしからん〉と言ってた人が説明を聞いて納得してくれた人もいるんですか?

朝倉「有難いことに、これは宗派を問わずに、たくさんの方が賛同してくださっています。心強いことですよね」

東京国立博物館で行われた大報恩寺展でのテクノ法要の模様。読経は真言宗智山派の僧侶による
 

――それはすごい。だってなかなか宗教で宗派を超えたコラボレーションってないですよね。先日、上野の東京国立博物館でテクノ法要をやられた際も、朝倉さんのトラックに真言宗のお経を乗せていて。

朝倉「普通はあり得ないですね」

――新しい動きをすることで、新しいミクスチャーも生まれていくということなんですかね。

朝倉「僕は宗派にあまり囚われていなくて、もともとはお釈迦様の教えという意味では同じだし、それぞれの違いを探すより、共通項を探すほうがハッピーだと思うんです。ルーツに戻って、みんなが手を取り合うほうがお釈迦様も望むんじゃないかなと」

 

川村さんは現代の仏師

――国立博物館での法要の映像も川村さんがご担当されていて。お二人のコラボレーションによる作品は現在どれくらいあるんですか?

川村「〈チャネル〉というオーディオ・ヴィジュアル・イヴェントを六本木SuperDeluxeでやったのと、プロジェクションマッピング協会のコンペティションにも参加して」

〈1minute Projection Mapping in Miyazaki〉用の作品。奨励作品として選出
 

朝倉「あとアメリカの〈バーニングマン〉にも川村さんの映像を素材として持って行って。世界中のさまざまなインスタレーションのなかでテクノ法要をさせていただくことになりました」
※アメリカ・ネバダ州の砂漠を街にして、各自で共同生活をしながら行われる大規模イヴェント。

――5月にはフランスのテクノのフェス(Festival Dharma Techno)にも呼ばれていて。日本のアニメなどとは別の、カルチャーとして捉えられてるということですよね。

川村「もともとはテクノとメディテーション(瞑想)や思想的なものをミックスしたイヴェントなんですね。これもありがたいことに音と光のパフォーマンスだけでなく、仏教についての話もしてほしいというオファーなので、すごくうれしくて。これぞ世界へ仏教の思いを伝えるよい機会だと思っています」

――そこに向けて新作に取り掛かるんですか?

朝倉「実は海外の仕事のスピードって、やっぱり日本と違いまして、一昨日やっとどういうスクリーンに映すかといった情報が来まして。〈ニコ超〉が終わったら、また川村さんにいろいろとお願いしないと、という感じです」

――海外では国内用と内容が違ったりするんですか?

朝倉「ええ。川村さんにスペイン語の資料をお送りして相談させていただこうと思っているところです。たぶんいまは〈ニコ超〉で手いっぱいですよね」

――そして4月27日(土)、28日(日)に行われる〈ニコニコ超会議〉なんですが、結構長丁場のステージですよね。

朝倉「テクノ法要としては2日間で合計6ステージを予定しています。他の僧侶がクリエイトする音楽もあったり、たくさんのクリエイターの方々にお手伝いいただいて、みなさまのご協力なしには不可能なイヴェントになっています。特に川村さんたちのチームは現代の仏師だと考えていて、これこそ僧侶と仏師の作り出す世界だと思っています」

 

〈TOWER ACADEMY〉で、あなたもテクノ法要並みの映像を

――〈ニコ超〉も楽しみな一方で、川村さんはTouchDesignerを広めるために、タワレコードの〈TOWER ACADEMY〉という講座でTouchDesignerの講習をされます。改めてTouchDesignerについて、簡単に説明していただけますか?

川村「TouchDesignerというのはカナダのDerivativeという会社が作っている、いわゆる開発環境なんですよね」

――開発環境?

川村「いわゆる開発っていうと、文字でプログラムを打ち込んでいくことを想像されると思うんですけど、TouchDesignerというツールはそれがヴィジュアル化されているんです。文字のプログラムを使わずに、ブロックを繋げていくことで処理を作っていきます」

――分かるような分からないような……。

川村「TouchDesignerというのはヴィジュアル・プログラミング言語と言われていて、開発の過程がヴィジュアル化されているから非常に分かりやすいんです」

――簡単なのか難しいのかちょっと分からないんですが(笑)。

朝倉「文字盤を繋げていくような感じですよね」

川村「そうです。ブロック同士を繋げていくとすぐにヴィジュアルで反映されるのが大きな特徴で。例えばウェブカメラを取り付けて、その映像を取り込みます。その映像に〈色を変えたい〉というブロックを繋げると、瞬時に映像の色が変わるんですよ。それがダイレクトに分かるので、初めての方でも取っつきやすい開発環境なんですね。他にも外部環境を取り込むことが得意で、例えば音を取り込んだり、センサーの情報を取り込んだりとかできて、音との相性は非常に良いんです」

――音と映像を作るのにも使いやすそうですね。

川村「そうです。音は信号を受け取ったあとに、波形で表示されるんですけど、例えば音の数値のマックスが0.8だとしたら、〈0.8になったらこの処理が出る〉といったエンジンを簡単に作れるんです。それが音に反応するヴィジュアルになるんですね。自分が意図しないものになることもあります」

――非常におもしろそうではあるんですが、受講するにあたって〈パソコンでこれくらいはやれてね〉みたいな基準はあります?

川村「いや、それを教えるのがこの〈TOWER ACADEMY〉なので、パソコンがあれば大丈夫です」

――本当ですか!

川村「ただ、パソコンのスペックはけっこう良いものである必要はあります。良いパソコンとやる気さえあれば、誰でも付いて来れると思いますよ」

――朝倉さんも興味ありそうですね。

朝倉「実はかなりやりたくって、僕も習いに行きたいくらいなんです。実は僕もいま、VJ用のソフトを使って音に反応する映像というものに挑戦していて」

――朝倉さんが? 大丈夫なんですか、本来のお坊さんの仕事はちゃんとやっているんですか(笑)?

朝倉「だ、だ、大丈夫ですよ!」

――音も本格的にやってらっしゃるのに映像までやってたら時間足りないんじゃないですか?

朝倉「いやいや、できる範囲のなかで楽しんでやっているので。ただVJ用のソフトでは川村さんが作るような映像は作れないわけで」

川村「VJソフトってのは、すでにある画像や映像の素材をミックスしたり出し分けるものなんですね。なので、リアルタイムに絵を作ることはできないんです。TouchDesignerは絵そのものを作ることができるんですよね。もっと言ってしまえば、TouchDesignerを使えばVJソフト自体も作れちゃうわけです。システムも素材も作れます」

――なるほど。いままさに録っている映像をリアルタイムで利用したりもできる。

川村「従来のVJというのはその場の雰囲気に合わせて、〈いまこういう雰囲気だからこういう映像を出そう〉と目利きをして出していますよね。もちろんTouchDesignerでもそれはできるんですが、Touchの場合は絵自体を、センサーの値や音の圧力を使って作ったり、変化させたりすることができるんです。だからよりその場の雰囲気に合った表現をしやすいと思います」

――音楽メディアが移行しつつあるなかで、映像の需要というのは常にあると思うんですが、いかがですか?

川村「最近CGのMV撮影もして、それもTouchDesignerで制作したんですが、MVに需要がある一方で、人間って生ものも好きで。ライヴの熱量ってハマるポイントじゃないですか。なので既存の映像もライヴの熱量もうまく取り込めるのはTouchDesignerの大きな特徴のひとつだと思います」

――じゃあ、これまではプロの人がそれなりのお金をかけて作っていた映像が、〈TOWER ACADEMY〉でTouchDesignerを学ぶこと作れる可能性もあるということですね。

川村「全然できると思いますよ。趣味だけでなく、仕事にも繋がる講座になると思います」

――前回〈タワー・クリエイティブ・アカデミー〉という名前でプレ版をやった際は、どんな感じの生徒さんがいらっしゃいましたか?

川村「TouchDesignerをやってらっしゃる方自体が仕事も年齢層もバラバラで。受講された方たちのなかには、学生やいわゆるクリエイターの人もいますし、ハード会社の人もいるし、大学の教授やTV局の人、銀行員もいたりする。本当に多様です。それだけ誰でもできるっていうことだし、活かせる場は多いと思います」

――朝倉さんも注目ですね。

朝倉「そうですね。TouchDesignerで僕がすごいと思うのは、音だけでなくいろいろな外部情報に対応できるところで。ただの道具ではなくて、いろいろな人の行動とか想いとかを表現できるツールとしてすごく拡がりがあるんじゃないかなと想像していますね。例えば講座にテクノ法要の曲を提供させてもらって、それを題材にいろんな生徒さんが作った映像を公開していくとか。映像のコミュニティーの拡がりもあると思うんです」

――なるほど、それは良いですね。じゃあ朝倉さん、講座でタダで映像作ってもらいましょう(笑)。

朝倉「製作費がけっこうかかるのでね……。それを集めて総集編DVDをリリースするとか(笑)」

――それだ! 決まり(笑)! では、最後に一言お願いいたします。

朝倉「僕は何気ない小っちゃな行動を起こしただけなんですけど、こんなにいろいろな協力者の方々が集まってくれて本当に感謝していますし、それがこれからTouchDesignerの世界でも繋がっていくんだと思います。一つの輪ができていくというか、何でも繋がることの大切さを教えてくれるものだなと感じています」

川村「そうですね。朝倉さんもそうですが、何でも始めるということが非常に重要だと思うんですよ。いまって何でも便利なので、何か始めることに腰が重くなりがちな時代だと思うんです。でも、そこを動いたか/動いていないかで明確な差が出てきます。そういう意味ではTouchDesignerというツールは、音でも映像でもいろんなジャンルを越境しやすくて、画面上でただブロックをただ繋げばいいだけの、極めて使いやすいツールです。大事なのは技術よりもマインドで、いまの場所に留まらずに一歩踏み出してほしいですね。


Event Information
〈TOWER ACADEMY〉​TouchDesigner講座~Basic編~
5月11日(土)~、原則毎週土曜日(3時間・初回4時間/全8回)
詳細はhttps://tower.ac/type_course/touchdesigner-basic/