ダブ・テクノ――90年代前半、独ベルリンのレーベル、ベーシック・チャンネルを起点に誕生したスモーキーでヒプノティックなダンス・ミュージックは、いまも世界中の作り手にインスピレーションを与えています。今回、登場するFLATPLAYもそのひとり。東京拠点のトラックメイカーである彼は、2019年からD.A.N.のライヴ・メンバーとしても活動していました。

 「D.A.N.とは幼馴染なんですよ。僕はもともと乾燥胎児という2人組のノイズ・ユニットをやっていたんですけど、ソロになってテクノを作りはじめました」。

FLATPLAY 『the Attitude for Prayers』 Native Archives/BAYON PRODUCTION(2024)

 2018年にリリースされた初EP『First Extendet Play』以降、継続的に楽曲発表を重ねてきた彼が、ついにファースト・アルバムを完成。メロディックなテクノをベースに、ディレイやエコー、リヴァーブといった多彩なダブ処理を施したその『the Attitude for Prayers』は、FLATPLAYにとって、探求結果を提示する作品になりました。

 「当然ベーシック・チャンネルは大好きなんですけど、数年前に(そのサブ・レーベルでよりレゲエ要素の濃い)リズム&サウンドの10インチをクラブで鳴らしたときに、あの低音の凄さにやられてしまって。それから、ニュー・ルーツから初期のレゲエまでダブ的な音楽全般を熱心に聴くようになった。とにかく自分の身体に馴染ませないと、あのグルーヴは出てこないと思ったんです」。

 リード・シングルとして発表された表題曲“the Attitude for Prayers”は、地を這うベースラインと五臓六腑に響くバックビート、憂いに溢れるメロディカの音色を重ねた、まさにリズム&サウンドの系譜上にあるミニマル・ダブ。アルバムには、よりステッパーズ色を強めたヴァージョンも収録されています。

 「自分がドラマーというのもあり、ダブもリズム面での遊びに最初は惹かれたんです。ビートにダブ処理をかけることにより、グルーヴが多重レイヤー化していくというか、綻びが生まれて、うねりが出るところがおもしろいなって」。

 今回のアルバムには、フロア映えのする“You Got an Invisible Body”、陶酔感に溢れた“Judgment Ray”、過去の楽曲からの連続性を感じさせる“Spirytus”、そのダブ・ヴァージョンにあたる“Beginning Dub”などFLATPLAYの美意識で統一された9曲を搭載。このリズムとサウンドに身も心も溶かされてしまったリスナーは、8月23日に下北沢LIVE HAUSで開催予定のリリース・パーティーへと足を運びましょう。

 


FLATPLAY:トラックメイカー/DJのSohei Shinozakiによるソロ・ユニット。2018年から楽曲の発表を始め、このたびファースト・アルバム『the Attitude for Prayers』を配信リリースしたばかり。