音楽ライターの南波一海がタワーレコード内に設立したアイドル専門レーベル、PENGUIN DISCの看板4人娘=RYUTistが、ニュー・シングル“センシティブサイン”を4月23日にリリースした。表題曲は21歳のシンガー・ソングライター、シンリズムが作詞・作編曲を担当。さらに、カップリングの“素敵にあこがれて”はカメラ=万年筆/Orangeadeの佐藤望が作詞・作編曲、“バ・バ・バカンス!”はmicrostarとWack Wack Rhythm Bandが共作と、ポップ・ファン垂涎の3曲を収めたCDになっている。

RYUTist センシティブサイン PENGUIN DISC(2019)

Mikikiでは同シングルのリリースを記念し、プロインタヴュアーの吉田豪がメンバーひとりひとりに個別インタヴュー! 横山実郁編に続く第2回は、宇野友恵編を掲載する。ズル休みをしていた幼少時代から〈不思議ちゃん〉だったRYUTist初期時代、自身を〈空っぽ〉としながらも本や音楽に傾倒しだんだんと人間らしくなっているという現在まで、吉田豪がじっくり迫っている。 *Mikiki編集部

★“センシティブサイン”リリース記念、メンバー個別インタヴュー:記事一覧

(左から)RYUTistの五十嵐夢羽、宇野友恵、インタヴュアーの吉田豪、横山実郁、佐藤乃々子

 


よくやらかします

――かなり緊張してるみたいですけど、緩やかに始めます!

「はい、お願いします」

――ご自分はどんな性格ですか?

「性格……人見知り。すぐ真っ白になっちゃうんですよね。質問されてることに対して……」

――〈いま何を訊かれてるんだっけ?〉みたいな。

「そうなんですよ。しゃべってる間に、〈あれ、なんだったっけ?〉って思っちゃったり、ほかの子が言ったことと同じことを言っちゃったり」

――それ、インタヴューで一番やっちゃいけないことですよね。

「そうなんです(笑)」

――よくやらかすタイプ。

「よくやらかします」

――そんなイメージはありますね。

「すみません……」

――ぜんぜん大丈夫です、ひとりなら誰とも被らない!

「はい!」

℃-uteさんを観て、私もやってみたいなって

――もともと、どんなお子さんだったんですか?

「小っちゃい頃のことはあんまり覚えてないんですけど、でも当時のほうが活発で、お姉ちゃんに〈声が大きい〉って怒られたことがあって。それからはもうちょっと声を小さくしようと思ったら、逆に小っちゃすぎて怒られることになっちゃいました」

――昔はもうちょっとのびのびしていた。何があったんですかね?

「甘やかされすぎたかもしれない」

――基本、まじめでおとなしいイメージなんですけどね。

「いや、そんなことないです。まじめ……ではないですね。習いごともすぐ辞めちゃったり。水泳は3か月で辞めました。3か月のあいだの1か月ぐらいは、水泳の日になるとお腹が痛いとか頭が痛いって言って早退したり」

――それはホントに痛いわけじゃなくて?

「仮病です! 行きたくなさすぎて。連絡帳に先生がコメントを書くんですけど、〈毎週金曜日になると友恵さんは具合が悪くなるんですけど大丈夫ですか?〉って書かれてました」

――〈ストレスですか?〉みたいな。

「仮病でした、水泳に行きたくなくて。ピアノもそうでした」

――それって何が嫌だったんですか? 学校以外の人と何かするのがしんどかったのか、ちょっと怖い感じだったとか。

「練習が嫌でした。練習していかないと……」

――いまは死ぬほど練習しているグループに所属しているわけじゃないですか。

「フフフフフ、RYUTistはすごい楽しくやってるんですけど、ピアノは楽譜が覚えられなかったり、練習しても手が回らなくて、ずっと辞めたい辞めたいって思ってたんです。3歳から始めて小学校4年生ぐらいまでやらされて、小学5年生ぐらいのときにソロで発表会に出ることになって、これに出たら辞めようって決めてたんですけど、出たらちょっと楽しくなっちゃって。そこからはまた続けることになりました」

――じゃあ、ピアノは意外と続いたんですね。

「はい、達成感が気持ちよかったんです」

――ピアノはいまの仕事でもプラスになってるわけじゃないですか、楽譜が読めたり、音がなんとなくわかったり。

「そうですね、RYUTistには少しだけど役に立ててます」

RYUTistのニュー・シングル“センシティブサイン”
 

――当時は何になりたいとかあったんですか?

「そのときからアイドルさんになりたいなっていうのはありました。小学校3年生のときに『きらりん☆レボリューション』を観て、久住小春ちゃんが好きで、それがきっかけ……じゃないな」

――じゃなかった!

「お姉ちゃんが℃-uteさんが好きで、いっぱい映像で観てて、かわいいなって思って。私もやってみたいなと思いました」

――そのふたつが同時期にあって、私もアップフロント(プロモーション)に入りたい、みたいな野心が。

「ありました。ただ、さすがにアップフロントさんは東京さんに住まなきゃいけないので、オーディションを受けるという選択肢がなくて。それでたまたまお姉ちゃんがRYUTistのオーディションのフライヤーを見つけてきてくれて、すぐに受けるって決めました。そしたら受かりました。ビックリしました」

――それで最初の5人が揃って、メンバーはどんな感じでした?

「メンバーは……私は孤立してたほうかもしれないです。なんとなく仲良くしてて、一緒にお菓子を食べたりしてたんですけど、私がちょっと変なキャラを演じてたのか素なのか……いまはこうなので演じてたっていうのが正しいと思うんですけど」

――不思議ちゃん感があったんですか?

「不思議ちゃん感を出してましたね。練習のスタジオの床にボコッと板が出てたところがあって、そこを叩いて〈どうしたの?〉って言ったり」

――……ほう。

「まっくろくろすけが見えるとか言ったり」

――うわーっ!

「ヤバいですよね(苦笑)」

――それを本気でやってたんですか?

「そのときは本気でした。リハーサルのときにまっくろくろすけが見えたって言って、〈怖い怖い怖い!〉って。アクエリアスだかポカリを飲んだら塩感が出て見えなくなった、みたいな」

――ああ、お清めの塩みたいな感じで。

「そう、意味がわからないですよね。私もいま考えるとありえないなって」

――結成直後ぐらいから一緒にお仕事してますけど、たしかにちょっと浮いてる感じはあると思ってました。

「そうなんです。自分しか見てない感じがすごかったですよね」

――年齢的にもちょうど真ん中っていうのもあるのかなと思いながらぼんやり見てたんですけど、一番まじめに勉強やってる人っていう印象もあります。

「勉強は……いや、そんなことなかったかもしれない。テスト前だけ一生懸命やる感じでした」

――あこがれのアイドルになってみてどうでした?

「なったときはうれしくて、これからも気合い入れてがんばっていくぞー!って感じだったんですけど、思ったより厳しくて。RYUTistになったとき、中学校1年生だったんですけど、クラスの子から無視されて」

――ああ、〈あいつ調子に乗ってるぜ〉みたいな。

「はい。幼なじみの子が言いふらしちゃったんですよね、〈友恵がこんなのに出るよ〉みたいな感じで。たぶんそれもあると思うんですけど、クラスでそんなに目立つ存在でもなかったのが、それで急に出てきて〈ちょっと浮かれてんじゃないの?〉みたいな感じで思われたのかもしれないです」

――つまり、RYUTistの活動が始まるなり不穏な空気が!

「そうですね(笑)。でも、そのときは気にしなくて。もう完全に孤立した感じになっちゃってからは、活動を辞めたほうがいいのかなって一瞬思ったりもしたんですけど。まだ始めたばっかりだし知名度もまったくなかったので、自分のやりたいことを親から許可もらってやらせてもらってるんだからがんばろうと思って続けてました」

――学校はなんとかなったんですか?

「先生が優しくて、クラスの女の子たちと話し合ってくれて和解しました。その(無視をされた)子とはいま仲良くしてます」

――いろいろ心配だったんですよ、学校には馴染めてるのかなとか。

「フフフフ、馴染めてはいなかったかもしれない(苦笑)。でも、あんまり学校に興味なかったので。RYUTistのことを一番に考えてやってたので、そんなにダメージはなかったです」

――RYUTistにも馴染めてるのかなって。

「フフフフ、RYUTistは私よりもみんなのほうがたいへんだったと思いますね」

――突然わけのわからないこと言い出すから(笑)。

「はい、意味わかんないと思うし対応に困ると思います。そんな自己中心的な人がいて、みんなは嫌じゃなかったのかなって。でも、いつも優しくしてくれて」

――ちょっとずつ関係がよくなってきてるのかなって、ぼんやりと眺めてました。

「そうです。私も強めに言っちゃうところがあるので、それに対してみんなが優しいから何も言わないで話を聞いてくれるので、ちょっと申し訳ないなって思ってました。最近そのことに気づいて」

――ようやく!

「はい、ようやくですね(笑)」

 

RYUTist以外は何もない

――活動を始めるなり学校での問題が起きて、グループ活動は大丈夫だったんですか?

「グループではそんなに問題はなくて。毎週新曲をやってたので、それどころじゃなかったかもしれないです。何かあったとしても、いろいろ追われてるので」

――死ぬほど忙しいから頭がそっちにいくわけですよね。

「はい、ライヴに一直線でしたね。日曜がライヴで、土曜日にセットリストが上がったりするので、とにかく練習しなきゃって感じでした」

――けっこう早い段階で5人組からひとり減ったわけですけど、当時はどんな思いがありました?

「ゆりり(木村優里、結成翌年の2012年に卒業)はメンバーのムードメーカーって感じで」

――一番話しやすい人だった印象があります。

「そうですね、話し上手で聞き上手なので頼りにしてたところがあったんですけど、いなくなっちゃったので大丈夫かなっていうのがチョコッとあって。そこからかもしれないです。不思議ちゃんキャラだったのが、もうちょっとしっかりしなきゃと思ったのは。5人のときは上から3番目だったけど、4人になったら2番目のお姉さんになるからしっかりしなきゃと思って、ちょっとだけ周りを見るようになりました」

――まっくろくろすけとか言ってる場合じゃないっていう。

「そうですね(笑)。ホントに意味わかんないですよね」

――まあ、見えちゃったんじゃしょうがないです。

「フフフフ、見えちゃったんで(笑)」

――不安はなかったんですか?

「不安というより、早く4人のフォーメーションとか歌割りを覚えなきゃっていうのが強かったかもしれないです。ゆりりがいなくなったのは寂しかったですね」

――いまとなってじゃ5人時代を見てる人のほうが少ないんでしょうね。

「そうですね、ライヴに来てくださってる方でも4~5人いるかいないかだと思います」

――ボクは結成数か月ぐらいから定期的にイヴェントで絡ませてもらってましたけど、当時の印象はありますか?

「うーん……ちょっと難しい人だなって思って」

――杉作(J太郎)さんだけじゃなくてボクも?

「子供だったので。上の世代の方のお名前とかが出てきてもぜんぜん理解できないので」

――ボクでもわからない単語が出てくるんで、気にしないでいいんですよ。ただ、その後のともちぃの知識欲はすごいじゃないですか。本だの音楽だのをちゃんと掘り下げていく人がこのグループから出てきて、それがともちぃだったという。

「ありがとうございます、まだまだですけどね。自分が空っぽなんですよ。最初の不思議ちゃんキャラも、何もないからやってたのかもしれないですし、すぐコロッと替えられるので、プライドとかも何もないんだなって。空っぽだなって思います」

――この活動がすべてと言っていいぐらいの人生を送って、学校生活もほぼないまま、趣味を作る時間もないまま、せいぜいテレビを観れるかどうかぐらいの状況で生きてたら、そりゃあ空っぽになってもしょうがないですよ。

「でも、小っちゃい頃から空っぽで、習いごともすぐ辞めるし、辞めてもなんとも思わないですし。友達とちょっと離れてもそんなに気にしなかったりするので、感情がないんじゃないかなと思って。でも最近、涙もろくなってきたりして」

――だんだん人間になってきた。

「人間らしくなってるんですかね?」

――自分は空っぽなんじゃないかって思いはじめたのはいつぐらいなんですか?

「2年前ぐらいですね」

――何がきっかけだったんですか? 進路とか?

「それが一番大きいかもしれないですね」

――自分は何をやりたいんだろうとか考えたとき、RYUTist以外はべつにないのかもと思った?

「はい、RYUTist以外は何もない気がします」

――とりあえず大学には行っておこうと思ったんでしょうけど、大学受験に落ちたと報告したブログはけっこうな衝撃でしたよ。あんまりアイドル・ブログでは見ない感じのものだったので。

「ハハハハハハ! 恥ずかしい! でも、ファンの方がすごい応援してくださってて、その次の年も〈ともちぃが受験するんじゃないか〉って想像してお守り送ってくださったり、みなさんホントに優しくて救われます。お守りなんて高いのに。自分のために買うものなのになと思って」

――大学に落ちたときはどんな心境だったんですか?

「絶望感がすごかったです(笑)。もうどうしよう、まず親を説得しなきゃと思って、RYUTistだけは続けたいからって」

――こんな状況だったら活動辞めてちゃんと勉強しろってなるかもしれないから。

「はい。家庭もそんなに裕福じゃないので。やりたいことをやらせてくれる親ではあるので、そこはすごい感謝してます」

 

最近は悲しいニュースとか本、漫画ばかり読んでます

――ただ、学生だからバランスを取れる部分ってあるじゃないですか。完全にアイドル専業になったときにどういう生活になるんだろうと思って。

「そうですね。RYUTistやってないときはホントになんもしてないです」

――なんもしてない!

「フフフフ。本は読んだりしてますけど、あとは寝たり動画観たり、たぶんニートさんと一緒です」

――ニートさんと一緒(笑)。でも、文化的な興味が出てきてるのはホントにいいことだと思ってて。アイドル・ブログにはあんまり登場しないような本も読んでるみたいだし。

「フフフフ、殺人犯のヤツ(清水潔『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』)ですよね」

――ボクも清水潔さんの徹底的な取材による新事実暴き出し系ノンフィクションはけっこう好きで。

「あれ、すごいおもしろいですよね。カッコいいです、清水さん。それを本にするのもすごいことだなと思って。本にしたら誰でも読めるので、警察の方とかも読むんじゃないかなと思って。そういう闇とか暴露しちゃっていいのかなと思って」

――あの人の本は警察批判だらけですからね。そういうものに興味が出たのは書店でライヴやった流れでもあったんですか?

「そうですね。柳書店さんで最初にイヴェントやった頃はぜんぜん本を読んでなくて、高校卒業したときに、私は音楽科に通ってたんですけど、先生に本をもらって。〈この本は私の思い出の本なので〉って。それを読んで、本で人の人生とかいろんなことが知れておもしろいなと思って、北書店さんでお勧めの本を紹介してもらって。角田光代さんの『さがしもの』っていう本なんですけど、それがすっごくおもしろかったので、そこから没頭するようになりましたね」

――音楽もけっこうちゃんと聴いてますよね。

「そうですね、音楽は基本的には安部さん(運営)にいっぱい教えていただいてもらってます。いい曲ばっかりですし、まだ聴いたことない曲がいっぱいあるんだと思うと楽しみがいっぱいになりますね」

――本や音楽だと主にどんなものがツボに入ったんですか?

「ツボ……いっぱいある。いま読んでるのは湊かなえさんの『告白』っていう本なんですけど、それは事件系の本で、先生の娘さんが殺されちゃったというお話で、その先生が終業式に娘さんが殺されたときの話をズラズラズラッと話すんですけど。最近、虐待系のニュースが多いじゃないですか。子供にまったく罪はないのに、なんでそういうことをしようと思うのか疑問ばっかりで、ただただ切ないっていう」

――虐待は連鎖しますからね、親も虐待されてたから正しいやり方がわからなくて同じことを繰り返すことが多いっていう。

「ああ……切ないですね……。最近はそういうニュースとか本とか、あと漫画も〈ピッコマ〉で読んでるんですけど、そういうのばっかり読んで悲しい気持ちになってます」

――とりあえず社会問題について考えるような年齢になったわけですよね。

「そうですね、大人になりました。まっくろくろすけから(笑)」

――だいぶ変わりましたよ! 音楽はどういうのが気に入りました?

「いっぱいあるんですけど。最近はカネコアヤノさんが好きですね」

カネコアヤノの2019年のシングル「愛のままを/セゾン」タイトルトラック
 

――いいですよね、(タワーレコード)嶺脇社長も大好きな。

「歌声がすごく好きで、ちょっとおかしな感じがいいなって思って。あと柴田聡子さんも好きです」

――新譜(2019年作『がんばれ!メロディー』)もよかったですね。

「はい、ずっと聴いてます。すごい好きです」

――順調にいい方向に進んでる感じがしますね。正しいと思います。

「フフフフ、よかったです、正しくて」

 

歳も近くて一緒にいることが多かったわっかーの卒業は、寂しかった

――そしてRYUTistの活動の話に戻りますけど、わっかー(大石若奈)の卒業はまったく予想してなかったんですよ。

「あのときは寂しいなっていうのと、わっかーは毎日長岡から通って、勉強もしっかりできる子だったので、そことのバランスが取れなくなっちゃったんだなっていうのは見ててわかってたので、わっかーが選んだ道なら尊重して応援しようっていう気持ちでしたね。でも当時、ののむぅ(佐藤乃々子×五十嵐夢羽)、ともわか(宇野友恵×大石若奈)っていう組み合わせが多かったので、歳も近くて一緒にいることが多くて。プライベートでも唯一わっかーとは一緒にお出かけしたりしてたので、かなり寂しかったですね」

――勉強を本気でやろうとすると両立は難しいんですかね。

「そうなのかもしれないですけど……私も実現できた人じゃないから(笑)。でも、ハロプロさんとか大学に行ってる方もいらっしゃいますからね」

――ハローは通知表を提出させますからね。チェックしてダメだったらキッチリ勉強させて。

「すごいちゃんとしてますね」

――ちゃんとしてますよ。そこもケアがあるから大手はすごいなって思いますけど。

「すごいですね、カッコいいな。鈴木愛理ちゃんとか慶應ですもんね。あの忙しさでどうやって勉強する時間を作れるんだろうと思って」

――ちゃんと頭が良くてちゃんとかわいくてちゃんと歌上手くて、なんなんだっていう。

「完璧ですよね、素晴らしい!」

――しかもちゃんと隙もあって話すとボロが出る感じとか、最高ですよ。

「滑舌悪いとか、かわいいですよね」

――それに比べたら自分は空っぽだなとか思ってたわけですか。

「はい、ホントに空っぽだなって」

――その後、なんとか中身は詰まってはきたんですか?

「うーん……多少は。ちょっとだけあるかなって思います。静かじゃないけど、そんなワチャワチャする感じでもなくて、メンバーの中ではたまにしゃべるっていう感じの」

――たまにしゃべる?

「いや、なんか……自由奔放にやらせてもらってると思います。のんのはお姉さんでむぅたんはしっかりしてるけど妹系のキャラで、みくちゃんは完全に突っ走る感じ。そこに私がちょっとツッコミ入れたり、キャラの確立はしてきたかなって思います」

――変な寝方※をする人とか、そういう認識のされ方もしてきて。

「恥ずかしいです! でも、あれ気持ちいいんですよね。ちょっと頭に血が上る感じが気持ちよくて」

※変な寝方
 

――ちょっとやってみようかなあ。

「ぜひ!」

――最近は完全に〈変な寝方をする人〉っていう認識ですね。

「そこですか(笑)。あれ落ち着くんです、オーディションのときもやってました。こうやるとここが密閉されるので」

――空間が空いてるとちょっと不安だけど、〈セルフハグ〉みたいな安心感があるんですかね。

「〈セルフハグ〉! そうですね、まさにそれです」

――まっくろくろすけが見えなくなっても、多少の不思議ちゃん感は残ってるんだと思いますよ。

「そうですかね。でも、これは素ですよ」

――この前のTWEEDEES & ROUND TABLE(北川勝利)との座談会でも思いましたけど、音楽的な能力とか、そういう部分の評価も上がってる気がします。

「いや、ぜんぜんそんなことないですよ。誰でもやればできることだと思うんですけど。たまたまメンバーのなかに音符がわかる子がいないだけで。女の子ってピアノ習う子はいっぱいいると思うので、私だけがすごいって感じでは絶対ないと思います」

――あの記事が公開されてから〈ともちぃすげえ!〉みたいな空気ができたけど、たいしたことはない?

「ぜんぜんたいしたことないです」

――〈これ、音違うんじゃないですか?〉みたいな指摘までできるのに?

「それは、そこ1個違って録り直しになったら申し訳ないっていうのがあるし。新潟でいつもレコーディングしてて、東京さんのほうから来ていただいてるので、それはちょっと……ゲホゲホッ、すみません」

――大丈夫ですよ、お茶でも飲んでください。

「水分を摂らないとダメですね、ゲホゲホッ。すみません。最近、私は水分を摂らないとダメな人なんだって気づいて」

――みんなそうですよ。

「フフフフフ、みんな一緒か。いっぱい摂っちゃうんですよ、コップ1杯飲んだらすぐ次いっちゃうんですよ。メンバーに〈ともちぃっていっぱい水分を摂るよね〉って言われて、私ってそんな人なんだと思って。常に砂漠にいるような人なんだなって」

――常に砂漠(笑)。いっぱい水を飲んだほうが健康になるはずなんですよ。

「よかったです(笑)」

 

突然、声を張って歌うことができなくなっちゃって

――RYUTistの活動で壁にぶつかったようなことはあったんですか? 辞めようかと迷った瞬間とかは。

「歌ですかね。最初のほうは歌にあんまり苦労してなくて自由に歌う感じだったんですけど、高校卒業したぐらいから歌うのが怖くなっちゃって」

――何かきっかけはあったんですか?

「うーん……突然ですね。自分でもなんでかわからないんですけど、突然怖くなって声を張って歌うことができなくなっちゃって。すぐひっくり返っちゃったり音程が取れなくなることが多発して」

――それはちょっと感じてました。軽やかに歌ってたはずの人が不調になってるなって。

「はい、自由に歌えてたのに。なんでなんだろうって自分でもわからないままやってたんですけど。ちょっと気を張りすぎてたのかもしれないなと思って。それに気づいて治るまで2年ぐらいかかりましたね」

――いまはなんとか乗り越えて。

「そうですね、ずっと練習してました。張って歌うのができなくて、優しく歌うことはできるんですけど、声の乗りも悪くなってマイクに通らなくなっちゃって、だいぶどん底にいる感じがしましたね。みんなはふつうに歌えてるのに、なんで私だけ歌えなくなっちゃったんだろうと思って」

――そういう場合、だいたいメンタルの問題だと思ってます。

「ああ、そうなのかもしれないです。それで安部さんに〈気にしなくていいから、ひっくり返っちゃってもいいから思い切り歌いな〉って言われて、それをきっかけにちょっとだけよくなってきて。ヴォーカルの先生にもいっぱい見ていただいて、いまはだいぶ調子が出てきた感じがします」

――壁にぶつかりながらも辞めようって思うまでにはならなかった。

「ならなかったですね。RYUTistが嫌になったわけじゃなかったので、ただ歌えなくて苦しんでたって感じでした。でも、私の歌がしっかりしてないから、みんなには申し訳ないなと思って。ヴォーカル・リーダーでもあったので、あんまり相談できる人がいなくて。ヴォーカルの先生にいっぱい相談してたんですけど、メンバーには心配もかけてるし、ライヴも私のせいでよくなくなっちゃうから申し訳ないなってずっと思ってましたね」

――意外とそういうときは誰にも相談できない。

「うん……」

――みんなも悩んでることはわかってるわけですよね。

「そうなんですよね。RYUTistってあんまり悩みを打ち明けたりしないんですよ。たぶんこの子は悩んでるんだろうなと思ってても、よくも悪くも誰も何も言わないんです」

――さっきから話を聞いてると、メンバーが辞めるときも相談もなく全部突然なんですよね。

「そうなんです。みんないい子だから悩んでることも言わなかったりするので」

――ケンカとかしたことあるんですか?

「ないです。私からちょっとふっかけちゃうことはあるんですけど」

――ふっかける!

「みくちゃんが加入当初に、チョコッと怒っちゃったことがあったんですけど、誰も何も言わないんですよ。絶対に思ってるはずなのに。〈ともちぃ面倒くさいな〉って絶対思ってるはずなんですけど、何も言わないでいてくれるんですよね。逆に〈ともちぃが言ってくれるからいいんだよ〉って言ってくれて、いいメンバーを持ったなって思います。優しすぎるなって」

――平和なグループですよね。

「はい、平和です」

――どうしてこの平和が保ててるんだと思いますか?

「一定の距離感を持ってるからですかね。あんまりプライベートに入り込まない感じがします」

――さっき、初めてみんなで遊んだって話を聞きました。

「そうなんですよー! 先々週の話なんですけど、のんののお家にみんなで行って、のんのが最近飼い始めた猫のもこたに会いに行きました」

――それくらい一定の距離を保ってたのが変わってきたのって、横山さん効果はあるんですか?

「あります! 横山さん効果はかなり」

――ちょっと空気感が変わってきた気はしました。

「どんより……とはしてないですけど、暗い空気からパッと」

――おとなしいまじめな人たちが集まってるグループにひとり異物が入って。

「フフフフ、電気が点きました(笑)」

――プラスには転がってる気がします。脱退&加入についてはメンバーには言われてたんですか?

「同じタイミングで聞いた気がします。わっかーの卒業はすごく寂しかったんですけど、でもわっかーが決めたことだから応援してあげようと思って、卒業をお見送りしようっていう気持ちでやってて。同時にみくちゃんの加入が決まって私はすごく楽しみでした。個人的にはみくちゃんの顔がすごく好きで。笑ったときの目のラインと口の上のラインが平行なんですよ、それがどストライクで!」

――かなり伝わりづらいマニアックなコメントですけど(笑)。

「すごい好きなんですよ。こんなかわいい子がウチに来るんだと思って、とてもワクワクしました」

――そういうちょっとアイドルヲタ的な視点で喜んでたんですね。

「そうですね、ぜんぜん心配とかしてなかったです」

――キャリアの違う子が入って大丈夫かな、みたいなことはなく。

「まったくなかったですね、逆にみくちゃんがRYUTistに入りたいと思ってるのかなっていうほうが心配でした」

――結果オーライでしたよね。

「はい、よかったです」

まだ空っぽの空っぽだけど……作詞とかコラムのようなものを書いてみたいな

――活動に手応えを感じはじめた瞬間みたいなものはありました?

「新潟でいまいろんなTVCMさんとかに出演させていただいてるんですけど、ホントに最近、声をかけていただけるようになりました。〈RYUTistだ!〉とか。メンバーと一緒に街を歩いてると、〈RYUTistの子じゃない?〉って言っていただいたり」

――〈警察のポスターやってる子だよね?〉みたいな。

「フフフフ、やってますね。うれしいです。前までは見向きもされなかったのに」

――あと、ハコイリ♡ムスメみたいないわゆる正統派アイドルとコラボするのは(柳♡箱)どういう感覚ですか?

「ハコムスさんの自由さがすごく勉強になりました。RYUTistはだいぶ……」

――ちゃんとしつけられた人たちですからね。

「ずっと〈気をつけ〉をしてる感じなんですけど、ハコムスさんの自由感がすごく刺激になって」

柳♡箱の2018年のシングル“ともだち”
 

――どっちかっていうと、こっちのほうが箱に入ってますからね(笑)。

「そうですね、だいぶお勉強になりました。みくちゃんが入ってくれたのもそうなんですけど、ハコムスさんと一緒にやらせていただくようになってから、(RYUTistの)メンバーの人間らしさというか、チョコッとしゃべれるようになったなって思います。ワチャワチャできるようになりました」

――〈そうか、アイドルってこれくらいワチャワチャしていいものなんだ〉みたいなものを学習した。

「はい、間近で見て〈いいんだ!〉って思って。

――こんなカッチリとやらなくていいんだって。

「逆になんでこんなカッチリしてたんだろうって不思議になるぐらいですね」

――そうなんです、カッチリしすぎてたんですよ!

「フフフフ。そこに気づけました。みんなかわいいんですよね、ハコムスさん」

――アイドルヲタ的な目線で見たら最高でしょうね。

「はい、あんなかわいい子たちと近くにいて一緒に歌える。もっと仲良くなりたいんですけど、なかなか自分から行けないんですよね」

――そんな人たちの集まりですからね。でも、ハコムスとのコラボが変わるきっかけになった、と。

「なりました。ハコムスさんの存在は大きいと思います」

――RYUTistのメンバーそれぞれが違う影響を受けてる感じがしておもしろいですね。そして、いろんな影響を受けて空っぽだった人が変わってるんだと思うんですよ。いい感じで人間になってきて。

「はい、人間になってきました(笑)」

――いまは何をやってるのが楽しいですか?

「いまが一番楽しいかもしれないです。RYUTistはもちろん、お家でもいままでずっと寝てたりしてたんですけど、料理したりお洗濯したりお皿洗ったりするようになって、毎日楽しいです」

――大学に落ちたのも悪いことだけじゃないんでしょうね。いろんなことをする時間もできるし。ボクも1年無職だったんですけど、あれも絶対に無駄じゃないんですよ。二度とあの時間に戻りたくないっていう思いがあるから。

「そうですね、寝てばっかりの生活はもう二度としたくない(笑)」

――ダハハハハ! 同じですね(笑)。だからボク、どんなに忙しくても耐えられるんですよ。

「すごいですね。私たぶんそのうち飽きちゃう気がします。習いごともそうだったので。だから絶対に毎日やろうと思って。1回でもやらなくなったら絶対一生やらないと思ってがんばってます」

――1回サボッたらそのまま……。

「フェードアウト(笑)」

――そんな人が、よくRYUTistは続きましたね。

「そうですね。RYUTistは楽しいです。たぶん同じことをしないからだと思うんですよ。ライヴをしてるっていうことは一緒なんですけど、いろんなところでやったり」

――曲もどんどん変わっていくし、来る人もいつも違うし。

「いろんな出会いがあったりして、すごく楽しいです」

――この先も続けていけそうですか?

「続けていきたいです。相当なことがないと辞めないと思います」

――相当なことってどんなことですか?

「お父さんが定年だからとか、そういうことですかね」

――お父さんが定年で辞めなきゃいけない理由ってあります?

「私が働かないと」

――ああ、金銭的にもうちょっと稼げないと。それも学校に行ってたみたいに、平日昼だけ働けばいいぐらいじゃないですか?

「あ、そうか。そうですね。あとは事務所が何もなければ(笑)」

――なんですかそれ! やりたい仕事とかはあるんですか?

「チョコッとやってみたいことはあります。作詞とかコラム的な感じのことをやってみたいなっていうのはあるんですけど、でもまだ空っぽの空っぽなので」

――まだ空っぽ?

「言葉が出てこないんですよ。1回だけ書評を書かせていただいたことがあったんですけど、何を書けばいいかわからなくて。けっこう文字数あるじゃないですか。私の感覚だと5行ぐらいで終わっちゃうんですよね」

――〈おもしろかったです。ここがよかった。以上!〉ぐらいの。

「そういう感じになっちゃうので、コラムとか書かれてる方のすごさがわかりました」

――ボクは昔から卑怯な手を使ってて、書評とは名ばかりの〈引用書評〉って名乗ってるんですけど、おもしろいところをまず抜き出して、それをつないでいくんですよ。ボクの地の文とかどうでもいいから、それよりも本のおもしろいとこを読んでくれって感じで、その引用文にツッコんだりして。そういう書評だったら書けるはずですよ。

「なるほど。やりたいですね」

――やりたいって言ってると意外と仕事は来たりするんで。言わないと来ないですから、言い続けることが重要です。

「はい、言い続けます」

――意外と誰か見てるんですよ。

「どんどん言ってったほうがいいんですね。もっとお金が欲しいっていうのは……」

――お金はなかなか言っても来てくれないでしょうけど(笑)。お金を生むような仕事が来るかもしれないですしね。ローカル・アイドルはなかなか儲からない、実家暮らしだから成立するビジネスで、たいへんだと思うんですよ。

「はい。ひとり暮らしできるようにがんばります!」