離婚伝説
洗練味と歌謡性を兼ね備えた期待のユニットが登場!

 まずはマーヴィン・ゲイの78年作『Here, My Dear』の邦題から取ったユニット名が、その由来を知ろうと知るまいと大きなツカミになるのは間違いない。ただ、それが気を衒った出オチでもあざとい冗談でもないことは、楽曲を聴けばわかるはずだ。2022年1月に松田歩(ヴォーカル)、別府純(ギター)の2人で活動を開始。その年の夏から翌2023年にかけて“メルヘンを捨てないで”やとコンスタントに楽曲を配信し、なかでも7インチ化されたシングル“愛が一層メロウ”は大きく評判を広げることになった。

離婚伝説 『離婚伝説』 離婚伝説(2024)

 ビル・ウィザーズの空耳マナー(?)な同曲からもわかるように楽曲は主に70年代ソウルを下地にしているが、ファルセットを特徴とした松田の色気ある歌い口にも、別府のリズミックなプレイにも、舶来的なグルーヴの洗練味だけでなく、ニューミュージック的な情緒や歌謡性がしっかり宿っているあたりが魅力的なところだろう。このたびリリースされたファースト・アルバム『離婚伝説』はここまでの配信曲をまとめた名刺代わりの一枚で、キーボードに柿沼大地や千葉大樹(Kroi)、ドラムスに佐野康夫や田中匠郎らを交えた編成での録音はシンプルで絶妙に温かい。すぐにより広い層に届きそうな大器の登場だ。

 

RYUTist 『春風烈歌』 PENGUIN DISC(2024)

新潟を拠点とするアイドル・グループのRYUTistといえば、石若駿や君島大空らを起用したここ数作の素晴らしさで記憶している人も多いだろう。今年は2月に櫻木大悟(D.A.N.)によるトリオ体制で初の楽曲“君の胸に、Gunshot”を配信したばかりだが、間を置かずに久々のCDシングルも届けられた。表題曲“春風烈歌”を手掛けたのは、以前からメンバーもファンを公言していた曽我部恵一(サニーデイ・サービス/曽我部恵一BAND)! 明るさと儚さで春めくメロディーとハーモニーがバンド・サウンドに合ったシンプルな好曲となっている。NOBE × KOJI obaによるカップリングの“echo”も清楚な情緒を備えた明るいアップで、よりストレートな表現で迫る3人のここからに期待が膨らむ一枚だろう。

 

和久井沙良 『Into My System』 APOLLO SOUNDS(2024)

高い評価を得た『Time Won’t Stop』から2年ぶりとなるセカンド・アルバム! アクロバティックで緩急自在なピアノ演奏を中心にしつつアレンジの幅を広げ、静謐さと乱調を束ねてスリリングに聴かせる様は見事だ。引き続きフィーチャーされたmimiko、ermhoi、Pecoriの声も印象的だが、初共演となる中村佳穂の歌唱がやはり圧巻。

 

平山みき, 野宮真貴 『アーティスト/ホットな地球よ』 SPACE SHOWER(2024)

筒美京平 × 橋本淳の黄金コンビによる新曲を、それぞれ縁深い平山みきと野宮真貴がデュエットしたシングル! もともとは10年ほど前に筒美が盟友の橋本に託していた2曲だそうで、船山基紀が“アーティスト”を、本間昭光が“ホットな地球よ”を各々のアレンジで輝かせる。ボーナストラックとして収録されたライヴ音源もいい感じ。

 

Anna 『Stories』 INOKS/ポニーキャニオン(1998)

活動凍結中の角松敏生が推進したVOCALANDから登場し、アルバム2枚を残した女性シンガー。初作に続いて高音質リイシューされたこちらの2作目は、多彩な作家の曲を角松が総合プロデュースしたもの。当山ひとみと同名異曲の“WANNA KISS”(作詞はいずれも康珍化)など同時代のUKソウルに通じるミッド・グルーヴが快い。

 

uruwashi 『Live in the moment』 BEDROOM CHILL(2023)

生音とサンプリングを織り交ぜたチル&メロディアスな音楽性を見せるビートメイカーの初アルバム。RiE MORRiSや清水玲奈ら曲ごとにさまざまなシンガーや演奏家を迎え、インストも含むトータルな流れで歌心に富んだメロウ絵巻を聴かせる。ラストを飾るモータウン風の“Here Comes The Dream”にはMyrah Kayをフィーチャー!

 

VARIOUS ARTISTS 『CITY MUSIC TOKYO reflection』 キング(2023)

2003年の『CITY MUSIC』からニューミュージック~AORの美意識をモダンに追求してきたクニモンド瀧口が送るコンピ・シリーズのキングレコード版。よくあるオムニバスとの違いはクールなヴィジュアルの雰囲気からも明白で、初CD化も含む数々の隠れ名曲に酔わされる。流線形をRYUSENKEIにリブートしての新作も楽しみだ。

 

菊地真美 『モーニング・デュー』 徳間ジャパン/ALTAVOZ(1982)

矢野顕子との共作曲を含む初作『縞馬に乗ったセクレタリー』に続き、惣領泰則がプロデュースしたこちらの2作目も初CD化! ゆったりした“MORNING DEW”などAOR~ソフト・ロックの範疇で味わえる部分もあるが、〈都会に舞い降りたシティ・ポップの女神〉という触れ込み以上にニューウェイヴ時代らしい遊び心が新鮮で楽しい。

 

soraya 『soraya』 B.J.L./AWDR/LR2(2024)

ピアニストの壷阪健登とベーシスト/ヴォーカリストの石川紅奈という、新世代のジャズ演奏家によるユニットがアルバム・デビュー。マイケル・ジャクソン“Off The Wall”のウッドベース弾き語りも話題になった石川はソロでの初作『Kurena』も昨年リリースしているが、ここで聴けるのはそれともまた異なり、親しみやすいメロディーに乗った優しい歌声とピアノを軸としたアコースティックで簡素なアンサンブルが心地良い歌もの作品だ。もちろんジャズの素養を感じさせる部分はあるものの、そうでなくても童謡やフォーク、ソフト・ロックのように響く穏やかな歌世界は“ルーシー”や“レコード”を筆頭に日常の空間を無条件でいい温度感に染め上げるもの。ピアノとベースだけで歌われるスピッツのカヴァー“愛のしるし”もいい感じで、ずっと聴いていたくなる。