離婚伝説
洗練味と歌謡性を兼ね備えた期待のユニットが登場!
まずはマーヴィン・ゲイの78年作『Here, My Dear』の邦題から取ったユニット名が、その由来を知ろうと知るまいと大きなツカミになるのは間違いない。ただ、それが気を衒った出オチでもあざとい冗談でもないことは、楽曲を聴けばわかるはずだ。2022年1月に松田歩(ヴォーカル)、別府純(ギター)の2人で活動を開始。その年の夏から翌2023年にかけて“メルヘンを捨てないで”やとコンスタントに楽曲を配信し、なかでも7インチ化されたシングル“愛が一層メロウ”は大きく評判を広げることになった。
ビル・ウィザーズの空耳マナー(?)な同曲からもわかるように楽曲は主に70年代ソウルを下地にしているが、ファルセットを特徴とした松田の色気ある歌い口にも、別府のリズミックなプレイにも、舶来的なグルーヴの洗練味だけでなく、ニューミュージック的な情緒や歌謡性がしっかり宿っているあたりが魅力的なところだろう。このたびリリースされたファースト・アルバム『離婚伝説』はここまでの配信曲をまとめた名刺代わりの一枚で、キーボードに柿沼大地や千葉大樹(Kroi)、ドラムスに佐野康夫や田中匠郎らを交えた編成での録音はシンプルで絶妙に温かい。すぐにより広い層に届きそうな大器の登場だ。