アーバンギャルドのリーダーであり、俳優や文筆でも幅広く活躍する音楽家の松永天馬。彼が、3作目のソロアルバム『不惑惑惑』を2022年11月2日(水)にリリースする。松永が楽曲提供を行っているアイドルグループのキングサリが参加した“バニーガールアーミー”など、先行リリース曲も話題の本作。〈不惑〉の年齢を迎えた松永の思索や、消費が加速化した現代社会への視線が刻まれた作品になっている。今回は、そんな『不惑惑惑』について、ライターの藤谷千明がインタビューを行った。話題はサブカル中年の苦悩から推し活の光と闇まで、多岐にわたり……。 *Mikiki編集部
〈大人〉って何なんでしょう?
――ソロでは〈中年男性〉にフォーカスした作品を発表し続けている松永さんですが、今年40歳を迎えるそうで。本作のタイトルもそのものズバリ『不惑惑惑』。
「ファーストソロアルバム『松永天馬』(2017年)をリリースしたときは35歳でした。アーバンギャルドでは少女性や女性性、僕からするとフィクショナルなものをテーマにしているじゃないですか。だからこそ、ソロは自分の身体性を感じられるドキュメンタリーでありたいという気持ちで作り始めたのだけど……。現在は男性性というか、〈おじさん〉であることも定かではなくなってきたという……」
――それは松永さんご自身が、〈おじさん〉である実感がないということでしょうか。
「今の時代を生きている人全体がそうなりつつあると感じています。昔は、孔子の〈四十にして惑わず〉という言葉――〈不惑〉というのがあって。これは、40歳になればいろんなものから解き放たれて、戸惑いもなくなるし、自由になれますよ……という言葉であったはずなのですが。少なくともこの現代日本において、40歳で不惑になっている人なんているのかな?」
――まあ、10年前から〈サブカル男は40歳を超えると鬱になる〉(吉田豪「サブカル・スーパースター鬱伝」より)などと言われてはいますね。私(インタビュアー)は、松永さんのひとつ上、現在41歳ですが、たしかに周囲を見回してみても、男女、既婚未婚、仕事内容問わず、〈不惑〉という状態の同年代は見当たりませんね。交際範囲の問題かもしれませんが。
「僕は結婚もしてないし、子供もいない。あるいは、武道館でライブをするだとか、バンドが解散したら、活動休止をしたら、句読点をつけることができたのかもしれないけれど、そういうこともなく。そうやって、曖昧なままずっとずっと青春の終わりを先延ばししてるような感じで、気が付くと、40歳になってしまったという……。〈←今ここ!〉って感じです。なので40歳になったら、もう〈いよいよだな〉と」
――〈いよいよ〉とは?
「いよいよです(笑)。いよいよおじさんだし、いよいよ若者ではないじゃないですか」
――そうですね。それこそアーバンギャルドや松永さんは〈サブカル〉と呼ばれることがありますが、サブカルチャーというものは本来はユースカルチャーとイコールであったはずが。
「ユースカルチャーとニアイコールですよね」
――現在〈サブカル〉的ものを愛好している、こだわっている人の多くは、おそらくほぼおじさんとおばさんのような。これはもちろん自分のことを含んだ上で申し上げております。
「とはいえ、大人になったらリッチになるわけでもなく、大人になったら演歌を聴くようになるわけでもなく、〈何が大人になったことなのか?〉というのが本当にわからないのですよ。だから、逆に皆さんに訊きたいですよ。〈大人〉って何なんでしょう?」
――それは、『不惑惑惑』の歌詞にもあらわれていますね。〈人生無免許運転でモラル失くしたモラトリアム中年/クレカも持てない サインも書けない〉(“不惑惑惑”より)。おのずと年齢だけは重ねているけど、それ相応の責任が持てないというか。
「たとえば、かつては結婚して妻子を持って〈一家の大黒柱〉になることで、男性として認められた、社会を構成する一員になれた時代もあったじゃないですか」
――でも現代はそれが成立する社会状況ではないし、そもそも松永さんは〈そういうの〉を絶対に引き受けたくないタイプの人間でしょう。
「それはそうですけど。その一方で、親は老いていくし、友達は死んでいくし、確実に自分は老いていくし……」
――そうですね。健康に影響が出るし、健康に影響が出ると否が応にもメンタルに影響が出るし……と考えると、〈年齢は記号だ〉っていうのは大嘘だと思っていますね。
「まあ、死にますからね。ふははは。死ぬっていうことはゆるぎない事実ですから。なのに、老いは悪というか、なるべく遠ざけたいものっていう世の中じゃないですか」

〈気持ち悪さ〉の先に行ったポップでカラフルな松永天馬
――〈オジ〉に〈サン〉を付けてくれないし(“不惑惑惑”より)……的な。これはたしか、歌舞伎町やホスト文化に詳しいライターの佐々木チワワさんとのイベントで出た発言でしたよね。(2022年2月3日に開催された〈新宿歌舞伎町の少女フィクション&ノンフィクション 松永天馬 × 佐々木チワワ対談トーク〉)
「そうです! 佐々木さんが、おじさんのことを〈オジ〉って呼んでいて、〈オジ〉は〈サン〉付けされないんだと知りました(笑)。〈オジ〉というのは、ある種のちょっとキモカワ、キモカワイイコンテンツやキャラみたいな感じなのでしょうか……※」
――アルバム『不惑惑惑』全体を通して、おじさんなのに大人の実感はないけれど、若い人とは明確にちがう、その気持ち悪さを引き受けた上で、中年期を楽しみたいという意志を感じました。
「僕も40歳を前に惑いっぱなしのモラトリアム中年であるんですね。アンチエイジングが叫ばれて久しいですけど、現代人に必要なのは真っ当なエイジングなのかもしれない。でもさっき話したように、上手にエイジングできない。けれど、そんな状況だからこそ、そんな〈惑っている自分〉にワクワクしたいという気分から“不惑惑惑”が生まれました。自分は結構生真面目な性格なんですけども、そんな自分を解放して遊ばせてもいいんじゃない?と思って書いた曲です。
あとは、〈気持ち悪い〉の先にある気持ち良さというか、〈気持ち悪い〉と〈気持ち良い〉の境界が、TikTokなどを見ていると近年近づきつつあるなと……。不快なものが映っていても、リズムにのると気持ちよくなるような」
――それこそ、“SEXY HARAJUKU”の歌詞は、シンプルに〈気持ち悪い〉と感じてしまいましたね。
「ふふふふふ! はい! そうですね」
――すみません(笑)。
「いやいや(笑)。今回のアルバムが全体的に、結果的に出揃ってみるとかなりカラフルな感じになったんです。1枚目のアルバム(『松永天馬』)が非常にモノクロのアンダーグラウンドの、僕自身がアーバンギャルドの反動としてやりたかった演劇的な、地下的な文化を取り入れたものであったとしたら、2枚目の『生欲』(2019年)っていうものは、汗臭い男らしいアルバムになっていて」
――たしかに『生欲』は、もう少しザラッとした質感がありましたね。
「今回は、ある意味その〈気持ち悪さ〉の先に行ったというか、ポップでカラフルな感じになったかな」
言葉は交わせば交わすほど風に紛れてしまう
――ソロワークで最初に発表された“ラブハラスメント”からずっと、松永さんは欲望を持つことそのもの、コミュニケーションそのものが気持ち悪いものであることについて描いています。本作も1曲目の“そうだろうどうだろう”だったり、“SEXY HARAJUKU”=〈セクハラ〉だったりとか、そこに問題意識を持っているというか。
「コミュニケーションというかディスコミュニケーションであったり、ディスタンスであったりは、ずっと僕自身のテーマではありますね。
自分は言葉や歌詞に対してこだわりがある。けれど、その言葉っていうものは、交わせば交わすほど風の中に紛れていってしまうものというか、理解していると見せかけられるけれども、実際には理解できない気持ちが勝っていくようなものだと思っていて。だから、ディスコミュニケーションを描き続けたい。
アーバンギャルドでも浜崎容子さんという存在は、ディスコミュニケーションのアイコンとしてロールしてくれてる部分があると思います。僕の歌詞に登場する女性は、永遠に理解し合えない相手なんじゃないかな」
――理解し合えないからこそ、美しい関係、良い関係ということでしょうか?
「良いとか悪いというよりも、もう、〈そうだろう?〉って感じです(笑)」

推し活は尊く敬虔? いやいや、本音で話そうぜ!
――ここで“そうだろうどうだろう”につながる(笑)。
「近年、消費のあり方は多様化したし、今や必ずしも男性が女性を消費するっていう時代ではなくなったんですけど、それはいいことでもある。ただ、非常にえげつない〈消費〉が跋扈する時代にもなっていますよね。人間が人間を、まあモノでもいいですけど、誰かが何か、あるいは誰かを消費することに対して、ためらいがなくなったなと。
それは僕自身をリスナーが消費してることでもあるだろうし、僕自身はヘテロセクシャルのシス男性なので、女性を消費している側面もある。でもそれが昔だったら慎ましくというか、あまり表沙汰にされていなかったわけですけど、今はもうYouTubeのスパチャだとかツイキャスのお茶爆だとかで、非常に手軽にえげつなく〈消費〉というものができてしまう!」
――もともと〈経済を回そう〉みたいな感覚で加熱傾向にあったものが、コロナ禍以降それが顕著になったかもしれませんね。〈支えなきゃ〉みたいな想いを持った人も少なからずいらっしゃるでしょうし。個人の意識よりも、ファッション誌や朝の情報番組、あるいは企業CMにおいて、身だしなみグッズから旅行プラン、あるいは借金(苦笑)まで、〈推し〉というフレーズが使われることも珍しいことではなくなったのが大きな変化かなと。
「企業が推し活を推進したい気持ちはわかるんですよ。だって売れるんだもん。音楽業界において推しをオリコンチャートに入れるツールとして、握手会のチケットとしてCDが売れたように。文房具だってなんだって〈推し活グッズ〉とパッケージして売れば、一定の層には届く。
推し文化万々歳なんだけど、その一方で光の部分だけがフィーチャーされてるけど、実際、闇はだいぶ深いぞって僕は思いますけどね(笑)」
――それは恋愛で消費を煽っていた時代も、とくに恋愛の負の側面や、そもそも恋愛したくない人は無理してする必要もないことを語るメディアはほぼなかったように記憶しています。良い面ばかりを喧伝していた。結局、〈恋愛資本主義〉とか呼ばれていたものが、〈推し活資本主義〉に成り代わっているというか。恋人に対してと推しに対しての感情が完全に重なるわけではありませんが、〈このアイテムを買って、恋人or推しにとってよりよい自分になろう〉という意味では似たようなものです。
「そう、現代は推し活資本主義になってるんですよ! T-Paletteさん(タワーレコード)の前で非常にやりにくい話なのですが(笑)。
このアルバムの中でも3曲目の“推さないで”を、ディレクターの今村(方哉)さんにお見せしたときに、〈これはちょっと……大丈夫かな……。ウチ、アイドルもいるんで……〉 〈まあ、大丈夫でしょう〉みたいなやりとりがありました(笑)」
――そこに規制が入りそうになるなんて、それはそれで時代を象徴するようなエピソードですね。
「すごいですよね!」
――タワーレコードに限らず、推し活ブームの経済効果的なものに恩恵を受けている人は多いと思うので……。私のようなフリーライターも例外ではありませんし。とはいえ、この話はカットしてほしくないですね(笑)。さて、アーバンギャルドにも“病めるアイドル”(2012年)なる曲がありますが、“推さないで”をソロで発表した理由は?
「これは僕のソロの歌詞として書いたほうが、ディスタンスが描けるかなって思ったのと、アーバンギャルドよりも僕のソロのほうが、より〈消費〉なるものを描き続けているので。だから、男性が歌うことによって出てくる異化差用を狙いたかった。
この曲は井上陽水の“ミスコンテスト”あたりを意識して書いてるんですけど。『“white”』(78年)からシングルカットされた曲ですね」
――ミスコンテストの華やかさと同時に空虚さを感じる曲ですね。
「〈推す〉という言葉は、ある意味尊く、敬虔な行為であって、非常に禁欲的な行為だという風に喧伝されがちです。けれどもその風潮に〈いやいや、本音で話そうぜ!〉と、異を唱えたいんですよ」
――〈本音〉とは?
「〈推し活〉という形でコーティングすることによって、本質から目を背けてるような気がするんですよ。もちろん人間は人間を消費せざるをえないのだけど、その消費を綺麗な、正しい行いのように言わないでほしい」
――推し活は本来であれば、正しくないことだと?
「推し活に限らず、正しくない行為っていうのも生きるという行為と直結すると僕は思ってるんですよね。だから、正しくない自分も認めてあげてもいいと思うし、正しくない行為っていうものも生きていくために必要な瞬間もあるんじゃないのかな。例えば、それは推し活もそうなのかなとは思いますけどね。だから、〈推す〉っていう行為そのものを否定するのではなく、推したければすればいいけれども、綺麗なことばかりではないでしょう。そこから目をそらしてほしくない」

理解し難く対極の存在=女性との戦いのような恋愛
――なるほど。推し、アイドルといえば……と強引に話を戻しますが、リードトラック“バニーガールアーミー”は松永さんが楽曲提供をしているアイドルグループのキングサリを迎えてます。
「こちらの楽曲は、『生欲』が出た直後ぐらいに、〈次はこういうタイトルで、女性をフィーチャーした曲をMV込み込みで作りたいな〉と思いついて。ちょうどコロナ禍でステイホームしていたときに、十数年ぶりに自分で打ち込みでデモを作った曲なんですけれども。
この曲で描かれている景色というものも、基本的にディスコミュニケーション、戦いのような恋愛を描いています」
――戦いのような恋愛。
「恋愛というものは、わかり合うためのものというよりは、もっと喧嘩に近い、殴り合いに近いものなんじゃないのかなと。実際に殴ったらそれはDVなんですけど」
――殴らなくてもモラルハラスメントとして成立することはありますが。とはいえ、対等なコミュニケーションでも、いや、対等だからこそ傷つくことは少なからずある。それを含めてのコミュニケーションだとおっしゃりたいのでしょうか。
「現代人は傷つけることを恐れて、相手を傷つけないように、傷つけないようにしている。でも、コミュニケーションというものは本質的には言葉で殴り合うようなものにならざるをえないというか。極端な言い方をすれば、命懸けのコミュニケーションになっていく。そういったやりとりを描いているんです」
――MVに関してはどちらかというと、松永さんの〈負けたい願望〉を感じますね。
「以前から僕は女性に虐げられたい願望があるみたいなこともインタビューで話した記憶があるのですが、僕のソロのミュージックビデオでは女性をキャスティングすることが多いけれど、トロフィーワイフ的に女性をはべらしたいというわけでは決してなく、どちらかというと本当に自分の対極の存在、自分にアンチを唱えたり、自分のディスコミュニケーションのアイコンとしての〈女性〉なんですよね。キングサリも、自分の理解し難い世代であったり性であったり、理解し難い存在として描いてますね」
―― “パフェ評論”にもキングサリの天神・大天使・閻魔さんがボーカルとして参加しています。
「元々は“バニーガールアーミー”だけの予定だったんですけど、“パフェ評論”のレコーディング中に、浜崎容子が――今回ボーカルディレクションを彼女が担当しているんですけど、〈女の子の声が入ったほうがいいかもしれない。かわいい声と綺麗に声と、両方出せるような女の子いないの?〉と。ちょうどキングサリに“バニーガールアーミー”の件をお願いしてる最中だったので、天神・大天使・閻魔ならその条件に合う歌唱力を持ってるなーと、彼女にもう一曲お願いすることになりました」
一見自由、でも不自由や貧困に囚われた現代の若者
――“ぼくたちは失敗”はtwinpaleに提供した楽曲のセルフカバーです。
「現代の若者たちを見ているとピノキオのように感じるんですよ。楽しくおどけて、自由なように振る舞ってるけど、糸に繋がれたマリオネットというか。一見自由な時代に見えるけど、貧困であったり、画面のなかであらゆることが完結してたりとかして、ものすごく貧しい側面、すごく不自由な側面があってっていう……。そんな現代の若者たちを描いた曲です」
――なるほど。
「これは僕のアイドル提供曲にしては珍しく(笑)、自分で歌っても様になると思ったので、トラックを全面的にリアレンジしてもらいつつ、歌ってみることにしました。
MVはイラストレーターの方に、女性化した松永天馬が絡み合ってる、絡み合いながら傷つけ合っているイラストをお願いしますって言ったら……。そしたら、思った以上にグロテスクなものが出てきてびっくりしました」
――それはつまり、〈気持ち悪い〉ということですよね。素晴らしいじゃないですか。
「そう。思った以上にストレートでびっくりしましたけど、ありがたいですね」
――やはり松永さんの中に〈気持ち悪さ〉みたいなこだわりがずっとあるのかなと。
「そうですね。生理的に何か感じるところを刺していていきたいとは思っています」

本物以上にリアルな日常を非日常なステージで演じている
――そして〈気持ち悪さ〉以外に、今作に通底しているのは〈喪失感〉かなと。“ぼくたちは失敗”、あるいは“キリスト・ロック”もそうですが、ほかにも“君とは結婚すると思ってたんだ”もですね。これは大変ベタな質問で恐縮ですが、“君とは結婚すると思ってたんだ”は、私小説的なものと捉えてよいのでしょうか?
「私小説的なものだと捉えていただいていいかなー。まあ、僕はインタビューでは嘘しか言わないので。はははは」
――そうやって、はぐらかされることはある程度予想していました。
「歌詞というものは、数十行の言葉にもかかわらず、エッセイやコラム、SNSとか、そういったもの以上に自分の無意識下にある心情を突き刺すような言葉で描いてしまうところがあるなと思っていて。
僕は歌詞では本当のことを言いたいというか、歌詞でこそ、それが嘘のことを書いていても、嘘の嘘……つまり真実を書きたいと思っています。今回のアルバムは、特にその側面が強くなってきたかな。
自分自身が年齢を重ねるごとに、どんどん等身大である一方でフィクショナルなところに足を取られ始めているというか。自分は40歳の中年なんだけれども、その一方で非常に現実のおじさんとはちがうところに足を踏み入れている気もするんですよね(笑)。でもそれは、〈ミュージシャンの松永天馬〉というペルソナを被っているから成り立っているところもあるかもしれなくて。
松永天馬を演じているんだけれども、演じている松永天馬でリアルな肉体をロールしているというか、リアルな、本物の、日常の松永天馬以上に、リアルな日常を非日常なステージの上で演じている、というところはあるのかな。だからある意味、自分のパーソナルな側面が見えているかもしれないし、パーソナルな側面がより演技過剰に語られているかもしれない」
中年男性も鏡の前に立ってほしい
――普段より輪をかけて饒舌になっていらっしゃる……。ちなみに、ソロワークを始めて数年経ちますが、同年代の男性の方から感想や反響が来ることはあるでしょうか。
「いや、それがね、来ないんですよね……(笑)」
――そもそものファン層の問題なのか、あるいは中年男性は、同じ中年男性の自己開示的な表現を求めていないのでしょうか。
「結局のところ、物理的な意味でも抽象的な意味でも、中年男性は鏡を見ることができないんですよ。自分の有り様を見つめることができない。これが中年女性だったら、それに対して美容意識などで〈じゃあ、ここを直したらいいんじゃないか〉とか、〈ここをケアしたらいいんじゃないか〉とか、〈こういう化粧をしたらいいんじゃないか〉とか、〈こういう髪型にしたら〉という判断ができる人は多いと思うんです。一方で、中年男性の場合はそれを見ないようにしている」
――無意識なのか意識的なのか。どちらにせよ、どうしてなのでしょうね。
「自分は(主に女性を)消費はしたいけども、消費されたくない。自分は鏡を見たくないし、カメラの前には映りたくない……っていう、戸惑いのようなものがあるのかもしれないですよね。
ただ、僕自身は、カメラの前、鏡の前に立ってほしいし、そういう人たちにこそ僕の曲を聴いてほしいのですけどね」
――届くといいですね。
「そうだ、最近面白かったことがあって。若い男の子のファン何人かから、〈天馬さんはすごく自由に生きてて素敵だなー〉と言われたんです」
――それは松永さんにとって、かなり新鮮な出来事だったのでしょうか。
「はい。そう言われてみると、〈事務所の方針で〉とか、〈大人に言われて〉みたいなことを考えたことが、この稼業を始めてからほぼないんですけど、それは別に事務所も強くないし、そう言われるような大きな立場にある大人もいないからなんですけどね(笑)。だから、本当にそれで言うと、自分は作りたいものをずっと作ってきただけで……」
――それは、冒頭におっしゃっていた〈句読点がない〉からこそ、自由であれるのかもしれませんし。
「そうですね。モラトリアム中年だからこそ描き続けることができるのかもしれない。そういう意味で、男性が年齢を重ねていくにあたり、自分を解放していく一つのモデルケースとして聴いていただけたら嬉しいですね」
〈オジ割〉をください
――まとまりました(笑)。そして、リリースツアー〈不惑誘惑ツアー〉や、リリースイベント〈不惑迷惑カラオケツアー〉も控えています。
「不惑は迷惑である、だからこそ同時に誘惑したいという気持ちがありますね。昨年から今年にかけて行っていた、47都道府県ツアー〈四十七人のの松永天馬〉はギタリストとのアコースティックツアーだったんですけど、〈不惑誘惑ツアー〉はひさしぶりにバンドセットのツアーとなっておりますので、ぜひとも不惑の男に誘惑されにおいでください」
――老若男女問わず。
「はい、老若男女問わず! 男性大歓迎! そうだ、〈男性割〉があればいいのかな!? 〈40歳以上の男性は1,000円で観れます!〉というのはどうだろう? 別に40代だからといって、お金を持ってるわけではない時代ですし。そうだ…… 〈オジ割〉だ! 〈オジ割〉をやろう!」
――女性割や学割ではなく、 〈オジ割〉は新しいかもしれませんね。
「〈オジ割〉はポップですね、キャッチーですね! 水割りならぬ〈『オジ割』をください〉って言ってね(笑)」
RELEASE INFORMATION
リリース日:2022年2022年11月2日(水)

■初回生産限定盤(CD+DVD)
品番:TEN-0004 / 0005
価格:4,400円(税込)
■通常盤(CD)
品番:TEN-0006
価格:3,000 円(税込)
TRACKLIST
CD
1. そうだろうどうだろう
2. バニーガールアーミー(feat. キングサリ)
3. 推さないで
4. SEXY HARAJYUKU
5. ナイトサファリ
6. ぼくたちは失敗
7. キリスト・ロック
8. パフェ評論(feat. 天神・大天使・閻魔)
9. 君とは結婚すると思ってたんだ
10. 不惑惑惑
DVD
「松永天馬47都道府県ツアー~四十七人の天馬~東京公演」@渋谷WWW(110min)
1. ラブハラスメント
2. 生欲
3. ポルノグラファー
4. Blood,Semen,and Death.
5. 君は億万画素
6. 好きな男の名前、腕にコンパスの針で書いた
7. ワンピース心中
MC
8. 天馬のかぞえうた
MC
9. ピンクレッドVII
10. 生転換
11. 身体と歌だけの関係
EN1
12. ナルシスト
EN2
13. 不惑惑惑
MC
14. シンジュク・モナムール
MUSIC VIDEO「バニーガールアーミー」feat. キングサリ
■予約者優先 購入者特典情報
・初回生産限定盤と通常盤、それぞれにデザイン違いのステッカー封入特典あり
・タワーレコード オンライン・タワーレコード店舗特典:TMトランプ柄・トレーディングカード ※全4種ランダム配布
LIVE INFORMATION
松永天馬「不惑惑惑」インストアライブ ~不惑迷惑カラオケTOUR~
2022年11月2日(水)タワーレコード池袋店
開演:19:00
2022年11月3日(木・祝)タワレコ―ド錦糸町パルコ店
開演:13:00
2022年11月12日(土)ヴィレッジヴァンガード下北沢
開演:15:00
2022年11月17日(木)タワーレコード梅田NU茶屋町店
開演:19:00
2022年11月20日(日)タワーレコード名古屋パルコ店
開演:13:00
2022年11月26日(土)ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
開演:13:00
2022年11月27日(日)タワーレコード渋谷店 5F イベントスペース
開演:13:00
松永天馬 “不惑惑惑” RELEASE TOUR ~不惑誘惑~
2022年12月29日(木)愛知・名古屋 CLUB UPSET
開場/開演:18:30/19:00
2022年12月30日(金)京都・祇園 EN-LAB.《エンラボ》
開場/開演:18:30/19:00
2023年1月8日(日)東京・渋谷 WWW
開場/開演:17:00/18:00
3地区通し券:16,500円(税込/ドリンク代別/オリジナルチケット&オリジナルグッズ付)
単日前売券:5,500円(税込/ドリンク代別)
※整理番号順先着、なくなり次第終了
当日券:6,600円(税込/ドリンク代別)
入場順:通し券→前売券→当日券 お一人様2枚まで 3地区通し券:紙チケット 単日券:スマチケ(同行者登録必要)
一般発売:2022年9月3日(土)10:00~
https://eplus.jp/temmamatsunaga/

PROFILE: 松永天馬
音楽家、詩人、ときどき俳優、映画監督。2008年、〈トラウマテクノポップ〉バンド・アーバンギャルドのボーカル、コンセプターにしてリーダーとして『少女は二度死ぬ』でデビュー。すべての歌詞を担当し、ポップかつ実験的、独特な言語世界を構築。2015年、早川書房より「自撮者たち」を発表し作家活動を開始。2017年、よりディープな詩世界、〈男性〉性に踏み込んだキャリア初のソロアルバム『松永天馬』をリリース。バンドと並行してソロ活動を本格化。2018年、初の長編映画「松永天馬殺人事件」を監督・脚本・音楽・主演。新人映画の登竜門〈MOOSIC LAB 2018〉にてミュージシャン賞、男優賞のほか、余りにも規格外な内容であることから急きょ新設された〈松永天馬賞〉を受賞後、劇場公開。2019年、タワーレコード内にプライベートレーベル〈TEN RECORDS〉発足。第一弾としてセカンドソロアルバム『生欲』リリース。2022年よりYouTuberとしても活動を開始。またソロデビュー5周年を記念し、無謀ともいえる47都道府県ツアー〈四十七人の天馬〉を開催中。11月、3年ぶりとなるソロサードアルバム『不惑惑惑』をリリース。俳優としては「Let’s 天才てれびくん」(NHK Eテレ、2015年)、「シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎」(NHK BSプレミアム、2016年)、「リコカツ」(TBS、2021年)などで異形の存在感を発揮。上坂すみれ、新しい学校のリーダーズ、twinpaleなど数々のアーティストに作詞・楽曲提供も行っている。自作詩を朗読して勝敗を決める〈詩のボクシング〉の世界チャンピオンタイトル保持者でもあり、ジャンルを越境して多岐にわたって活動する全身表現者。



