現代フォルクローレの先駆者たちとアギーレ同世代が描いたラ・プラタ川をめぐるピアノ弾き語りの傑作
コンテンポラリー・フォルクローレのキーパーソン、カルロス・アギーレ待望の最新作。アギーレは昨年(2018年)1月に日本でソロ・ツアーを行ったが、本作収録曲の半数以上は日本公演で取りあげており、その時のアイデアが結実したのがこのアルバムである。全編ピアノ弾き語りで、自作が1曲もないという点は、これまでのアギーレ作品を聴いてきたリスナーを戸惑わせるかもしれない。しかしここにあるのは、偉大なる先駆者たち、そして同世代の仲間たちとアギーレが分かち合ってきた世界観であり、常にアギーレ作品においても重要なテーマであった、ラ・プラタ川とその支流(パラナー川、ウルグアイ川など)に暮らしてきた人々の生活や、彼らの対峙してきた自然を映しているという共通点がある。
パラナーの優れた作曲・作詞家であるチャチョ・ムリェル(①⑨)、現在92歳の巨匠ラモン・アジャラ(②)、ウルグアイの社会派アニバル・サンパージョ(⑥⑦⑩)、ウルグアイの代表的語り部アルフレド・シタローサ(⑤)、パラナー川周辺にあったアフロ文化に取材した名曲(③)、アルゼンチン・フォルクローレ最高の詩人の一人ハイメ・ダバロス(⑫)など、独自の視点で選んだ名曲に加え、チャコ出身でアギーレとは古い付き合いのコキ・オルティス(⑪)、私生活での元パートナーだった歌手シルビア・サロモーネ(④)、共にシャグラダ・メドラ・レーベルを興した同胞ルイス・バルビエロ(⑧)という新世代の作品も組み合わせ、時代と地域の縦横の広がりをさりげなく見せる構成になっている。
今年10月、アギーレは同郷の優れたピアニスト、セバスティアン・マッキ(初来日)、ゴンサロ・ディアス(ds)と共に日本ツアーを行う。アギーレ・グループとは異なる、マッキを核としたトリオだが、アギーレとマッキが音楽的に共有する部分は、このアルバムに示された世界と非常に関連が深い。来日前にぜひチェックを。
LIVE INFORMATION
セバスティアン・マッキ・トリオ/カルロス・アギーレ ジャパン・ツアー2019
【出演】セバスティアン・マッキ(p, vo) カルロス・アギーレ(g, b, p, vo) ゴンサーロ・ディアス(ds, perc)
○10/19(土)山形・文翔館
○10/21(日)東京・ひらつかホール
○10/24(木)名古屋・ボトムライン
○10/25(金)大阪・天満教会
○10/26(土)岡山・蔭凉寺