(左から)りんすけ、ミサト、中根トモヒロ、稲本裕太

UKロックやインディー・ポップから影響を受けたキラめくようなポップ・センスや親しみやすいメロディーが注目を集める京都のバンド、Crispy Camera Club(以下、CCC)。ソングライティングを担当するヴォーカル/ギターのミサト、ドラムスのりんすけ、ベースの中根トモヒロという3人によって2016年に結成されたCCCは、昨年ファースト・ミニ・アルバム『SWAG』を発表し、地元関西を拠点に精力的な活動を展開してきた。そんななか、ギタリストとしてバンドをサポートしてきた稲本裕太(花泥棒/Pale Fruit)が、今年に入って正式メンバーに加入。4人編成となって作り上げた新作『ROMA』は、バンドが新たな方向へと向かう分岐点とも言える重要な作品になった。彼らがめざす〈ロマンティック・ユース〉とはどんなサウンドなのか。メンバーの4人に新作について話を訊いた。

Crispy Camera Club 『ROMA』 KOGA(2019)

頼れる司令塔の正式加入

――稲本さんは、これまでサポート・ギタリストとしてバンドに関わってきて、本作で正式にメンバーとしてバンドに加入することになりました。何かきっかけがあって、というより、自然な成り行きだったのでしょうか?

稲本裕太(ギター)「そうですね。僕は思ったことはなんでも言う性格なんですけど、サポートとして手伝っているときは、曲についてはあまり言わないようにしていたんです。自分で曲を作って歌っているバンドではないのに、自分の色を出すのは嫌だったんで。でも、横で見てて〈これは言わなきゃ、ダメだな〉と思う場面が結構あった。そういうことが続いたとき、これはちゃんと言うほうが誠実かもしれないなと思ったし、それだったら、ちゃんとバンドに入ったほうがいいと思ったんです」

Crispy Camera Clubの2018年のミニ作『SWAG』収録曲“雨があがったら”。稲本は当時サポート・ギタリストながらMVにも出演している

――バンドとしては、稲本さんからの意見には一目置いていた?

ミサト(ヴォーカル/ギター)「そうですね。(稲本と)好きな音楽は被っているので、その好きなポイントを曲に活かすための良いアイデアを出してくれるんです」

中根トモヒロ(ベース)「あと、メンバーのなかではいちばん年上で音楽歴も長いので、いろいろと頼れる部分があるんですよ。正式にバンドに入ってもらったことで、よりバンドがまとまったというか。いまでは稲本さんが指令塔みたいな存在になっています。センスって経験値が作っている部分が大きいじゃないですか。そういう点で、稲本さんのセンスがいちばん頼れる気がするんですよね」

 稲本がフロントマンを務めていたバンド、花泥棒の2013年の楽曲“渚”

――歳の差があるメンバーがいることで視線も広がりますね。例えばオアシスが好きでも、世代が違えば好きなポイントとか聴き方は違うし。新編成になったことで曲作りのアプローチに変化はありました?

ミサト「これまではみんなが出したアイデアを詰め込むアレンジだったんですけど、稲本くんが入ってからは、シンプルだけど曲の良さを引き立てるアレンジになってきた気がします」

――ギタリストがひとり入るとギター・サウンドも変化しますよね?

ミサト「そうですね。私のギターの弾き方も変わったと思います。稲本くんが〈このバンドみたいな感じに弾いたら、もっとイメージに近づくんちゃう?〉って具体的に言ってくれるので。これまでは、そういうことを全然考えずに弾いてたんです」

――メンバーでありながら、ちょっとプロデューサーっぽい役回りですね。いま稲本さんは東京に住んでいて、他の3人は京都にいるそうですが、そんななかで『ROMA』はどんなふうに作り上げていったのでしょうか?

稲本「僕は最初に曲作りを担当しているミサトさんが弾き語り状態で録音したデモを聴いて、その後、3人がスタジオで合わせた音が送られて来るんです。そこで〈こういうアレンジか!〉と驚くんですよ。それが〈なんや、これ?〉っていうときもあるけど、〈これは、俺には出せなかったな〉みたいなやつが来るときもある。それで、音をやりとりしながら上手いこと噛み合うと、CCCの音になるんです。これまで1年ちょい一緒にやっているんですけど、徐々にCCCの音が出来てきた気がしますね」

りんすけ(ドラムス)「大体、7割くらいできた状態で稲本くんに送って、そこに彼が音を入れてくれたら完成、という感じでした。作っているときに〈う~ん〉って悩んだ曲も、稲本くんのギターが入れば大丈夫やと思って送ってましたね」