作曲家によって演奏スタイルを柔軟に変えるミヒャエル・ザンデルリンク。ベートーヴェンはピリオド奏法を取り入れ室内楽的な響きで聴かせる。ピリオド奏法も過度に用いるわけではなく、どこか素朴でありながらすっきりとした印象を残す。父クルト・ザンデルリンクの影響によって、常に身近にあったというショスタコーヴィチでは、ロマン派様式で演奏されるが、ただ重厚な演奏というわけではなく、全体に漂う張りつめた緊張感と、鋭利な刃物のように鋭く響く弦楽器に耳を奪われる。幼少から培った深い洞察力から生み出されるその迫真の演奏は必聴。一人の指揮者で異なったスタイルの演奏が聴けるのも魅力。