ロックンロールへの憧れを小さな胸に抱え、猛々しくブルースを鳴り響かせてきた札幌在住の5人組が、ジャパニーズ・スタンダードをヒントに得たポップネスとは!?
Drop’sなりの〈ポップ〉
ミッシェル・ガン・エレファントやThe Birthdayなどをきっかけにしてロックンロールに魅せられた中野ミホ(ヴォーカル/ギター)を中心とする5人組ロック・バンド、Drop’s。ガレージ感のある生々しいロックンロール・サウンド、そして、ブルース・フィーリングを感じさせるヴォーカルによって熱い支持を得てきた彼女たちから、2枚目のフル・アルバム『HELLO』が届けられた。5月にリリースされたファーストEP『コール・ミー』のタイトル・チューンを含む本作について中野は、「より多くの人に聴いてもらいたいと思ったし、自分たちなりに〈ポップなもの〉をやってみたかった」という。Drop’sにとってのポップとは何か?というテーマに向き合うなか、彼女は70年代の歌謡曲〜ニュー・ミュージックにヒントを見い出すことになる。
「『コール・ミー』で荒井由実さんの“卒業写真”をカヴァーさせてもらったんですけど、70年代のポップス、歌謡曲ってすごく素敵だなって思ったんですよね。山口百恵さんの曲もイイなと思うし、歌詞に関しては、はっぴいえんども好きなので、松本隆さんが特に素晴らしいなって。70年代の曲って、極端に明るい感じでもなく、リズムでグイグイ押す感じでもなくて、きれいなメロディーと切ない歌詞がずっと残るんですよね。そういう感じを自分たちの音楽にも取り入れられないかなと思って。結果的に、いままでよりもポップな曲が増えたと思いますね」(中野ミホ:以下同)。
70年代の音楽からの影響をナチュラルに反映させることで中野は、みずからのソングライティングの幅を大きく広げてみせた。“コール・ミー”の叙情的なメロディーライン、「ひたすら甘い感じの曲にしたかったんです。昭和のキャバレーで歌ってるようなイメージもありました」という“ためいき”、ドラマティックかつエモーショナルな旋律を軸にした“星の恋人”などを聴けば、ソングライターとしての成長を実感してもらえるはずだ。また、どこか懐かしい雰囲気を感じさせる歌詞も、本作の聴きどころのひとつ。そこにも〈聴き手に寄り添える楽曲を作る〉という意識が働いていたようだ。
「いままでは自分のなかにあるモヤモヤした気持ちを吐き出すような感じで書くことが多かったんですけど、今回は〈発信する側として、どんなことが出来るか?〉ということを考えるようにしていました。(歌詞のテイストが)懐かしい感じというのは、私自身、そういうものが好きだからかもしれないです。洋服も映画も、古いものに興味を惹かれるので。あとは、最近聴いてるフォーク・ソングの影響もあるかもしれないですね。友部正人さんとか、高田渡さんとか。萩原朔太郎の詩も好きですし。ただ、昔の感じをそのままやるだけでは、いまバンドをやってる意味がないと思うんですよね。私ひとりでやってたら、もっと自分の趣味が出ちゃう気がするんですけど(笑)、5人でやることでいまのDrop’sの音になるというか。それは自分たちの強みだと思います」。