タイトにフレーズを絡ませ、ときに重なり合う2本のギター。ぐいぐいと推進していくようなグルーヴを生んでいるベースとドラムス。きらびやかで、80s風で、ダンサブルなギター・ロック・チューンだ、と思った。すぐに思い浮かんだのが、英国を代表するバンドへと成長した1975のセカンド・アルバム『I Like It When You Sleep, For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It(君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。)』(2016年)のサウンド。だが、透き通るようにクリーンでクールな音が特徴だった1975のセカンドと比べると、[ALEXANDROS]の新曲“あまりにも素敵な夜だから”はよりアグレッシヴだ。演奏しているメンバー4人の汗が飛び散っているさまが想像できるほどに泥臭く、〈がむしゃら〉と形容したくなるほど。例えば、サビの終わりで聴ける川上洋平(ヴォーカル/ギター)のシャウト/スキャットは、まるで岡村靖幸のようにパワフルかつソウルフルで、〈揚げ足取るやつ ewww! it makes me sick〉というラインはラッパーが〈ヘイター(批判者)〉をこき下ろしているかのように聴こえる。NHKドラマ10「ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル~」のために書き下ろされ、〈失敗〉や〈間違い〉について歌われるこの曲は、踊ることで〈間違い〉を蹴散らそう!と大胆にも主張する。〈応援ソング〉という安直な言葉があるが、これは傷だらけになりながらももがく姿をドロスが見せつける新しい〈応援ソング〉なのかもしれない。