日食なつこが放つ言葉は彼女自身にも容赦ないが、聴き手にとっても同様だ。いつまで経っても動けない自分を、疾走感のある電子音が鼓舞するように鳴る“100”。優しいピアノの音に軽快なタップが重なり、〈まだ生まれてもいない未来に期待はすんなよ〉とピリリとしたスパイスが加えられる“seasoning”。悲痛な叫び声にも似たフィドルの音に、生々しい言葉が書き連ねられた “お役御免”。本当の自分を寝かしつけるように、アコースティック・ギターが切なく響く“話”。あらゆる〈音〉が〈感情〉を際立たせる。言われて痛かった言葉。なぜ、その歌詞が胸を刺したのか。いま一度、自分の内側と向き合いたくなる、そんな一枚。
〈ここを登り切ったら山頂だ、一息つける〉という気持ちを持っていても、頂上に着いたらもうその次の山の方を見ている。安定とか幸福とかを手にしても、自分を律し、戒め続けるような気持ちを忘れない。日食なつこは自分にどこまでも厳しい人だなと思う。しかし、だからこそ美しく、かっこよい。それに、その道中で生まれた〈苦しい〉〈辞めたい〉といったネガティヴな感情をバネに、自分自身にカウンター・パンチを次々と食らわせる様は、何より見ていて痛快だ。
これまで挑んできた弾き語り形態、バンド形態の楽曲もあるにはあるが、トラックメイカーを迎えたり、オケやタップ、フィドルを迎えたりと、音楽面でも新機軸の今作。そんな楽曲に、例えば“white frost”の〈地元を離れ、この街でやっていくんだ〉という決意表明のごとき力強い言葉が乗っかれば、否が応でも胸にズシンと響く。
そういえば故郷を大事にするスタイルって以前はロック・バンドでもソロ・アーティストでも多く見受けられたけれど、いまではずいぶん少なくなったかもしれないな(ヒップホップではいるけれど)。大切なものを忘れたくない人に聴いてもらいたい、2019年最初の傑作。