鹿子裕文 ブードゥーラウンジ ナナロク社 (2020)

2020.02.04

福岡・北天神に位置するThe Voodoo Lounge。これは2017年初頭に移転する前の同ライブハウスを舞台に、猥雑さと熱狂が渦巻く光景、悲喜こもごもの人間模様を記録したドキュメントだ。主役は、はみだし者が集うイヴェント〈ラウンジサウンズ〉を主宰するなどシーンの顔であるボギー(nontroppo)と、その弟にして不世出の歌うたいのオクムラユウスケ。2人の、愛と笑いと涙と音に溢れた生活、出会って別れ再会し、またさよならを繰り返す人生の数年間が、そこにいた人間ならではのありありとした筆致で描かれている。なにより胸を打つのは、記録者たる著者にとっても再生のストーリーであること。ポップの巨大な歴史にはきっと残らないであろう、どこかの街の小さな音楽の場で日々起きていることの尊さを、この本は教えてくれる。

 

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