
TOWER VINYLにサンダーキャットが現れた!
TOWER VINYL SHINJUKUにサンダーキャットが現れた! マジで。キティちゃんのマスク、ヒョウ柄の耳マフ、ピカチュウのリュック。体型はちょっとすっきりした印象だけど、紛れもなくこの出で立ちは彼そのもの。

2017年の『Drunk』以来となる最新作『It Is What It Is』のプロモーションで来日したサンダーキャットに、レコードだらけの売り場でフェイヴァリットなアルバムを選んでもらい、それぞれにまつわる思い出を訊くという楽しみすぎる企画がこれから始まる。それにしても、さっきから近くで鳴ってる音楽はどこから……? なんと彼がリュックにぶら下げていた黄色いスピーカーからだった。

スタンリー・クラークはベースの革命児
さて、まずはどこから見始める? サンダーキャットの第一声は、「スタンリー・クラークはどこ?」。チック・コリア、アイアート・モレイラとのグループ、リターン・トゥ・フォーエヴァーをはじめ、ジャズ、フュージョン、ロック、ブラジル音楽とジャンルを横断して活動するジャズ・ベーシストだ。そのコーナーを探して、おもむろに歩き出すカラフルな男(サンダーキャット)。そして手にしたのは76年のアルバム『School Days』だった。


「彼はベースの革命児だと思う。学んだことは多いよ。作曲法、作曲するためのフィーリング、大胆なフレージング。俺にとって生涯のフェイヴァリット・ミュージシャンだよ。そして、このアルバムは俺が初めて譜面に書き起こしをしたアルバムでもある。そういう意味でも、俺のトップ・アルバムのひとつだね」。
レコードをしげしげとみながら、「あんまりこのアナログは見かけないんだよ」と誰に聞かせるでもなくつぶやく。そして「日本でレコードを買い出したら大変だ。持って帰るのがめちゃくちゃ重くて大変だから」と笑った。レコードを持ち運ぶ重さは、やっぱり万国共通の悩みなのだった。
ジャコ・パストリアスの“Portrait Of Tracy”を聴いて俺の人生が完全に変わってしまったんだ
ジャズ・ベーシストと言えば、やはりこの人も外せないだろう。ジャコ・パストリアス。超人的なテクニックと自由奔放なアイデア、そしてドラマチックな一生を駆け抜けた伝説的な存在だ。
「セルフ・タイトルのファースト・アルバム(76年作『Jaco Pastorius』)。たぶん、俺の人生でもっとも重要なアルバムだと思う」とサンダーキャットは断言した。そのプレイを少年時代に初めて聴いたときのエピソードがおもしろい。「あれは午前3時だったかな。パパが深夜ラジオでジャコの“Portrait Of Tracy”が流れてきて、わざわざ寝てた俺を起こしにきたんだよ(笑)。俺はその当時、ベースを熱心に練習してたからね。その曲ではたくさんベースの音が聴こえて、一度におおぜいのプレイヤーがやってるみたいだった。でも、パパが〈ジャコがひとりで弾いてるんだよ〉と教えてくれた。それを知ってぶったまげたよ。そこから俺の人生が完全に変わってしまったんだ」。
午前3時の目覚ましがわりに聴いたジャコのベース・プレイ。それは絶対記憶に残るよね。
「ジャコにはベースという楽器にできる可能性の大きさを教わった。彼は偉大なイノベーター。いまも俺を〈もっと弾け〉と鼓舞し続けてるんだ」。

俺が子どものころに観てたカートゥーンはみんな日本で作られたやつだったんだよ
日本の音楽は探しているかと訊くと、「最近はゲーム音楽のアルバムを聴いてる」という答えだった。アニメのサントラのコーナーでは「キャロル&チューズデイ」のサントラLPで手が止まった。「俺とフライング・ロータスが参加してるんだ。渡辺信一郎(のアニメ)はいいよね」。
第6話『Life is A Carnival』音楽シーン
— TVアニメ「キャロル&チューズデイ」(公式) (@carole_tuesday) May 15, 2019
♪unrequited love/SKIP (Vo.Thundercat)
作詞・作曲・編曲:Flying Lotus,Thundercat
♪Unbreakable/CRYSTAL (Vo.Lauren Dyson)
作詞・作曲・編曲:Evan Bogart,Justin Gray#キャロチュー #CandT pic.twitter.com/i9tMss4lXZ
あらためて彼が大好きだと公言している日本のアニメについて訊くと、話が止まらなくなった。
「日本のアニメを知ったのは、若い頃。ていうか、12歳くらいのころ、コミック・ストアで働いたことがあるんだ。それは俺がいままでにやった唯一のバイト。最初に出会ったアニメは『ドラゴンボールZ』。それから『犬夜叉』。『犬夜叉』は最初に絵だけ見た時点からそそられたな。後になってわかったんだけど、俺が子どものころにアメリカで観てたカートゥーンはみんな日本で作られたやつだったんだよ。もっとこういうのを観たいと思ったけど、当時はなかなか大変だった。海賊版のVHSを買ったりしてたな。好きだったのは『北斗の拳』『ストリートファイターII』、それから〈U.S. Manga Corps〉というチャンネルで放映されたアニメが大好きだった。『ドラゴンボール』の実写版? あれはひどかったけどね(笑)」。


ハービー・ハンコックは俺の一生のフェイヴァリット
再び、足はジャズ・コーナーへ。「お、ハービー!」と立ち止まる。「ハービー・ハンコックは俺の一生のフェイヴァリット。たくさんのことを学んだよ」。
マイルス・デイヴィスに見出され、その後のジャズ・ファンクやヒップホップにも多大な影響を与えたピアニスト、ハービー・ハンコック。なかでもサンダーキャットがレコメンドしたい一枚は『Fat Albert Rotunda』(69年)。
「このアルバムの“Tell Me A Bedtime Story”はすごいよ。クインシー・ジョーンズや笠井紀美子もこの曲をカヴァーしてるけど、このオリジナルには敵わない。サウンドもスタジオ・ワークも完璧なんだ」と言い切る。
「このアルバムを見つけたときのことを覚えてるよ。昔は、俺とカマシ(・ワシントン)、ブランドン・コールマンとかとよく一緒にレコード店に行った。みんな、かっこいい音を求めてたからね。最初にこのアルバムを見つけたときは、〈へえ、買ってみるか〉くらいの感じだった。車のなかでブランドンと一緒に再生してたんだけど、“Tell Me A Bedtime Story”が流れ出したらブランドンが車を止めてしまった。俺らふたりとも、車を止めてしまうくらいこの曲の美しさにぶちのめされてしまったんだ」。

フランク・ザッパからは受けた影響は〈自分の持てる力を追求し続けろ〉ってこと
サンダーキャットが自身の音楽にとって、もうひとりキーボーディストとして重要な存在に挙げていたのが、ジョージ・デューク。「彼はいろんな音楽のハブだった」と語り、フランク・ザッパのコーナーへ。
「ザッパで、いちばん好きなのは『Over-Nite Sensation』(73年)と『Appostrophe (’)』(74年)。その2枚が一緒になったCDを買って聴いてた。あの2枚は完璧だよ。ジョージ・デュークという天才がいた時期の作品でもあるし」。

93年に亡くなるまで何十枚もの異色の傑作を作り、アメリカのポップ・ミュージックに対峙し続けたザッパという存在は、彼にはどう映っているのだろう。
「ザッパから受けたいちばん大きな影響は、間違いなく〈自分の持てる力を追求し続けろ〉ってこと。ザッパが成し遂げたことは大きすぎる。今日に至るまでザッパに匹敵できたミュージシャンはいない。傑作が多すぎるよ。『Sheik Yerbouti』(79年)、『Zappa In New York』(78年)、『Thing-Fish』(84年)とか……」。
ちなみにサンダーキャットが最後に挙げたアルバムはどれもアナログだと2枚組以上。やっぱりそういう圧倒的な情報量を持った作品に彼は惹かれてしまうのかもしれない。


ブラジル音楽は俺の音楽に大きな影響を与えた
「ジョージ・デュークの仕事を通じて知ったブラジル人ミュージシャンも多いんだ」と、ブラジル音楽コーナーへ。
「ブラジル音楽は俺の音楽に大きな影響を与えた。特に好きなのは、ミルトン・ナシメントやミナスの音楽。エグベルト・ジスモンチも大好きだな。彼の作る曲はどれもすさまじくて、指で音符を追うことすらできない。ブラジル音楽という領域を超越した特別なものになってるんだ。ジスモンチとエルメート・パスコアールの『História Da Música Popular Brasileira』(83年)というアルバムも美しくて素晴らしいよ」。
残念ながらその共演盤は見当たらなかったけど、彼はしっかりパスコアールのアルバムは掘り当てていた。「エルメートを俺に教えてくれたのはカマシなんだよ」。みんなで一緒にレコード店に行ったエピソードといい、彼らの音楽談義が目に浮かんで、それだけで楽しい気持ちになる。

スレイヴ“Watching You”で俺はひとり踊りながら、その曲に惚れ込んだ
そろそろ取材時間が終わりに近づいてきたのだが、「ファンクのことも話さないか」と言って、サンダーキャットはソウル/ファンク・コーナーへと向かう。そして、スレイヴのコーナーでアルバム『Stone Jam』(80年)をピックした。
彼の新曲“Black Qualls”で、スティーヴ・レイシー、チャイルディッシュ・ガンビーノというバリバリに現代的な顔ぶれと並んで参加しているのが、ファンク界の大ヴェテラン・シンガー、スティーヴ・アーリントン。そのアーリントンがかつて参加していたオハイオ州のグループが、スレイヴだった。
「スティーヴ・アーリントンを知ったのは、俺がブランドン・コールマンとギグをやったときのこと。その日、ピアノのテックで入っていたスタッフが俺らより年上でね、彼はいつも10代のころに好きだった音楽のことを話してくれたんだけど、彼からスレイヴを教えてもらったんだ。ギグの後に彼はDJでスレイヴの“Watching You”をかけた。それを聴きながら、俺はひとりで踊った。踊りながら、その曲に惚れ込んだ。もっとスレイヴのことを知りたいと思った。そして、それからすべてのアルバムを買った」。
スレイヴの全盛期だった70年代後半から80年代の前半には、似たようなディスコ・ファンク・グループがたくさんいた。そのなかでもスレイヴがサンダーキャットの心を躍らせたのは、なぜなんだろう?
「スレイヴのサウンドにはブラック・エクスペリエンスがはっきりと滲んでいる。みんなが楽しめるダンス・ミュージックだけど、本質はとてもブラックなのさ。スヌープ・ドッグみたいな人が気がつくタイプの本質が、彼らにはあるんだよ」。

いつかドナルド・フェイゲンと一緒に仕事してみたいな
さて、そろそろタイムアップ。もう心残りはないかなと思いきや、どうやら壁に飾ってあるレコードで見逃せない一枚を見つけたらしい。
「ドナルド・フェイゲンを忘れちゃいけない。『The Nightfly』(82年)はとんでもなく重要なアルバムだ。スティーリー・ダンもいいけど、彼がソロで出した『The Nightfly』には敵わない。俺の人生にすごく大きな影響を与えたんだ。全曲好きだから、聴くときは絶対に曲はスキップしない。最初から最後まで完璧に美しく作られているんだからね」と言い終えて、ポツリと最後に「いつかドナルド・フェイゲンと一緒に仕事してみたいな」とひとこと。
『It Is What It Is』の国内盤ボーナス・トラックに入っている“Bye For Now”に参加しているマイケル・マクドナルドは、ヨット・ロック・ブームによる再評価でも注目されたシンガー・ソングライターだけど、彼はドゥービー・ブラザーズ以前にスティーリー・ダンに参加していたことがあるし、ドナルド・フェイゲンとツアーしたこともある。その〈いつか〉は、あながちそんなに夢物語じゃないかもしれない。
というわけで、サンダーキャットがTOWER VINYL SHINJUKUでセレクトした6枚のアルバムを両手に持って、最後に記念写真をパチリ(タワーレコード店員専用のエプロンと名札もつけて)。
サンダーキャットが選んだレコード
INFORMATION
THUNDERCAT x TOWER RECORDS CAMPAIGN 2020
大ヒット作『Drunk』から3年……。サンダーキャット、超待望のニュー・アルバム『It Is What It Is』発売を記念して、タワーレコードで店頭キャンペーン開催決定! 期間中に対象店舗で新作『It Is What It Is』を買うと特製ストラップを、旧譜を買うとオリジナル・ステッカーを先着特典でプレゼント! また、店頭にて特製小冊子を配布中!
期間:2020年4月3日(金)~5月10日(日)
開催店舗:全店(もりのみやキューズモール店を除く)
※特典は無くなり次第終了
https://tower.jp/article/feature_item/2020/01/16/0101


■特製ストラップ
特典対象商品:Thundercat『It Is What It Is』日本盤CD5形態(BRC631/BRC631TS/BRC631TM/BRC631TL/BRC631TXL)
■特製ステッカー
特典対象商品:
日本盤CD3形態(旧譜廉価盤3タイトル)
Thundercat『The Golden Age Of Apocalypse 期間限定スペシャル・プライス盤』(BRC443Z)
Thundercat『Apocalypse 期間限定スペシャル・プライス盤』(BRC383Z)
Thundercat『Drunk 期間限定スペシャル・プライス盤』(BRC542Z)
LIVE INFORMATION
THUNDERCAT JAPAN TOUR 2020
2020年4月21日(火)大阪・心斎橋 BIGCAT ※延期
2020年4月22日(水)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO ※延期
2020年4月23日(木)東京・恵比寿 THE GARDEN HALL ※延期
THUNDERCAT JAPAN TOUR 2021
2021年1月27日(水)東京・恵比寿 GARDEN HALL ※延期
2021年1年28日(木)大阪・心斎橋 BIGCAT ※延期
2021年1月29日(金)愛知・名古屋 CLUB QUATTRO ※延期
*2021年1月6日追記
〈Thundercat Japan Tour 2021〉延期のおしらせ
海外での新型コロナウイルス変異種の感染拡大および日本国内での感染拡大に対する政府の対応を受け、サンダーキャットのジャパン・ツアーは延期になりました。主催のビートインクは現在、振替公演を開催すべく調整中とのことです。すでにチケットをお持ちの方は、お手持ちのチケットで振替公演にご来場いただけますので、大切に保管していただくようにお願いいたします。振替公演に都合がつかない方は、払い戻しができます。払い戻しの詳細についても現在調整中とのことですので、お手持ちのチケットを大切に保管していただくようお願いいたします。
お問い合わせ(ビートインク):info@beatink.com
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11658