〈今のサンダーキャット〉を映し出す通算5作目となるスタジオ・アルバム
ドラムの音が変わった! これが一聴した最初の印象だ。
サンダーキャットの作品は、シンセサイザーやフェンダー・ローズなどヴィンテージ・キーボードがふんだんに使われた’80年代クロスオーヴァーやAORを思わせるラグジュアリーなアンサンブル、ベーシストという枠ではくくれないほど魅力的でシルキーなヴォーカルとコーラス、それに対してはややテイストの異なる宅録感があるのが特徴である。
ヴィンテージ系ドラムマシンが多用されていて、フェイザーやコーラスをかけたベースが加わることにより、ボトムが太くどっしりしている。それが個性でもあったわけだが、その宅録感は損なわずに、全体的に音の抜けが良くなったと感じた。ケネス・ブルームがミックスに参加した影響もあろうか。そして一曲が短く、Track 2.を除き2分~3分台の曲が揃うところもこれまでの作品を踏襲している。
クイズ番組ジングルのようなコードで始まるTrack 1.、続く爽やかなベースの跳躍パターンに乗せてコーラスが加わる。落ち着いた歌モノかと思いきや、1分ほどで超絶ベースプレイが炸裂、とすぐにそれに続くアナログ・モノシンセ(ミニムーグ?)のソロが展開し(こんなシーンはTrack 13.にも見られる)、バックのストリングス・シンセ・セクションが煽る。アルバムの中では最もプログレッシヴなインスト重視の豪華なプロローグを冒頭にもってきたわけだ。
Track 3.はスティーヴィー・ワンダーの“I Wish”を思わせ、Track 6.は10ccを彷彿させるなど、ノスタルジックな感覚も刺激されるが、イントロのコード進行からしてつかみの良いTrack 5.のシンセ、Track 7.のベース・アルペジオなど、マイナー9th(≒メジャー7th)平行移動とマイナー⇔メジャー変換といった今ジャズ!なコード進行もふんだんに使われていて唸らされる。
曲によって旬のラッパーたちがフィーチャーされているのも本アルバムの大きな特徴。
それにしても楽曲の良さは職人的なわけだが、良い意味でのオタク感とヒップホップのヤンチャ感を伴っているのがサンダーキャットならでは。所謂ヒップホップ作品よりは熟達した楽曲の作りで(転調の妙がそこかしこに)、落ち着いたクロスオーヴァー・ミュージックとしても味わえてしまうのだ。
〈Distracted(気が散っている)状態でも、その中から美しいものは生まれる〉
LIVE INFORMATION
THUNDERCAT JAPAN TOUR 2026
2026年5月19日(火)東京・豊洲 PIT
開場/開演:18:00/19:00
2026年5月20日(水)東京・豊洲 PIT
開場/開演:18:00/19:00
2026年5月21日(木)大阪・なんば Hatch
開場/開演:18:00/19:00
2026年5月22日(金)愛知・名古屋 COMTEC PORTBASE
開場/開演:18:00/19:00
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