Page 3 / 4 1ページ目から読む

音楽を音楽としてでなくデザインの観点から捉える

そうした彼のバックグラウンドをふまえると、配置の仕方によって、事象の見せ方、聴かせ方を変化させるという本作の表現アプローチは、音楽を音楽としてではなく、デザインの観点から捉えることで、新しいサウンドスケープを広げる。また、そのサウンドスケープは、DTMでの音楽制作がスタンダード化し、タイムライン上で可視化された音のレイヤーをデザインするように音楽を制作することが可能になった現代の、コラージュ的な音楽の在り方を象徴するものでもある。

そのコラージュを、ティコはどのように作り上げてきたのか。デジタル・ソフトウェアと巧みにミックスさせる形でヴィンテージ・シンセサイザーの丸みのあるサウンドを好んで用いていた初期から2011年のアルバム『Dive』以降は生音をふんだんに取り入れ、バンド編成でのライブを開始。そして、前作『Weather』で初めてヴォーカリストをフィーチャーするなど、作品を重ねるごとに人間的なあたたかみを盛り込んできたティコだが、逆にその音の響きはより解像度が高く、生活感を感じさせるローファイから非現実的なハイファイへ。『Simulcast』はインストゥルメンタル・アルバムということもあり、繊細なディティールへのこだわりを以前にも増して研ぎ澄ませていることが見て取れる。