とろけるようなカリフォルニアの優しい夕暮れ。
カリフォルニアと日本が太平洋でつながった音楽〈Tycho〉
皆さんご無沙汰しております。久しぶりの熊戦記です。
今はインディーファンが喜ぶ来日ラッシュで、多くの素晴らしいアーティストたちを日本で見ることができるのはほんとに素晴らしいことですね。特にヨーロッパに住んで感じたことは、今多くのヨーロッパ、アメリカの人が日本を見ているという現実で、彼らは、西洋にはないものを、今ほとんど全て持っているのが日本という国で、おそらく90年代以降30年位持ち得なかった日本への憧れ、日本が本当にクールであること、そういったことをひしひしと感じているんだと思います。日本にいると、その彼ら彼女たちの興奮や肌感覚みたいなものは伝わりづらいようにも思います。そして、ただこの憧れを一方的なものにするのではなく、お互いがつながって、何かより良い未来を作れる方法はないかと思考する毎日です。
さぁ、今回はこの空前のジャパンウェーブの中やってきたTychoとのインタビューをお届けします。
ただのインタビューというよりは、アーティストとして気になること、感じ取ったことを聞いてみたという感じですが、少し深いところまで話がいけたと個人的に思っています。
インタビュー場所は若林恵さんが新しく始めた虎ノ門のイケてる古本屋さんTIGER MOUNTAINです!
サステイナブルで健康的な音楽作り
三船雅也(ROTH BART BARON)「こんにちは。今日は時間を作ってくれて、ありがとうございます。昨日(2025年1月31日)のライブは最高でした」
Scott Hansen(Tycho)「ありがとう」
三船「ライブを終えて、今はどんな気持ちですか?」
Hansen「昨夜は友人と一緒にバーに行き、夜更かししすぎたので少し二日酔いだけど、とても良い一日でした。ようやく長いツアーが終わり、昨日が最後のショーだったので、今はもうすぐ家に帰れるのが嬉しくて逆に元気です」
三船「わかりますよ。もうすぐ家族にも会えますね」
Hansen「そうですね。家族がいることは本当に素晴らしいことだと思うし、ワークライフバランスを考えることで、サステイナブルで健康的に音楽が作れるようになりました。ツアーはアメリカで3週間、日本で1週間。もうすぐ子供たちに会えることが本当にうれしいです」
ドラムとベースに集中したリズミカルなアルバム
三船「作品について話を聞かせてください。近年はフィーチャリングアーティストを迎えた曲やリミックス、〈ソング〉作品が多くありましたが、今作は音楽そのものに集中している印象を受けました。
また、少し不思議なベースサウンドがサンプリングされていたり、BPMも早くてグルーヴがあり、ダンサブルなサウンドになっていると感じました。この変化は、どのようにして起きましたか?」
Hansen「今作『Infinite Health』は、コロナパンデミックの影響もあって、作品作りについて考える時間がたっぷりあったので、たくさんの音楽を作って、絞り込んで、多くの曲と深く向き合いながら進化させていきました。

あえてエネルギッシュなアルバムを作るという狙いはなかったんですが、間違いなく最も集中していたのはドラムとベース。複雑なベースラインを演奏するリズミカルな要素に拘っていたので、それが結果的に影響を与えたと思います。
実は今回のアルバムに収録されていないダウンテンポでメランコリックな曲もたくさんあるので、今後1~2年以内にそれらの作品をリリースしたいとも考えています」
三船「それはいいですね。去年(2023年)、あなたの新曲“Time To Run”がリリースされた時、僕はちょうどベルリンで音楽制作をしていたのですが、サウンドを聴いて今までのTychoと全然違うなぁ、という印象を受けました。ソリッドなギターサウンドとエネルギーのある要素がたくさん散りばめられていて、明らかにあの楽曲が今のTychoサウンドのビッグチェンジ、今作に於いての大きなターニングポイントだったと思ったのですが、どうですか?」
Hansen「“Time To Run”は、今回収録されている“Phantom”という曲と同じセッションから生まれた曲で、他にも“Totem”“Devices”といったハイテンションでパワーの強い曲があったので、この曲は敢えて収録しませんでした。そして“Green”“DX Odyssey”といった落ち着いたような曲でアルバム全体のバランスをとっていきました。
でも“Time To Run”はやっぱりライブでも盛り上がるので、自分もこの曲の良さが今になってわかってきて、今後リリースするデラックス版には入れたいと思っています」