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1. 出身地と音楽活動を始めたきっかけ(バンドであれば結成のいきさつ)について教えてください。

「中学を卒業するまでは、ビルや駅のない佐賀の片田舎で育ちました。ピアノは4歳から高校まで習っていましたがあまり真面目な生徒ではなかったです。世間からかけ離れている感覚や育った環境の複雑さもあり、もっと柔軟な人や考えのある場所を見つけたいという欲求から市内へ。音楽科のある女子校へ入学し、寮生活を送りながら音楽の勉強を。ピアノ科に講師として世界的なピアニストがいらっしゃり、その門下生として厳しくも大切な時間を送りました。まるでNHKの『スーパーピアノレッスン』みたいな、2台のGPを並べて怒鳴り散らされて泣きながら演奏なんてことが毎日。その指導がなければ音楽と向き合うことも知らずに過ごしていたはず。

思えば、窮屈さから自分を解放してあげたい一心で旅をはじめ、今日まで様々な人・物・事との出逢いと別れがありました。高校卒業と同時に一旦ピアノから完全に離れ、5年ほどブランクがあった私が今また音楽にありついた理由は、取るに足らない自分という生命の存在意義について問い続けているからだろうな、と感じます」

2. 現在の音楽性に影響を与えたと思うアーティストや楽曲は?

「昔は音楽を知るのは殆ど映画からでした。中学生の頃にゴダール作品を観て、映画音楽家のミシェル・ルグラン(孫は後に好きになるBeach Houseのヴィクトリア・ルグラン)などもそこから知り。近所の古本屋で出逢った岡崎京子作品の中でCorneliusを知って純粋に感動したり。YouTubeのお陰様で自らの好奇心と存分にお付き合いできました。

特に好きな映画監督はイングマール・ベルイマン。ヌーヴェルバーグが肌に合いますが、ダルデンヌ兄弟、ジョン・カサヴェテスやジャームッシュ、モーリス・ピアラ、ロッセリーニ、ブレッソン、ファスビンダー、ヒッチコックからアジア映画まで、柔軟なものから堅物なものまで幅広く好みます。中でも自身で作曲も行うハル・ハートリーの作るもの、選ぶもののセンスからは物作りを愉しむ基本を学びました。

彼の映画で4ADの存在や、Yo La Tengoを知ったのは高校時代。そこから辿り着いて特別気に入って聴いていたのはBlonde Redheadです」

「Enon、Sleater-Kinneyも好きで。パンクで骨のある音が大好き。

メロディラインのフェティシズム火付け曲は、日本のバンドadvantage Lucyの“so”

「YEN TOWN BAND、Lily Chou-Chou然り、この曲を聴くだけであらゆる感情や景色が蘇ってきます。10代でCDが擦り切れるほど聴きました。幼少期によく車で流れていたチューリップの“虹とスニーカーの頃”(名曲)のシンプルに不穏な感じが当時は呪いのように脳裏にこびり付いていたんだけど、その経験が今のフェチに繫ってるのかも。

何より一番影響を受けているバンド、Daughter。ギターのイゴールのような良きパートナーと出逢えたならバンドがしたい。本当に素晴らしいバンド」

「そしてThe BeatlesやKinksは勿論、Simon & Garfunkelの楽曲には何かとご縁があり、その年代特有のハーモニーの心地良さにはやっぱり影響を受けています。

弾き語りだと、Nick Drakeのママ・Molly Drakeの弾き語りを録音した音源が2013年に発売されたのですが、その演奏が琴線に触れる素晴らしいもの。素人の作曲とは思えない和声の響き」

「ジョン・ブライオンとのコラボ。胸が締め付けられます。
Elliott Smith “Everything Means Nothing to Me”(14:13-)」

James Blakeは弾き語りが特に好きです」

「まだまだありますし、引っ括めても自身の音楽性にまだ現れきれていない気がします。作詞や作曲は自分自身から自然と湧き出てくるものですが、言葉に代える必要のない個人の繊細や機微を、悲観的ではなく肯定的に寄り添えていたい。その術が私にとっては映画でも音楽でも良く、私にできる小さなことなんでしょうか。変わっていくであろう今後を楽しんでいただけたら幸いです」

 

3. 今回TOWER DOORSで紹介した曲はどんなふうに生まれた曲で、どんなことを表現していますか?

ダンスホール

「この曲は、縷縷夢兎(rurumu)に提供した“A mon seul désir”を聴いて下さった戸田真琴さんが、初監督を務めたオムニバス映画『永遠が通り過ぎていく』のエンディングテーマとして依頼をくださり完成した楽曲です。

この映画の持つ様々な表情が走馬灯のように想い起こされたなら良いなと思い、元々は“走馬灯”というタイトルをつけていましたが、歌詞にも出てくる“ダンスホール”の方がしっくりきたので変更。映画の内容がとても濃いため、言葉としての主張が強くない方がいいと思い歌詞はあくまでより抽象的に、言葉より音として寄り添うものにしたかった。ギターを用いた新たな試みや、小まめなトラックメイクに拘っています。後半からリズムを取り入れたり、私にとっては大切な過渡期に値するであろう作品となりました

rurumu:2020 spring/summer collection “A mon seul désir” by AMIKO」

「また今回のエレクトロニックな音質は恐らくBjörkはじめ、日本だとTujiko Norikoの影響が大きいです。先日FOREST LIMITで行われた日本でのミニライブにお伺いできたのですが、本当に素晴らしかったです」

 

4. 交流のあるアーティストでいま注目しているのは?

「沢山いますが、今回は孤高な方達をピックアップしてみました。

杉本亮さん。グレン・グールドのような古典的な演奏に沈吟を感じる、孤高の鍵盤奏者。あくまで例ですが日本のグレッグ・カースティンにもなり得る知性と才能だと思っています」

「もう一人のお勧めのベーシスト、大塚愛望(Ba.)とのセッションも素敵です。

彼女は、常にパンチが効いていて、けれど挑発したりはしない強い人。実は前からBassの相談をしたりとお世話になっています。最近はこちらでも何度も名前の上がっている松木美定さんともライブをしたりと、活気溢れる彼女の今後にも注目しています。

「その他にお勧めのアーティストは木(KI)です。元々知り合う前に数回ライブを観て、ひと聴きぼれしたバンド。ミニマムで洗練された音が美しい、しかもバンドというところがとっても魅力的。新曲はかなり進化しているので、1st EPから辿って聴いてほしいです」

5. TOWER DOORSは新しい音楽との出会いを提供することをコンセプトとするメディアですが、あなたが最近出会った新しい音楽は?

 「〈熊寶貝樂團〉という台湾のバンド。全曲最高なんです。残念ながら今は活動していないみたい」

Purrという最近のバンド。知人が教えてくれたのですがこちらもドストライク。Foxygenプロデュースということで、サウンドがもうそれ。サビに入った瞬間の多幸感が憎い。本当にいい曲。
あーー 両者共に震えるほど曲が良い!!」

「また最近のソロアーティストでは、Sufjan StevensMoses Sumneyが好きなのでお二人の活動はずっと追っています」

 

6. ライブやリリースといった今後の活動や、やってみたいことなど、これからの展望について教えてください。

「6月より、音楽を担当しているアプリゲーム『ALTER EGO』のスピンオフ『ALTER EGO COMPLEX』の配信が始まります。こちらの音楽もご期待ください。

今回紹介いただいた曲がエンディングであり劇伴を務めた映画『永遠が通り過ぎていく』(監督:戸田真琴)、劇伴を務めた『蒲田前奏曲』(監督:安川有果)、どちらも夏~秋頃に公開予定。

様々な映画や音楽の文化を咀嚼した上で今、自分にどんな料理が作れるのか、納得するものだけ手に取り提供していきたいです。人には多くの側面があることに素直で敏感なままで。そしてトラックメイクやアレンジメントの訓練期間にはひと段落つき、今後はシンプルに歌おうという気持ち。窮屈な世の中の流れに、自分としてどう関わって行こうか考えます。

まだまだ心躍るものに出逢いたいし、作ります。新しいものができる際にはチェックして頂けたらとても嬉しいです」