数多くのロック・レジェンドたちを撮影してきたカメラマンにして、ウェブ・マガジン〈久保憲司のロック・エンサイクロペディア〉を運営するなど音楽ライターでもあるクボケンこと久保憲司さん。Mikikiにもたびたび原稿を提供いただいております。そんなクボケンさんによる連載が、こちら〈久保憲司の音楽ライターもうやめます〉。動画配信サーヴィス全盛の現代、クボケンさんも音楽そっちのけで観まくっているというNetflixやHuluなどの作品を中心に、視聴することで浮き上がってくる〈いま〉を考えます。
今回は、ベン・スティラーやスティング、エイサップ・ロッキーら著名人が語ったサイケデリック体験を、アニメやドラマで再現しながら徹底検証していくNetflixオリジナルのドキュメンタリー映画「サイケな世界 〜スターが語る幻覚体験〜」を紹介。ドラッグ・カルチャーについても造詣が深いことで知られるクボケンさんは、この作品をどんなふうに観たのでしょうか? *Mikiki編集部
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大麻、MDMAが合法化されはじめ、次はLSDの出番?
Netflixは、なんでいま頃こんなドキュメンタリーを撮るんだと思ったんですが、オチにちゃんと理由が語られてました。
オチをいっちゃっていいのか、いいでしょう、観てる人はこのドキュメタリーが何を言いたいのかよくわからないと思いますので。
現在、アメリカでは大麻がいろいろな州で合法化されていってますが、実はMDMA、通称エクスタシーも合法化の動きがあり、その前段階として近いうちに医療MDMAが手に入るようになると言われているのです。FDA(アメリカ食品医薬品局)は、もう何年も前にPTSD(心的外傷後ストレス障害)治療用のためにMDMAを使用することを〈画期的治療法〉に指定していて、2022年には医療MDMAの流通がはじまると予想されているのです。
次はLSDというわけです。LSDは体制側からずっと危険なドラッグ、反社会的なドラッグだと考えられてきたのですが、ついに大麻やMDMAのようにPTSDや鬱病の治療に効果があると期待されるようになってきていて、今回FDAは50人の科学者に研究のためのLSD使用を許可したのです。
これに先駆けアメリカやヨーロッパでは鬱病の薬の代わりに少量のLSDを体内にとりいれるマイクロLSDという民間治療が流行っています。シンガー・ソングライターのファーザー・ジョン・ミスティもこの治療を取り入れていて、とっても体調がいいと「ローリング・ストーン」で語っています。