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即座に返していく感じがポップ

――郷太くんは前作の『TEMPLE ST.』のときも「ユニヴァーサルな音を目指した」と話していました。

「ユニヴァーサルな音っていうのは、僕のなかではシンプルなものなんですよ。ただ、日本人の好きな音楽がシンプルなものかどうかわからなくなってきたところがこの20年ぐらいの自分の活動のなかにあって。日本人はあまりシンプルなものが好きじゃないというか、込み入ったものじゃないと手を抜いていると思われてしまうというか。大サビがあったり、いろいろな演奏が入っていたり、楽器の数が多かったり。そういうほうが好きな民族なんでしょうね。だからアイドルに曲を書くときはユニヴァーサルであることにこだわらず求められているものを忠実に作っているし、ノーナの曲にしても半分はそう。ただ、自分のソロに関してはグローバルな音楽として完成させたいと思っています。だから今回もブリッジやDメロがある曲は少ないし、全体的に曲も短くて音数も多くない。歌とビートが基本ですね。だからシンプルなことをやるのが僕のグローバル。その攻撃性を楽しめるのがソロだと思うんですよ」

――いまのお話を聞いていると、アルバムの顔になるリード曲としてミニマムなファンクの“BODYMOVES!”が選ばれたのにも合点がいきます。

本作収録曲“BODYMOVES!”のMV
 

「そうですね。“BODYMOVES!”はBメロ終わりからサビ以外のメロディーとコードを弾さんが作ってきてくれて、歌詞とサビ直前からのパートのメロディーを僕がつくりました。弾さんが考える〈新しいポップス像〉にメロディー・メイカーとしての僕の勢いが乗った感じですね。“Heavy Day”や“BLUEJEAN”などは100%僕の世界ですけど、そのへんの曲よりももっと一般的ないまのポップスを僕がやったらどうなるか、そんなイメージかもしれないです。弾さんのプロデュース力に負うところが大きい曲ですけど、それがいまの自分にとって必要なことだと思ったので。自分が好きな服ばかり選んでいるわけではないということですね。〈こういうのもいいんじゃない?〉と言われたことに対して乗っかっていくことも重要だと考えていて。そう、この“BODYMOVES!”や“Funkvision”はトラックをもらってから10分後ぐらいにはもうメロディーをつけて弾さんに返してるんですよ」

――えっ、たった10分ですか?

「送信されてきたトラックに思いついて10分くらいで歌を録音してすぐに返して、弾さんがめちゃくちゃびっくりしていて。そんな時、弾さんが〈郷太君の才能が怖い〉って言ってくれたんですけど(笑)、僕は本当に思いつくのが早いんですよ。特に自分でゼロから作ったものではなく、こうして土台があったほうがメロディー・メイカーとして刺激されるんです。個人的にこの即座に返していく感じがポップなんだと思っていて。悩んでいないんですよ。“BODYMOVES!”なんて本当に一瞬でしたね」

――素早くリアクションしていくことがポップにつながるというのは含蓄のある言葉ですね。前回の『TEMPLE ST.』もそうでしたが今回もまったく悩んでいないと。

「まったくですね。ウチの事務所の社長はこれが普通だと思っているんですよ。みんな僕みたいにどんどん曲を作って連載の原稿山ほど書いてるって。これは普通じゃないということは何度も言ってるんですけどね。社長はちょっと勘違いしてる(笑)」

――フフフフフ。