〈堂本剛〉による〈SHAMANIPPON〉(2009~2011年)
『RAIN』『縁を結いて』『Nijiの詩』
それに続くのは、〈堂本剛〉名義で発表された『RAIN』(2009年)、『縁を結いて』(2011年)、『Nijiの詩』(2011年)という3作のシングル。いずれの作品も、音楽的には美 我 空のサウンドの延長線上にあると言っていいだろう。

『RAIN』のオープニング・ナンバー“Sunday Morning”は、ドラム、ベース、ギター、ピアノを堂本が一人で演奏した(!)楽曲で、この一人多重録音スタイルはプリンス(そして、彼をリスペクトする岡村靖幸)のそれをほうふつとさせる。
美 我 空よりもさらにパーソナルな表現に感じられるが、シンプルなホーンのフレーズに閉塞感はなく、開かれた印象を聴き手に与える。
12分強の大曲“音楽を終わらせよう”と表題曲“RAIN”はライブ録音で、堂本のパフォーマーとしての凄みを生々しく見せつけると共に、やはりどこか喪失感を湛えている楽曲だ。堂本によるソロ・ピアノの後者は、孤独な音楽家の姿を優しく提示している。

続く『縁を結いて』は、〈奈良にある芸能や音楽といった世界に「縁」のある神社〉で収録された。レーベルはここから〈SHAMANIPPON〉になっている。
タイトル・ソングはピアノを中心にしたバラードで、鈴の音色が神秘的な響きをもたらす。テーマは〈美しきくに…日本〉。堂本の作品を貫くパトリオティックな思いや祈りが強く表出している。
また、カップリングの9分のインストゥルメンタル“時空”は、和太鼓をフィーチャー。次のバラード“赤いSinger”と共に、シングルでありながらも濃密で統一感のある世界を形成している。
なお、『縁を結いて』は東日本大震災の直後である2011年4月にリリースされた。奈良の美しい景色を捉えたジャケット写真は、なんでもない風景(堂本の故郷)を切り取ったものだが、リリースの時期を考えるとぐっとくるものがある。“縁を結いて”の歌詞も、当時は切実に響いたはずだ。

そして『Nijiの詩』は、新たなプロジェクト〈SHAMANIPPON〉からリリースされた最初の作品。各エディションの収録曲をまとめた5曲入りの〈Complete Edition〉として配信されている。
1曲目の“Nijiの詩”は、エレクトロニカ風の電子音による導入からピアノ・バラードへ、そしてバンド・サウンドによるロック・バラードへと発展していくドラマティックな構成。コンセプトは〈水と傷〉だという。
“カケタ オイカケタ”は優しいローズ・ピアノと力強いファンク・ホーンが好対照をなしている一曲。
他に、十川ともじのピアノと堂本の歌だけの“寧日”、密室的なドラムの響きや音作りがおもしろい“Technologia - 意思”、堂本のソロ・ピアノによる11分間の“月 - ツク”が収められており、またも濃密なシングルになっている。