現地時間2025年7月4日、いよいよオアシスの再結成ツアー〈Live ’25〉が開幕する。2009年の〈事実上の解散〉から15年、昨年8月に突如発表されたリユニオンとツアー開催のニュースを受けて世界は瞬く間にオアシス一色に染まった。熱狂はここ日本でも巻き起こり、今年10月にはそのクライマックスとなるであろう来日公演が待っている。

そんなオアシスの再結成を祝して、音源だけでなく書籍でも関連作品が続々とリリースされている。本記事では、90年代当時のフォトジェニックな姿を捉えた写真集から、ロックの本質を突く濃密なインタビュー集まで、彼らをあらゆる角度から見つめることができる関連本を紹介していこう。

まずは6月25日に刊行されたばかりの約700ページにわたる大書「スーパーソニック 完全、公式、ノーカット・インタビュー」。ポール・ウェラーなど名だたるアーティストのグラフィックデザインを手がけてきた著者のサイモン・ハルフォンは、2016年に公開された長編ドキュメンタリー映画「オアシス:スーパーソニック」の製作にも参加していた人物だ。

タイトルどおり本書はインタビューがメインとなっており、ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガーを中心に、時に胸に刺さり、時に爆笑必至な発言が大量に並んでいる。なかには日本公演で起こった波乱の一幕を語る部分もあり、一文字も読み落とせない。ノエルとリアムが互いについて、そして家族について語る部分は、やはりグッとくるものがある。

OASIS, サイモン・ハルフォン, 川崎大助 『スーパーソニック 完全、公式、ノーカット・インタビュー』 光文社(2025)

オアシスを〈見て〉楽しみたいという人には、こちらも発売されて間もない写真集「オアシス ザ・マスタープラン」をお薦めしたい。ジョイ・ディヴィジョンやビョークらを手がけたことでも知られ、NMEで長きにわたりチーフフォトグラファーを務めた写真家ケヴィン・カミンズが撮影した、生気と野心に満ちあふれた若きの日のオアシスの姿は必見だ。一部カットにはノエルやケヴィンのコメントが添えられており、写真が撮られた当時の心境や状況を回想していたりする点もファンには嬉しいポイント。ただ眺めるだけでなく、そうした言葉にも高い資料性を感じるアイテムと言えるだろう。

OASIS, ケヴィン・カミンズ, 鈴木あかね 『オアシス ザ・マスタープラン』 ジーン(2025)

そして、以降はこれから刊行されるオアシスの関連本について触れていきたい。まずは小川智宏による「オアシス 不滅のロック物語」が8月に発売される。当然未読ではあるが、〈ロックの衰退が語られる今なお、なぜ彼らの音楽だけは聴き継がれ、再結成が熱狂を呼ぶのか。その軌跡とカリスマ性を紐解き、ロックが持つ根源的な魅力を問う〉という紹介文の一部を読むに、単にバンドのストーリーを追うのではなく、解散から再結成までの間も冷めることのなかった、オアシスが持つ異常な熱量について論じられていくのではないだろうか。再結成ツアーがスタートし、バンドの最新の状況を色々と知ってから読むには最適な書籍かもしれない。

小川智宏 『オアシス 不滅のロック物語』 早川書房(2025)

来日公演が行われる10月には2冊の関連本が刊行される。写真家トム・シーハンの「Oasis, ROLL WITH IT」は、これまでトムが立ち会ってきた9回のレコーディングセッションから未公開カットを多数含む200点以上の写真が掲載されるという。トムによる解説も付くそうで、本書を通じてオアシスの名曲が生まれる瞬間に何が起こっていたのかを確かめることもできそうだ。

OASIS, トム・シーハン 『Oasis, ROLL WITH IT』 日本文芸社(2025)

もう1冊は「Oasis: TRYING TO FIND A WAY OUT OF NOWHERE」。本書は写真家のジル・ファーマノフスキーとノエル・ギャラガーによる共著で制作された500点以上を収録している写真集だ。特筆すべき点は、ほかの写真集と違って再結成後の2025年までの最新カットが盛り込まれているということ。加えて、コントロールフリークな側面もあるノエルが著者としてクレジットされているあたりに、この作品にかける本気度の高さを感じとることができる。

ジルの撮影したオアシスの写真は、2024年に再結成とデビュー30周年を記念して開催された、コラージュアーティスト/グラフィックデザイナー河村康輔との連動企画展「Oasis Origin + Reconstruction」でも複数展示されていた。デビューから解散、そして再結成にいたるまでバンドのすべてが年代順に整理され、ステージ上やバックステージ、スタジオ風景、コンタクトシート、シーケンスされたフィルムストリップなど、あらゆるシチュエーションと表現技法が詰め込まれた本書は、まさに来日前に読んでおくべき一冊と断言してもいいだろう。

OASIS, NOEL GALLAGHER, ジル・ファーマノフスキー , 粉川しの , 堀江和代 『Oasis: TRYING TO FIND A WAY OUT OF NOWHERE』 世界文化社(2025)

そのほか、個人的な思い入れのあるものとして〈rockin’on BOOKS〉シリーズの「rockin’on BOOKS vol.5 OASIS」にも触れておきたい。学生時代、筆者にとって「rockin’on」や「CROSSBEAT」などで読むリアムやノエルのインタビューが何より楽しみだった。こちらの書籍では、過去「rockin’on」に掲載されたインタビューや活動年表、シングルディスコグラフィなどを通じて、解散してしまったオアシスの偉大さを懸命に伝えている。再結成を果たした今、解散後の空気感を改めて感じてみてはどうだろうか。

OASIS 『rockin’on BOOKS vol.5 OASIS』 ロッキング・オン(2010)

16年の歳月を経て、ついにオアシスの止まった時計の針が動き出す。90年代から彼らを追いかけ続ける生粋のファン、解散以降に触れはじめたディープなリスナー、再結成後に彼らと出会った新たなオーディエンス、皆がオアシスを待っている。この機会に、ぜひオアシスのすべてを読み尽くしてみてほしい。