彼女の音楽には、私たちの抱える孤独感にそっと寄り添い、すっと心を浄化してくれるような、魔法にも似た不思議な力がある。ジブリ最新作の主題歌に選ばれた今夏、日本中がそのやさしさに包まれたなら……
夢に見たことさえなかった
プリシラ・アーンがニュー・アルバム『あなたのことが大すき。』をリリースした。本作は、7月19日に公開されたスタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」の主題歌“Fine On The Outside”をはじめ、映画の世界観に寄り添ったナンバーから成る一枚だ。ジブリ史上初めて全編英詞の主題歌が起用されたきっかけは、彼女が昨年12月に三鷹の森ジブリ美術館で行ったクリスマス・コンサート。それを観た中島清文館長が西村義明プロデューサーに推薦し、米林宏昌監督が聴いて即決。プリシラのもとに西村からメールが届いたのは、クリスマス・コンサートの2週間後だったという。
「信じられませんでした。知らないアドレスからメールが届いて、開いたら〈主題歌をお願いしたい〉と書いてあるんですから! ビックリしてはっと息を呑んだその音があまりに大きくて、バスルームにいた夫に〈大丈夫?〉と心配されたくらい(笑)。ジブリ映画の主題歌は長年の夢というか、できるはずがないと思っていたので、夢に見たことさえなかったんです。叫び声を上げながら家中を駆け回りましたね」。
その数日後にLAへ飛んできた西村義明から映画のストーリーを聞き、数枚のイメージ・イラストと米林宏昌監督のメモを受け取って原作を読んだプリシラは、主人公の杏奈に深い共感を抱いたそうだ。
「私も小さい頃はみんなに溶け込めないと強く感じていて、それは自分が汚くて醜いからだと思っていたんです。いつも外で遊んでいたから足が真っ黒で、髪も短くて男の子みたいだったし、韓国人とのハーフだったこともあるでしょうね。だから内面ではずっと孤独でした。家族の問題もありましたし……それを周りに見透かされているような気がして、自信が持てなくて。ほかの子たちはみんな何の問題もなくて、とても幸せで、〈普通〉に見えて、どうして私はそうなれないんだろうって考えていました」。