インタビュー

PRISCILLA AHN 『あなたのことが大すき。』Part.1

彼女の音楽には、私たちの抱える孤独感にそっと寄り添い、すっと心を浄化してくれるような、魔法にも似た不思議な力がある。ジブリ最新作の主題歌に選ばれた今夏、日本中がそのやさしさに包まれたなら……

PRISCILLA AHN 『あなたのことが大すき。』Part.1

夢に見たことさえなかった

 プリシラ・アーンがニュー・アルバム『あなたのことが大すき。』をリリースした。本作は、7月19日に公開されたスタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」の主題歌“Fine On The Outside”をはじめ、映画の世界観に寄り添ったナンバーから成る一枚だ。ジブリ史上初めて全編英詞の主題歌が起用されたきっかけは、彼女が昨年12月に三鷹の森ジブリ美術館で行ったクリスマス・コンサート。それを観た中島清文館長が西村義明プロデューサーに推薦し、米林宏昌監督が聴いて即決。プリシラのもとに西村からメールが届いたのは、クリスマス・コンサートの2週間後だったという。

PRISCILLA AHN あなたのことが大すき。 YAMAHA(2014)

  「信じられませんでした。知らないアドレスからメールが届いて、開いたら〈主題歌をお願いしたい〉と書いてあるんですから! ビックリしてはっと息を呑んだその音があまりに大きくて、バスルームにいた夫に〈大丈夫?〉と心配されたくらい(笑)。ジブリ映画の主題歌は長年の夢というか、できるはずがないと思っていたので、夢に見たことさえなかったんです。叫び声を上げながら家中を駆け回りましたね」。 

 その数日後にLAへ飛んできた西村義明から映画のストーリーを聞き、数枚のイメージ・イラストと米林宏昌監督のメモを受け取って原作を読んだプリシラは、主人公の杏奈に深い共感を抱いたそうだ。

 「私も小さい頃はみんなに溶け込めないと強く感じていて、それは自分が汚くて醜いからだと思っていたんです。いつも外で遊んでいたから足が真っ黒で、髪も短くて男の子みたいだったし、韓国人とのハーフだったこともあるでしょうね。だから内面ではずっと孤独でした。家族の問題もありましたし……それを周りに見透かされているような気がして、自信が持てなくて。ほかの子たちはみんな何の問題もなくて、とても幸せで、〈普通〉に見えて、どうして私はそうなれないんだろうって考えていました」。


優しさと愛と希望に溢れた歌

 原作を読むうち、彼女の頭には9年前に書いた曲のことが甦ってきた。それが、孤独だった中学生の頃を思い出して作った“Fine On The Outside”だ。

 「自分を見つけたくて故郷を出た私自身の旅路を振り返り、21歳の時に書いた歌です。過去に3度ほどライヴで演奏したことがありますけど、歌うたびに中学時代の寂しさや悲しみが甦るんですよね。フィーリング面でも物語的にも完璧だと思いましたし、私にとっても特別な曲なので、ダメモトで送ってみました。そうしたら、西村さんから〈特に“Fine On The Outside”が気に入りました。採用されるかどうかわかりませんが、個人的には大好きだし、日本のティーンエイジャーにぜひ聴いてもらいたいです〉という返信をいただいたんです」。

 映画のために書き下ろした曲でないばかりか、「思い出のマーニー」の物語とも関係ない、完全にパーソナルな歌。この曲が採用されたのは、本人も嬉しかったはずだ。

 「心の本当に奥の奥から生まれたリアルな感情を歌っていますからね。ずっと大切にとっておいた曲なので、最高のかたちでお披露目できて良かったです」。

 当初は「プレッシャーが凄くて〈このオファーが白紙に戻ったらどうしよう……〉とばかり考えていました(笑)」というプリシラも、これでひと安心。米林監督にもらったキーワードを盛り込んだ共作曲とも言える“Deep Inside My Heart”、「子供の頃の親友がマーニーみたいなブロンドヘアで綺麗なドレスを着た子だった」という彼女自身の思い出を踏まえた“Pretty Dress”、杏奈に〈誰かがあなたを見ているよ〉と語りかける“I See You”、物語の舞台である湿地に立った屋敷について歌い、江戸東京博物館での「思い出のマーニー×種田陽平展」のテーマ曲にも選ばれた“This Old House”、監督のメモから得た〈輝き〉のイメージに〈あなたは特別な人〉〈あなたはキラキラと輝いている〉との意味を込めたという“You're A Star”、劇中で印象的に流れるフランシスコ・タレガ“Recuerdos De La Alhambra”に歌詞を乗せた“Waltzing Memories”、サントラを担当した村松崇継とのコラボ“I Am Not Alone”……と、『あなたのことが大すき。』に収録された楽曲は、いずれも心に孤独を抱えた杏奈とマーニーをそっと見守るような優しさが印象に残る、アコースティックなナンバーばかり。透明感と温かみに満ちた、プリシラ・アーン節とでも形容すべき唯一無二の歌声に包まれてほしい。

 「孤独感は誰もが抱くものだと思います。アルバムを聴いてくれる皆さんに、〈見られている〉〈愛されている〉〈ひとりじゃない〉と感じていただきたくて歌いました。それは私が映画から受け取ったメッセージのひとつですから。優しさと愛と希望に溢れた、とても精妙で、とてもリアルな物語です。『思い出のマーニー』を観る時と同じく、オープンな心で聴いてください」。

 

▼関連作品

プリシラ・アーンのニュー・シングル“Fine On The Outside”(YAMAHA)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

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