(左から)石若駿、高井息吹、君島大空

Answer to Remember、millennium parade、CRCK/LCKS、SMTKなど、幅広いプロジェクトに参加するドラマー石若駿によるライフワーク的なポップス・プロジェクトの最新作『Songbook5』。次世代を担う気鋭の音楽家として大きな注目を集め、この一年で〈合奏形態〉での活動も活発になった君島大空の一年半ぶりとなるミニ・アルバム『縫層』。その君島が全幅の信頼を寄せ、長きに渡って活動をともにしているシンガー・ソングライターの高井息吹の新作『kaléidoscope』。これら3作品が、10月から11月にかけて連続でリリースされる。

それぞれがお互いの作品に参加し、さらにはKing Gnuの新井和輝が君島と高井の、中村佳穂BANDなどで活動する西田修大が石若と君島の作品に参加するなど、音楽家が〈個〉に回帰し、様々なボーダーを超えて関わり合うことで豊かな音楽文化を形成しているエキサイティングな現状が、この3作からはっきりと感じられる。

シンパシーを寄せ合う3人に、それぞれの新作と、共有する感覚について語り合ってもらった中から見えてきたのは、ボーダーを超える上で、同じ景色を共有することの重要性。さあ、想像力の話をしよう。


 

乾いた大地に染みこむような歌

――まずは3人の関係性を確認したいと思いますが、一番付き合いが長いのは高井さんと君島くん?

君島大空「そうですね。僕がまだソロ活動をしていなくて、ギターばっかり弾いてた頃に、地元のライブハウスで弾き語りを始めてすぐの息吹のライブを観たんです。10代の終わりごろだったと思うんですけど、〈こんな人いるんや。この人の後ろでギター弾きたい〉と思ったら、息吹も〈弾いてほしい〉と言ってくれて、一緒にスタジオに入って」

高井息吹「弾き語りを始めて5か月くらいで、〈とりあえず自主で音源作って出そう〉というときからずっと一緒にやってます」

石若駿「眠る星座(高井息吹が活動をともにするバンド。メンバーは君島、新井和輝、坂田航)になったのはいつなの?」

高井「最初は“きりん座”っていう曲をバンド・セットでやりたくて、自分が好きな人を集めたら、〈こんないいバンドないでしょ!〉と思って、セカンド(2017年作『世界の秘密』)はほぼバンド・サウンドになったんです」

君島「僕はそれまでバンドらしいバンドに所属したことがなくて、そもそもバンドっていうモノがあんまり好きじゃないっていうのが根底にあるんですけど、〈初めてのバンド〉っていう意味で、大事にしてるのは息吹のバンドですね。あとは、今やってる自分のバンド(君島大空合奏形態)」

高井息吹と眠る星座の2018年のライブ映像

――最初に君島くんが高井さんに対して、〈こんな人いるんだ〉と思ったのは、どんな部分を魅力的に感じたからなのでしょうか?

君島「なんだろう……ライブを観てて、押しつけがましくなく、亀裂が入ってる乾いた大地みたいな、自分の中の乾いた隙間みたいなところに、スッと染みこんでいく感じがしたんです。

僕や息吹が行ってたそのライブハウスって、結構ガチガチだったんですよ。音がドンシャリで、(手を顔の前に当てて)ずっとスネアがここで鳴っています、みたいな感じのライブハウスで、僕はそれに疲れちゃってて。

でも、息吹と会って、こんな人が身近にいたんだって思って。初めてライブを観たときの感覚はすごく覚えてますね。射抜かれたっていうか、自分の魂がちょっと抜けた感じになって……忘れられない瞬間でした」

高井「嬉しいですねえ」

――だからこそ、この人と一緒であればバンドをやってみようと思えたと。

君島「そうですね。ライブハウスがそういう環境だったから、なおさらバンドというモノに反発する気持ちが強くなってたけど、息吹は一人の人が小っちゃい声で囁くような音楽だったから、ずっとこういうのが聴きたかったんだなって、そのときわかったし、こういう感覚を大事にしていこうと思えた。なので、すごく大事な時期に出会った人ですね」

高井「私にとっては〈君島がいてくれてこそ〉くらいの感じです(笑)。

最初に観て、私はこの人の音楽好きだし、おこがましいですけど、この人も私の音楽好きになってくれるだろうなと思ったんです。好きなコード感とかコード進行も、もともと似た部分があるなと思って、だから、音楽的にも委ねられる。そういう安心感は初めて観たときからありました」

 

一人の人間がここまでできるんだ

――石若くんと君島くんの出会いはいつ頃ですか?

石若「3年前に、『Songbook』のジャケットを撮ってくれてる高良真剣がやってる横須賀の飯島商店で、Songbook Trio(石若と角銅真実、西田修大とのトリオ)と誰かで2マンをやろうってなったときに、真剣がキミ(君島)のSoundCloudを教えてくれて。で、そのライブで初めて会って……思い出深いね」

君島「僕はとてもあの日に助けられた感じがします。

その頃は〈一人の音楽なんてできないかも〉となってた時期だったんですけど、真剣さんが誘ってくれて。駿さんのことはSrv.Vinciの1枚目(2015年作『Mad me more softly』)とかで音も知ってたから、〈あの石若駿か〉って思ったんです。で、会ってみたら、めちゃめちゃピアニストだったっていう」

Songbook Trioの2020年のスタジオ・ライブ映像

――最初がドラムじゃなくてピアノだったと。

君島「一人の人間がここまでできるんだっていうのを体現してくれてたというか、自分が弱ってたのもあって、こんなに人は豊かに裾野を広げることができるんだって、すごく感動して。しかも、駿さんは音楽に人間性が一番出てる人だと思うんです」

高井「すごいわかる!」

君島「息吹のライブを観た日も、Songbook Trioのライブを観た日も、僕ずっとニコニコしてました(笑)。〈助かる~〉みたいな。あの日は楽しかったです」

石若「楽しかったよね。SoundCloudでキミの音楽を聴いて、〈ライブはどんなことをやるんだろう?〉って思ってたら、ガット・ギターとサンプラーを持ってきて演奏して、そこにしかない音楽があったんです。キミの音楽の色とか景色の感覚も大好きなので、それを噛みしめた一日でしたね。その日に西田とも仲良くなったんだよね?」

君島「そうそう。で、和輝さんも観に来てて」

高井「おー、なんていい日なんだ」

 

音(楽)の色や景色

――そのメンバーがやがて君島大空合奏形態になっていくわけですもんね。では、石若くんと高井さんの出会いはいつですか?

高井「去年初めてデュオでライブをやらせてもらいました。音源はめちゃめちゃ聴いてて、新井さんにも〈イブちゃん(高井)と駿が一緒にやってるの観てみたい〉と言ってもらってたので、思い切って、〈一緒にやってもらえませんか?〉って、お声掛けして。

さっき駿さんが君島の音楽に対して、〈色とか景色が好き〉って言ってたけど、駿さんはホントに音楽の景色をそのまま受け取ってくれて、見たい景色をドラムで作り出してくれる人で。駿さんと一緒にやってるときの空間は、ホントに別世界みたいなんです」

君島「僕、息吹と色の話をめっちゃするんですよ。で、駿さんとも前に〈キーは何色か?〉って話をして、〈E#とDはちょっと水色っぽい〉みたいな、そういう共感覚的な話に自然となるのが、僕は心地いいなって」

高井「私としては、実はそういうのって一番話したいことなんですよね。それがちゃんと話せるっていうのはホントに嬉しいです」

君島「抽象的なことをちゃんと真面目に話すっていうか。でも、それって、僕はちょっと怖いんですよ。〈笑われたらどうしよう?〉みたいな、すごい考えちゃったりする」

高井「わかる。めちゃめちゃわかる」

君島「そういう話を、プラス・アルファの情報として捉える人もいて、それが悪いってわけではないんです。けど、僕としては〈その景色がないと、この音が成立しない〉みたいなものが最初にあるので、2人はそこを真面目に話せる相手だなって」

高井「駿さんとも、この前レコーディングが終わった後にいっぱい話をして、話したいことをホントに話せて。駿さんとか君島と話したときのふとした一言が、お守りみたいに、何かの答えみたいに、ずっと残ってるんです」

――石若くんもいろんな人とプレイする上で、色や景色の共有を大切にしていると言えますか?

石若「演奏が始まってしまったら、みんなからブワーって出てる音楽に、僕が乗っかってることの方が多いかもしれないです。〈同じ景色を見たい〉とか〈同じところに行きたい〉みたいな欲求が常にありますね」

君島「“遠視のコントラルト”で初めて駿さんに叩いてもらったんですが、〈録音だとめちゃ怖い人だったらどうしよう?〉とか思ってたんです。けど、実際は〈今の大丈夫だった?〉ってすごい訊いてくれて、〈何でこんなかっこいい演奏をするのにそんな不安がるんだろう?〉っていうくらいの感じで。だから、こっちも伝えられるだけのイメージを駿さんに伝えました。

そのときは、たしか〈燃えた車輪が雲の上へと昇って行くようなドラムで〉って言ったと思うんですけど、〈オッケー!〉って、ホントにそれをやってくれて。本物の車輪になるんです。魔法みたいなプレイヤーだなって、ウルウルしながら録音したのを覚えてます」

君島大空の2019年作『午後の反射光』収録曲“遠視のコントラルト”

高井「駿さんはホントいい風を持ってきてくれるっていうか。2人で“万華鏡”っていう曲をセッションしながら録ったんですけど、それこそホントに自分が行きたいところに行けて、駿さんと一緒にやれたから、そこに行けたんだなって思いました」

 

君島大空と新井和輝を共同制作者に迎えた高井息吹『kaléidoscope』

――今の話の流れで、高井息吹さんの新作『kaléidoscope』の話題に行きましょうか。『世界の秘密』からは3年ぶりの新作で、前作にも眠る星座のメンバーとして参加していた君島くんと新井くんが、今作では〈共同制作〉として参加しているわけですが、どのような経緯で制作がスタートしたのでしょうか?

高井「そもそも『世界の秘密』を出してすぐに、次のアルバムの構想がもうあったんですけど、ちゃんとステップアップした状態で出したいっていう心持ちで動いていて。なので、“瞼”“サリュ・ピエロ”“ハローグッバイ”とかは、ずっとバンドでやってた曲なんです」

高井息吹 『kaléidoscope』 APOLLO SOUNDS(2020)

君島「大枠で、〈こういうEPを作りたいね〉っていうのは、ずっとぼんやり3人で話してて……あ、思い出した! 今年のアタマに、和輝さんと夜に電話してて、2人で息吹の次のEPのベストの曲順を出し合ったんです。息吹の意見を聞かずに、〈これめっちゃよくない?〉って、2人ですごく熱くなって……」

高井「(小声で)ありがてえ。今までもずっとチームでやってた感じだったけど、今回〈共同制作〉っていう名目で一緒にやってもらうことで、私も今まで以上に気持ちよく委ねられる部分が多くなって、人の意見を大らかに受け止められるようになりました。

今までは結構、狭い思考になりがちで、〈こうじゃないと嫌なんだ!〉ってなってたんです(笑)。でも今回は委ねるところは委ねて、とにかくいいものを作ろうっていう」

君島「仕事の割り振りがはっきりしてたもんね。大枠のアレンジは和輝さんが考えて、僕がウワモノを足したり、ミックスをしたりして、息吹がそれを聴いて、みんなで意見を言う。今までの関係性プラス、各自自分のやるべきことがはっきりしてたから、すごく作りやすかった」

『kaléidoscope』収録曲“瞼”

 

夢じゃなくて、幻を見て生きなさい

――ドラムは勢喜(遊/King Gnu)くんと石若くんが参加していて、勢喜くんが参加した後半の楽曲がいかにもバンド・アレンジなのに対して、石若くんが参加した“サリュ・ピエロ”をはじめとした前半の曲はミニマルなトラック・ベースの曲ですよね。ミックスではどんな部分を重視しましたか?

君島「ミックスはもともとホント趣味でやっていたから、最初和輝さんに〈ミックスは君島ね〉って言われて、〈え?〉ってなったけど……(笑)、頑張りました!」

高井「私がミックスで特に感動したのが“サリュ・ピエロ”で、ブレイク・ミルズみたいな、トラックと生楽器の気持ちいいところを気持ちよく出してくれてるなって」

君島「ブレイク・ミルズのアルバム(2020年作『Mutable Set』)は全部生楽器なんだけど、それをわざと無機質に録って、面白い感じにしてて。最近好きで聴いてたから、そういう嗜好は勝手に出てるかもしれない。

でもやっぱり、今回のミックスはこの関係性だからこそできたっていうのが大きいですね。じゃないと、自分の作品以外はやらないです」

――音楽の色や景色を共有している人がミックスまで担当するのはすごく重要なことだったと思います。石若くんが参加した“万華鏡”についても、改めて話してもらえますか?

高井「実は、君島の“花曇”を聴いて、その景色にとても感化されてできた曲なんです。

目の前にモワッと霧があって、その向こうにお花がいっぱいあるんだけど、距離が遠くてそれを掴めない。そういう景色がずっと残ってたんですよね。曲自体はピアノを弾きながら歌って、わりとパッとできたんですけど、頭に残ってた景色がアウトプットされてできたのが“万華鏡”だったのかなって。

私にとってはEPの一番最後に来る意味がある曲というか、すくい上げるような位置にいてくれる曲になりました。それを駿さんと2人で演奏することで、自分が行きたかったところに、聴いてくれる人を連れて行きたい世界に行けたので、たぶん、一生聴くと思います」

――EP自体が“-daydream-”と“-in a dream-”という曲を挟んで構成されていて、今言ってくれたような、現実なのか、夢なのか、幻なのか、みたいな感覚は、作品全体からも感じられるものだなって。

高井「『世界の秘密』を出した後の自分の中のテーマが〈幻〉だったんです。大学を卒業するときに、お世話になった先生から〈夢じゃなくて幻を見て生きなさい〉って言われたのがすごく残ってたんですけど、同時期に君島から〈絶対的なものは幻だと思う〉って言われて、この2~3年くらい、〈幻〉が私の中の軸になっていて。

なので、そのことについての作品をずっと出したいと思っていて……そういう曲に込めた哲学とか思想みたいなものも、共有しながら作れたので、たった一文の詞でも、その奥に広がってるものまですくってくれたんだろうなって」

君島「どうかねえ?(ニヤリ)」

高井「そう思ってる気持ちも、幻かもしれない……どうかねえ?(ニヤリ)」

 

バンド〈合奏形態〉での活動を経て生まれた君島大空『縫層』

――では続いて、君島くんの新作『縫層』について。前作『午後の反射光』リリース時(2019年)のインタビューでは、〈個人的な作品〉という話をしていたと思うんですけど、今作を作るにあたって、作り手としての意識の変化はありましたか?

君島「かなりありました。そもそも『午後の反射光』を出して、今ほど僕の音楽を聴いてくれる人が増えるとは全く考えてなくて。いつも自分の気持ちを整理して、〈そこで終わらす〉みたいな感覚で、でもその中に永遠みたいなものがあって、何度でもそこに行ける、そういう箱を作るような感覚で曲を作ったり、音源を作ったりしてるんですけど、『午後の反射光』に関しては、正直〈遺書みたいなものを作ろう〉っていうのが、自分の中のテーマだったんです。なので、〈アルバムいつ出すんですか?〉とか言われるのがプレッシャーだったんですけど。

でも『午後の反射光』のレコ発からバンドを始めたら楽しくなって、〈バンドの演奏をもうちょっとよくしていこう〉みたいな風に自分の気持ちを作って行って。『午後の反射光』の続きとして作りたい景色も見えてはいるんだけど、でも今のままではできないから、その前にまた整理が必要だなって」

君島大空 『縫層』 APOLLO SOUNDS(2020)

――それで作ったのが今回の『縫層』だと。

君島「〈縫層〉っていうのは去年の〈フジロック〉くらいからずっと頭にこびりついてる言葉で、僕の造語なんです。大きな厚い層、わずらわしい層、街の喧騒だったり、人の言った心無い言葉が、自分の中に作っちゃう嫌な塊だったり……でもそれって結局自分が生んでるものだったりもして。そうやって暗雲がたち込めてる層の先に、たぶん蒼天みたいな空がある。その場所を早く表現したいんですけど、まずはその手前にある〈ここ〉を出さなきゃいけないみたいな……だから、結構攻撃的な気持ちで作りました。

〈そこ〉はずっと雨が止まない場所で、悲しいような、虚しいようなところなんです。SNSとかもそうですけど、人の顔が見えない中、言葉みたいなものが文字で書かれて、それが飛び交って、人の心に少しずつたまって、価値観に影響を及ぼす。こんな悲しいことないだろう、ということへの反発みたいな気持ちで作った曲たちかもしれない。

だから、今回も個人的といえば個人的なものかなと思います。自分一人の中で思い悩んでしまった人の曲というか」

――ただ違うのは、バンド・メンバーだったり、関わる人が増えたことだと思うんですね。

君島「そうですね。西田ともめちゃめちゃ仲いいんで、彼が携わっている佳穂さんのバンドの制作の仕方とかもいろいろ聞いて、自分は宅録で1枚目を作ったけど、そのやり方だけだと今やりたいことはできないなと思ったり。

あと7月に出した“火傷に雨”は、東池袋のKAKULULUの地下で音を出せるから、そこで駿さんと一緒にいろいろ試しながらドラムを録音して、それにサンプルを足したりして作ったんです。それまで〈圧倒的な純度が欲しい〉という偏った気持ちが強すぎたので、自分の作品にいろんな人を呼ぶのはちょっと抵抗があったけど、そこを開いたとしても、それは壊れないなと思って。そう気づいてからは、わりかしガーッと作りました」

『縫層』収録曲“火傷に雨”

 

スーパー・エディット・ジェント“笑止”

君島「“笑止”は西田が一緒に編曲してくれています」

『縫層』収録曲“笑止”

――初めて合奏形態の3人が全員参加してるんですよね?

君島「そうです。僕メタラーなのを黒歴史だと思ってたんですけど、逆に今、周りでメタルをやってる人がいないなと思って。メタルというか、ジェント※をやりたかったんです。

実は、西田は“笑止”でギターを弾いてなくて、サウンド・デザインをしてくれてるんです。音色やドラムは自分で打ち込んだのと、KAKULULUで駿さんに叩いてもらったものをエディットしたりして。和輝さんにはめちゃくちゃなベース・ソロをお願いしました。だから、遠隔で作業した初めての作品でもありますね」

※編集部注 ヘヴィメタルのサブ・ジャンルで、メシュガーから影響を受けた複雑なリズムのプログレッシヴ・メタル

――合奏メンバーが参加しているとはいえ……。

君島「一発録音とかではまったくない。スーパー・エディット・ジェント、みたいな感じ(笑)。

次はもっとライブっぽいのも作ってみたいんですけど、“散瞳”みたいな方向性でも何かもっとできないかなっていうのもあって。急にディケイ(音の減衰)がなくなるとか、現実的にない音を作るのが好きなので、そういうのを……ジェントでできないかなって(笑)。

タイトルは〈笑止千万〉からで、わりと皮肉った内容ではあるんですけど、笑っちゃうようなものを作りたかったんですよね」

高井「かっこよすぎて笑っちゃった」

石若「KAKULULUの地下でドラムを録ったのはすごくいい時間でした。KAKULULUの合鍵をゲットして、ドラムを運んで、いろんなマイクのセッティングを試しながらやったんです。

自粛期間明けの6月頃、仕事とかライブがなくなっちゃった時期だったので、逆にみんなゆったりした気持ちで、連絡も密に取り合って。そういう時間が大事だったなって思います」

君島大空合奏形態の2020年のライブ映像

君島「僕は怖かったんですよね。〈次はバンドで出さなきゃいけないのかな?〉って、強迫観念もあったし。自分もそれ(バンドで録音した作品)を聴きたいけど、一人でこっそりやるのも好きで、そのバランスをずっと探ってて……でも、ただ考えてても作品はできないわけで、とにかく手を動かさなきゃっていう中で、コロナの期間になって、整理できた部分はすごくありました。

だから、いろんな時期に録ったものが乱雑に入ってるんですけど、今の自分はこうなんだなっていうのが、わりと素直に見える作品かなって」

――それを一回出すことで、この先の景色が見えてくるんじゃないかと。

君島「だから、最後の“花曇”は、やっと霧が晴れて行くようなイメージなんですよね」

 

Songbook Trioの演奏を捉えた石若駿『Songbook5』

――では最後に、石若くんの『Songbook5』の話をしましょう。

君島「これがジャケ?」

石若「うん、3人になったの。真剣と一緒に横須賀の海に行って、波がすごい荒くて、怖かったんだけど、岸壁に椅子を置いて撮って」

石若駿 『Songbook5』 APOLLO SOUNDS(2020)

――ジャケに映っている角銅さんと西田くんとはSongbook Trioとして活動していて、これまでの作品でも主要メンバーだったわけですが、全曲に関わるのは今回が初めてですね。

石若「今回は全曲角銅さんが歌うっていうのを最初から決めてました。トリオでのライブが増えて、それを形にしたいっていうのがあって。

ジャケットに関しても、真剣に相談したら、〈トリオの印象が強いから、3人で撮ろうよ〉って言ってくれたのが後押しになって。〈家族写真みたいなの撮ろうよ〉っていうアイデアがこうなりました(笑)」

石若駿『Songbook5』トレイラー

――〈Songbook〉のシリーズにはプレイヤーとしての魅力はもちろん、コンポーザーとしての石若くんの魅力が強く出ているわけですが、君島くんと高井さんは石若くんのコンポーザーとしての魅力をどんな部分に感じていますか?

君島「僕は駿さんの和声感がめちゃめちゃ好きなんです。〈こういうの好きなんだよね〉ってポロッと弾くコードのヴォイシング(和音の音の並び)がめちゃめちゃヤバくて、前に(東京・新宿)ピットインで一緒にやったときも、ずっと駿さんの指を見ちゃいました。“春霞”を一緒に演奏させてもらったときも、最初に譜面とピアノのデモが送られてきて、とりあえずギターで弾いてみようと思ったら、3小節目くらいで〈なに?〉って(笑)。わりかし耳コピとか得意な方だと思ってたんですけど。

すごく自分の気持ちに入ってくるのに、発生源がわからない曲なんです。駿さんの曲を聴くと、それこそ霧みたいに、めちゃめちゃ気持ちいいけど掴めない、みたいな気持ちにいつもなりますね」

石若「曲を作るときは大枠とかを全然決めずに始めて、コードを弾いて、トップ・ノート(最高音)とメロディーを合わせて、〈じゃあ、次はどこ行こう?〉みたいな感じで作って行って。で、〈ここまで来たから、繰り返したら面白いかも〉って思ったら、それを繰り返すためにコードを何個か足して、っていう。自分はそういう作り方が好きなんです。いろんな選択肢がある中で、〈うーん……こっち!〉みたいに紡いでいくやり方っていうか」

高井「駿さんの曲からは毎回新しい感覚を感じるんですけど、讃美歌とか、バッハの曲とか、そういうのを聴いてる感覚に近いときもあって、個人的に、そういうのは昔から聴いてた音楽だから、懐かしさもあるし、安心します」

君島「確かに、それはあるかも。チャーチっぽいものを聴いてる気持ちになるときがあって、“Asa”を初めて聴いたときもそうなりました」

石若駿の2016年作『Songbook』収録曲“Asa”

――この話は、おそらく新作に1~4の連作で収録されている“Messe Basse”の話に通じると思いますが、これはガブリエル・フォーレの同名曲がインスピレーション源になってるわけですか?

石若「なってます。フォーレの“小ミサ曲(Messe Basse)”と、ヴァイオリンとチェロとピアノのトリオの曲と、ヴァイオリンじゃなくてクラリネットで吹いてる録音があって、そのふたつを毎日聴いてた時期がありました。それでフォーレの作曲の仕方に興味が湧いて、譜面を買って、自分でもこのやり方で曲を作ってみようと思い、それでできた4曲です。

タイトルは迷ったんですけど、あえてまるっきり同じ“小ミサ曲(Messe Basse)”にして、だから、チャーチとか讃美歌って2人が感じたのは間違ってないですね」

――『Songbook5』にはもちろん角銅さんと西田くん以外にもプレイヤーが参加しているし、今日話をする中でもたくさんの名前が挙がりました。今はやはり〈個〉の時代で、それぞれが近づいたり離れたりを繰り返しながら、豊かな音楽文化を今まさに形成している。今日の話からは、そんな印象も受けました。

君島「この3枚は並べて聴いたら全然違うんだろうけど、でもそれぞれよくて……なんか、幸せですね。全然違うけど、全部いいって思える、それって幸せだなって」

高井「私もホントに嬉しいです。自分の作品にもがっちり関わってくれたお二方と同じ時期にこうやって作品が出せるのは、自分にとってすごく大事な出来事ですね」

 


INFORMATION
〈未来ノ和モノ〉第19弾キャンペーン 石若駿 × 高井息吹 × 君島大空

①〈未来ノ和モノ〉第19弾コラボポスター掲出
掲出店舗:タワーレコード/TOWERmini全店(全国75店舗店舗)
※TOWERminiもりのみやキューズモール店を除く
掲出期間:2020年11月3日(火)~11月23日(月)

②〈未来ノ和モノ〉フリーペーパー 石若駿 × 高井息吹 × 君島大空 特集を配布
掲出店舗:タワーレコード/TOWERmini全店(全国75店舗店舗)
※TOWERminiもりのみやキューズモール店を除く
配布開始日:11月3日(火)
※先着で配布。なくなり次第終了

③抽選で石若駿 × 高井息吹 × 君島大空 直筆サイン入り〈未来ノ和モノ〉コラボポスターをプレゼント
石若駿『Songbook5』、高井息吹『kaléidoscope』、君島大空『縫層』をタワーレコードおよびTOWERmini全店、タワーレコード オンラインにてご購入いただいた方に、石若駿 × 高井息吹 × 君島大空の直筆サイン入り〈未来ノ和モノ〉コラボポスターが抽選で当たる、応募抽選付ポストカードを先着で差し上げます。
応募締め切り:2020年12月27日(日)
※PC・スマートフォンからのご応募が必須です
※ご応募にはタワーレコードメンバーズへの登録およびレシート番号の入力が必要です

④関連商品旧譜キャンペーン実施関連商品旧譜キャンペーン実施
タワーレコードおよびTOWERmini全店、タワーレコード全店、タワーレコード オンラインにて以下の対象の旧譜13タイトルをご購入いただいた方に、〈未来ノ和モノ〉特製ブロマイド(ランダム3種種)を先着で差し上げます。
対象旧譜:
①石若駿『SONGBOOK』(YS0001)
②石若駿『SONGBOOKII』(YS0002)
③石若駿『SONGBOOKIII』(YS0003)
④石若駿『SONGBOOKIV』(YS0004)
⑤Shun Ishiwaka CLNUP4『CLNUP4』(YSS0001)
⑥SMTK『SMTK(タワーレコード限定)』(APLS2004)
⑦SMTK『SUPER MAGIC TOKYO KARMA』(APLS2005)
⑧君島大空『午後の反射光』(APLS1903)
⑨小田朋美『グッバイブルー』(APLS1705)
⑩角銅真実『Ya Chaika』(APLS1809)
⑪けもの『美しい傷』(APLS1907)
⑫CRCK/LCKS『Temporary』(APLS1912)
⑬CRCK/LCKS『Temporary vol.2』(APLS1913)
実施期間:2020年11月3日(火)~12月27日(日)
掲出店舗:タワーレコード/TOWERmini全店(全国75店舗店舗)
※TOWERminiもりのみやキューズモール店を除く

⑤店舗での購入者を対象に、石若駿 × 高井息吹 × 君島大空の直筆メッセージ入りサービスレシートをプレゼント
石若駿『Songbook5』、高井息吹『kaléidoscope』、君島大空『縫層』をタワーレコードおよびをタワーレコードおよびTOWERmini全店にてご購入いただいた方に、石若駿 × 高井息吹 × 君島大空それぞれの直筆メッセージ入りサービスレシートをお渡しいたします。
実施期間:10月20日(火)~11月23日(月)
掲出店舗:タワーレコード/TOWERmini全店(全国75店舗店舗)
※TOWERminiもりのみやキューズモール店を除く