オーストラリア、メルボルン出身のトロンボーン奏者で作曲家のジェームズ・マコーレイ。彼が率いる10人組のジャズポップバンドJames Macaulay and The Ancient Highballsが、1stアルバム『Happy Sad』をリリースした。石若駿(ドラムス)、井上銘(ギター)、栗林すみれ(ピアノ/バッキングボーカル)、Taikimen(パーカッション)、中島朱葉(アルトサックス)、西口明宏(テナーサックス/ソプラノサックス)ら手練れたちが奏でるのは、ジャズやクラシックをベースにした、時に前衛的とも言える複雑に絡まり合ったバンドアンサンブル。そこにたおやかなメロディと豊かなハーモニー、ユーモラスな歌詞が重なりあった、実に独創的なアルバムだ。
それに続いて、同じオーストラリア出身の盟友ベーシスト/作曲家で、The Ancient Highballsメンバーでもあるマーティ・ホロベックも、石若、渡辺翔太(ピアノ)との新作『Trio IV: The Mountains, They Listen』を完成させた。マーティのライフワークと言ってもいい『Trio』シリーズの5作目(『Trio II』には続編『Trio II: 2』がある)では、コントラバスでもエレクトリックベースでもないアコースティックベースギターという楽器を用いて、新たな音楽世界を展開している。
そこで、今回はジェームズ&マーティ、さらにジェームズのバンドメンバーでもある音楽家ermhoiを交えた鼎談を実施。ジェームズはどんな音楽家なのか? マーティの新作の背景にあるものとは? 個性的な音楽家3人に話を聞いた。

ジェームズ・マコーレイの音楽観
――ジェームズさんは初インタビューですので、基本的なところからお伺いします。どういう経緯でトロンボーン奏者になったのでしょうか?
ジェームズ・マコーレイ「短く話せるかな……」
マーティ・ホロベック「長くてもいいよ」
ermhoi「聞いてる聞いてる」
ジェームズ「じゃあ、適当に。親戚のおじさんがトロンボーンを選んでくれたんです。たくさんトランペット奏者がいるのでトロンボーンのほうが楽になるはずって。正しかったと思う。12歳でした。その前は5歳からピアノを弾いていました。16歳の時にバンドに入って、毎週いろんなバーやパブで演奏しはじめて、いろいろな音楽を勉強しました。学校ではクラシックやジャズの練習をしていました。僕はミュージシャンとしてジャズのバックラウンドから来ているかもしれないけど、ジャズから逃げようとしています」
――どうしてジャズから逃げようとするんですか?
ジェームズ「いまのシーンや時代はかなり広くなっていますので、芸術的にもっと人々とコミュニケーションができるといいなと思っています。いろんな表現をしたいです」
――ジェームズさんは奏法が独特だと思いますが、好きだった方、インスパイアされた人はいますか?
ジェームズ「1920年代のJ. C. ヒギンボサム。ルイ・アームストロングと似ていると思います。ベン・ガレスピー。彼はメルボルンの人です。レイ・アンダーソン。彼はシカゴ出身の人かな。
たくさんいましたが、でもトロンボーン奏者より作曲家とかロックバンドとか伝統的なミュージシャンのほうが影響を受けていると思います。別の楽器……トランペット奏者とかピアノ奏者、歌手とか」
――アルバムを聴いていて実際に感じられますが、ジェームズさんはフランク・ザッパから影響を受けているんですよね。
ジェームズ「フランク・ザッパはもちろん、トロンボニストより僕にとって大事な影響源。彼のバンドのトロンボニスト、ブルース・ファウラーもすごく好きです。影響を受けています」
マーティ「ブルース・ファウラー、最高!」
ジェームズ「彼は信じられないほどうまいです」
――フランク・ザッパ以外では?
ジェームズ「武満徹。最近、ディアフーフを聴いてる。あとジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンかな」
――ロックが多いですね。
ジェームズ「エリオット・カーター、メシアン……。何を言うべきかわからないので、選べないです」
――ジャンルは関係ない?
ジェームズ「あんまり関係ないです。ジャンルの真ん中でやっている音楽はぜんぜん興味ないです」