日本を代表するドラマー、と言ってもまったく過言ではない石若駿。2025年は彼を中心にしたライブイベント〈JAZZ NOT ONLY JAZZ〉が映画化され、続編も開催されるなど大きな話題になった。

そんな石若のニューアルバム『TEINE』が、〈日本ジャズの新たなプラットフォーム〉を掲げるレーベルDays of Delightからリリ-スされる。本作はギタリストの市野元彦と、日本生まれで米NYにて活動するベーシストのカノア・メンデンホールとともに吹き込んだトリオ作品。ドラムスとパーカッション、ギター、そしてベースが奏でる音楽世界には、石若の原風景も投影されている。豊穣かつ親密でスポンテイニアス、また映像喚起的でもあるこのアルバムはどのようにして生まれたのか? 石若にメールインタビューで答えてもらった。

石若駿, 市野元彦, KANOA MENDENHALL 『TEINE』 Days of Delight(2025)

 

カノア・メンデンホールの豊かなアイデアと美しい音、市野元彦の風景を描く演奏

――カノア・メンデンホールさんは、石若さんも参加しているTaka Nawashiroさんの『Lifescape』(2024年)で演奏しています。初共演は2022年8月のデイヴィッド・ブライアント・トリオでの演奏でしょうか? 出会いや共演歴を教えてください。

「彼女のことを認識したのは、たまたまYouTubeやInstagramでクリスチャン・マクブライドのビッグバンドで弾いているのを見て、〈どんなベーシストだろう?〉とディグった記憶があります。とてもストロングでかっこいいベーシストだなと思い、日本にルーツがあることもわかり、いつか共演したいなとずっと思っていました。

タカとのアルバムは、遠隔でのレコーディングでした。まず、ジョン(・カワード)とカノアさんとタカがNYでレコーディングしたのに対して、東京で僕が後からオーバーダブする形での共演でした。クリックのない演奏でしたが、まるで一緒に演奏しているような感覚で楽しくレコーディングできたと思います。

2022年にデイヴィッドから〈カノアと札幌で演奏しない?〉と連絡が来て、たまたまermhoiのバンドで〈SAPPORO CITY JAZZ〉というフェスに参加していたので、すごくタイミングがよく、このチャンスを逃すまいとして実現に至りました。

共演した際には、曲に対して湧き出るアイデアの豊富さと音色の美しさに感動しました。また、非常にチャレンジングで難解なリズム感覚も共有できてレベルの高い演奏でした。カノアさんはとてもスウィートな人柄で、その時間を共有するのもとても居心地がよかったです」

――ドラムとベースのコンビネーションは重要かと思いますが、カノアさんとのタッグはいかがですか?

「『TEINE』のレコーディングで感じたのは、曲の理解度がとても高いと思ったことです。曲の持つバックグラウンドを共有する感覚がとてもスピーディでした。好きな音楽が共通しているとすぐに理解できるので、とてもスムーズにレコーディングが行われたと思います」

――市野元彦さんは石若さんにとってどんなギタリストでしょうか?

「市野さんとは、僕が高校生の頃、オマさん(鈴木勲さん)のバンドでのギグで初共演でした。市野さんのギターの演奏は、自然の風景や情景を想起させる音色を持っていると思います。オマさんのバンドの時もそうでしたが、メロディをうたうフレージングやボイシングのアプローチが、その場の音楽に新鮮な風を吹かせるような強い影響を齎すといつも感じます。僕の『Songbook6』というアルバムにも参加してくださっています」