「ファイナルファンタジーIX」の音楽が日本の新世代ジャズに変身!!
名だたるゲーム音楽と今様ジャズの幸福な出合いの結果、独創的で唯一無二のアルバムが誕生した。『Midnight Jazz: FINAL FANTASY IX』は、「ファイナルファンタジーIX」の音楽を主にジャズ・アレンジで再創造したユニーク極まりない作品だ。音楽監督を務めたのは、映画やドラマなど劇伴でその手腕を振るうyuma yamaguchi。彼を含む複数のアレンジャーがビッグバンド、スモール・コンボ、無伴奏ソロといった編成で大胆な編曲を施し、ヴォーカリストがゲーム音楽のメロディーをなぞっている。また、4曲で石若駿がドラムを叩いているほか、アレンジャー/プレイヤー/ヴォーカリストとして、若井優也、馬場智章、君島大空、BIGYUKI、Seppl Kretz、片山士駿、吉田篤貴、北村蕗、藤井心、グレッチェン・パーラト、十明、高井息吹、Julia Shortreedらが参加。つまり、ゲームをプレイしたことがなくても、現行のジャズやインディーに興味があるなら迷わず聴くべきアルバムだ。むろん、本作を聴いてゲームに興味が湧くというリスナーも多いだろう。本作の成り立ちについて、アルバム全体を俯瞰できるyumaに話を訊いた。
いまのジャズ好きが楽しめるもの
――このアルバムの制作はどこから持ち上がった話なんですか?
「『ファイナルファンタジーIX』が2025年に発売25周年だったということもあって、ゲームで使われた曲をいろいろな人にジャズ・アレンジしてもらったらおもしろいんじゃないか、という話をスクウェア・エニックスの担当者さんからいただいて。〈ファイナルファンタジー〉の音楽をいろいろなジャンルでアレンジしたアルバムってたくさん出てるんですけど、任せてもらえたら自分なりのおもしろいものができるかもねという話になり、制作が決まりました」
――ゲーム内の音楽は大半がインストゥルメンタルでしたが、この作品ではほとんどの曲にヴォーカルが入っていますね。
「僕はもともとゲームの音楽も好きだったので、ファンとしては原曲をリスペクトしつつも、今回は大きくアレンジしたものに挑戦してみたかったんです。だったら歌を入れたほうが間口を広げられるんじゃないかなと。歌詞は特定の言語でやるといろいろな意味が生じてしまうから、基本的に造語でいくことにしました。ただ、グレッチェン・パーラトさんには“Melodies Of Life”を原曲のまま英語で歌ってもらって、それもまた素晴らしかった。あと、一枚の中にヴァリエーションを持たせたかったんですけど、それでは散漫になる恐れもあって。でも、歌が入っていれば一本筋の通ったものになるだろうと思ったんです」


――アレンジャーやプレイヤーのクレジットを見て反応する人も多いアルバムでしょうね。石若駿さんが4曲で叩いていたりするだけでも、おっ!と思うリスナーはいるはず。いまの日本を代表する若いジャズ・ミュージシャンが多く参加しています。
「石若さんが叩いた曲は、どれも彼じゃないと成り立たなかったものだと思います。例えば、1曲目の“破滅への使者”は石若さんと縁の深いマーティ・ホロベックさんもベースを弾いていますし、インパクトがありますよね」
――確かに、“破滅への使者”は石若さんとマーティさんならではのダイナミズムとパンチ力があるし、Seppl Kretzさんがアレンジした2曲目の“眠らない街 トレノ”はミシェル・ルグランを連想させるナンバーです。この2曲でリスナーを鷲掴みにしますよね。
「そうですね、一方で若井優也さんやBIGYUKIさんのような鍵盤奏者が参加しているのも大きいです。BIGYUKIさんとバークリー音楽大学のクラスメイトでもあったSTUDIO Dedeのエンジニアである吉川(昭仁)さんに協力してもらい、どうせジャズ・アレンジでやるなら、いまの日本でジャズを好きな人が聴いても納得できるものを作ろうという意識で最初から取り組んでいました」
――余談ですが、僕は菅野よう子さんが手掛けたアニメ「カウボーイビバップ」のサウンドトラックが好きなんです。最初はアニメがどんな作品かもまったく知らなくて聴いていたんですけど、だんだんアニメにも興味が湧いてきた。この作品もそういうルートがありそうですよね。
「そうですね。このアルバムを作るときも、せっかく僕に声を掛けてくれたのだから、なるべくゲーム音楽にない要素も加えたいなと考えていました。かなりフラットに作品へと向き合いましたし、それがいい方に転んだように感じています。僕はもともとゲームも好きで〈ファイナルファンタジー〉はIVから始めたんですけど、もしこれがIXじゃなく、シリーズのなかで最初にプレイしたIVだったらここまでフラットにできなかったと思うんです。思い入れが強すぎて、全部の曲を僕がアレンジします!となっていたかもしれないから(笑)」
