CRCK/LCKSは、2015年に〈一夜限りのバンド〉として始動した。ボーカル/キーボードの小田朋美、ギターの井上銘、サックスの小西遼、ベースの越智俊介、ドラムの石若駿――それぞれがソロやサポート、プロデュースなど異なる現場で活躍を重ねながら、CRCK/LCKSという一点で交わる。
そんな彼らの5年ぶりとなるフルアルバム『まにまに』は、リモート制作、個々の活動の拡張、そして〈脱退騒動〉を経た5人が、改めて〈バンドとは何か〉を見つめ直した1枚。
結成10年を迎えたいま、5人はどんな〈現在地〉に立っているのか。小田朋美、井上銘、小西遼の3人に話を聞いた。
結成10年、2ndアルバム完成までに変わったこと
――CRCK/LCKSのみなさんは、それぞれのフィールドで大活躍されてますけど、グループとしてのインタビューは5年ぶりみたいです。
小田朋美「続けて出した『Temporary』と『Temporary vol.2』(2019年)の時以来かな?」
小西遼「活動してるようでずっと水面下みたいな感じではあるからね。ライブも多くないし、モグラみたい」
――『Temporary』の頃はバンドとして「過渡期」と話されていました。『まにまに』はどういう形で1枚のアルバムになったのでしょうか。
小西「フルアルバムは久しぶり……というか、2枚目。結成10年なのに」
小田「EPが多かったからね」
井上銘「大きく変わったのは制作体制です。『Temporary』の頃から制作体制がガラッと変わりました」
小西「『Double Rift』(2018年)の時に俺がDAWを導入して、みんな同じ時期にソフトを導入していた。俺が機材オタクと化して急速にのめり込んでいったので、コロナ禍以降は意図せずリモート制作が盛んになったのも大きかったかも」
井上「みんなそれぞれ他の活動も忙しくなってきて集まりづらくなってきたタイミングでもあったから、リモートでの制作が本格化したよね」

熱血漢・小田朋美の〈暴走〉と新境地
――小田さんはXで『まにまに』の制作は「(自分が)暴走気味だった」と呟かれてました。クールなイメージがあるので、どんな風に暴走していたのか気になります。
小田「今回は〈ボーカルとして自分が責任を持たなきゃいけない〉という気持ちがかなり高まって、意識的に音頭を取ってました」
小西「暴走っていうか、必死になってくれてた」
井上「ひとり合宿みたいなこともしてたよね。他のメンバーが数カ月に1〜2曲作ろうとしている中で、1人で10曲ぐらいドーンって出してくる、みたいな」
小田「〈熱量高すぎで引かれてもいいや〉って思ってたから(笑)。遠隔で制作している分、みんなの反応が遅いとモヤモヤして〈返事いただいてもいいですか〉みたいにグループチャットにリマインドを送ってました。普通に考えれば、みんなそれぞれの活動も生活もあるから即レスできるわけないんだよね。
私はクールに見られがちなのですが、実は高校時代に〈松岡修造かよ!〉って言われていたような熱血漢タイプで、今回も熱くなりすぎて空回りしそうな時もあって。でも、小西がリーダーとしてどんと構えてくれていたことに救われました」
――「ボーカルとして責任を持つ」という言葉が印象的です。何か心境の変化が?
小田「CRCK/LCKSを始めたときは〈全員がプレイヤーとして注目されるバンド〉になりたかったので〈ボーカルが前に出るバンドにはしたくない〉って思ってたんですね。
でも10年経って、それは十二分に成立しているから、今度は逆に〈ボーカルとしての自分をやらなきゃ〉と思ったんです。これまではどこかで〈クラクラにとってどういう自分でいるのが正解か〉考えてしまっているところがあったのですが、もうそういうのはやめようと思って、自分がクラクラでどういたいかを考えました。
その気持ちを詩人/俳人の佐藤文香さんに汲んでもらって、歌詞にしていった。彼女とはDiscordで密に相談してましたね。文香さんは、メンバーより全然レスポンスが早くて(笑)。一緒に併走してくれている感じでありがたかったです」