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コラム

玉置浩二『Chocolate cosmos』オリジナル・アルバムを作るつもりで取り組んだ、入魂のセルフ・カヴァー集

ヴォーカリスト玉置浩二が贈る6年ぶりの新作――セルフ・カヴァーで聴かせるヴォーカルの魅力

 よく日本でいちばん歌の上手いのは誰か、という話が出ることがある。ここでの〈上手い〉というのは、テレビのカラオケ番組に出演しているような技術的に上手な歌い手ではなく、表現力や言葉の響かせ方、声の質まで含めた総合的な意味での上手さのことだ。そういった日本一として筆頭に挙げたいのが玉置浩二だ。80年代初頭に安全地帯のヴォーカリストとしてデビューした当初は繊細な印象が強かったが、ソロ活動を通じていつしかスケールの大きなシンガーへと変貌していった。その圧倒的な存在感は誰もが認めるところだろう。

 しかしその一方で、玉置浩二が類稀なソングライターであることに対しては、あまりスポットが当たることはない。実はこれまでにジャンルを問わず多数の歌い手に楽曲を提供してきているのである。有名なところだと、中森明菜“サザン・ウィンド”、斉藤由貴“悲しみよこんにちは”、香西かおり“無言坂”などが挙げられる。メロディーのみを書くこともあれば、詞曲の両方を提供することもある。いずれにせよ彼が書く楽曲にはどこか悲しみや懐かしさや切なさみたいなものがたっぷりと詰まっていて、聴く者の心を揺さぶるような情感の豊かさが特徴だ。2012年にはこういった提供曲のセルフ・カヴァーのみを収めたアルバム『Offer Music Box』を発表している。

玉置浩二 『Chocolate cosmos』 Columbia(2020)

 玉置浩二のソロ作品としても6年ぶりとなるニュー・アルバム『Chocolate cosmos』も、これまで彼が手掛けてきた提供曲を自ら歌ったセルフ・カヴァー作品だ。ただ、玉置自身はあくまでもオリジナル・アルバムを作るというスタンスで取り組んだという。『Offer Music Box』は楽曲主導のような印象もあったが、今作は完全に彼の歌の世界へと昇華されている。とはいえ玉置浩二のソングライティングの魅力がふんだんに詰まった作品であることは間違いない。全体的にミディアム・テンポからスローなバラード曲が選ばれており、冒頭のRyuに提供した“Winter Leaf~君はもういない”に始まり、KinKi Kidsの隠れた名曲として評価の高い“むくのはね”、中島美嘉に書いた“花束”など、比較的落ち着いた楽曲が多いのも特徴だ。そしてやはり、大人の雰囲気を醸し出すナンバーが目立つ。鈴木雅之“泣きたいよ”、研ナオコ“ホームレス”、髙橋真梨子“忘れない”など、玉置自身より年上の歌手への提供曲が多いのも、彼の楽曲の安定感を物語っているといえるだろう。

 また、彼にしか作り得ない個性的な楽曲もある。例えば、竹中直人に提供した“ママとカントリービール”は、その筆頭といえるだろう。原曲ではどことなくほのぼのとしたイメージがあったのだが、玉置が歌うことによって神懸っているといってもいいほど壮絶な熱唱を披露し、楽曲に新たな生命を吹き込んでいる。一方で、高橋みなみの王道アイドル・ポップというべきオールディーズ風の“ティンクル”は、切なく大人っぽいポップ・チューンへと生まれ変わっている。さらには、平原綾香に書き下ろした“マスカット”のように、フルーツをモチーフに使いながらスケール感のあるラブソングに仕上げた作詞能力の高さにも唸らされる。このように様々な角度から玉置浩二のソングライターとしての一面を実感できるのは、本作の醍醐味といっていいだろう。

 そして何よりも、これらの楽曲を新たな解釈で歌うことによって、あらためて彼の歌の上手さが最大限に表現されている。結局のところ、どんな曲を歌っても玉置浩二は玉置浩二なのだ。自ら「カヴァーではなくオリジナル・アルバムとして作った」と言い切れるほど、気合いや意思の強さがはっきりと表れた傑作となった。まもなくオーケストラと共演するコンサートが始まるが、バンド編成ではなくフル・オーケストラをバックにこれらのレパートリーを歌うのもきっと素晴らしいだろう。圧倒的な表現力で歌いきったニュー・アルバム『Chocolate cosmos』と、その感動を生で体感するコンサート。これらは、コロナ禍で疲れ切った私たちの心を癒やしてくれる、玉置浩二からの最高のプレゼントとなるに違いない。

 


LIVE INFORMATION

billboard classics
玉置浩二 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2021
『THE EURASIAN RENAISSANCE “ОТТЕПЕЛЬ” 』

○2021年1月22日(金)19:00 東京文化会館 大ホール
出演:玉置浩二 栁澤寿男(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団
○2021年2月11日(木・祝)17:00 東京国際フォーラム  ホールA
出演:玉置浩二 栁澤寿男(指揮)バルカン室内管弦楽団・ビルボー ドクラシックスオーケストラ
○2021年2月27日(土)17:00 フェスティバルホール
出演:玉置浩二 円光寺雅彦(指揮) 京都フィル・ビルボードクラ シックスオーケストラ
○2021年2月28日(日)16:00 フェスティバルホール
出演:玉置浩二 円光寺雅彦(指揮)京都フィル・ビルボードクラシ ックスオーケストラ
○2021年3月8日(月)19:00 熊本城ホール メインホール
出演:玉置浩二 栁澤寿男(指揮) 九州交響楽団

billboard-cc.com/classics/tamaki2021-ottepel/

※ОТТЕПЕЛЬ(オーチェペリ)・・・ロシア語で「雪解け」を表す。

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