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ニューオーリンズの音楽一家生まれ

そんなジョンは、ニューオーリンズの有名な音楽一家に生まれた。父のマイケルは、自身の兄弟らとバティステ・ブラザーズ・バンドを組み、彼も子供の頃から参加して、国内外をツアーする生活を送ってきた。最初の楽器はパーカッションだったが、後に母のアドバイスでピアノに転向している。

「僕にとって音楽というのは生まれた時から身近にあるものだった。僕は、これまでに共演などを通じて多くの人達に音楽のメンターとして導いてもらった。ハービー・ハンコック、ウィントン・マルサリス、カサンドラ・ウィルソン、プリンス、スティーヴィー・ワンダー、レニー・クラヴィッツ……。そのなかで最初のメンターは、やはり父だった。父をはじめ、彼らから受けた全ての影響が作曲のインスピレーションになっている」。

ジョンを知るのに重要なのは、生まれ育ったニューオーリンズという土地だ。

「ニューオーリンズでは、音楽はジャンルで考えるものではなく、人とのつながりのなかで生まれるものという意識が根付いている。それを僕は、ジュリアード音楽院で学んでいる時も実践した。だから、ピート・ドクター監督の依頼にそれこそが(『ソウルフル・ワールド』で)僕のやりたいことだと答えたんだ」。

「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」でジョン・バティステがニューオーリンズを案内した映像

 

言葉を超えて一緒に歌い、分かち合うパレードの先導者

ジャズとクラシックに精通したピアノの演奏力、豊富な音楽の知識に加えて、〈人とのつながり〉を大切する思いからコラボに積極的なこともあり、ジャズ、R&B、ヒップホップ界の大物からレコーディングやツアーへの参加オファーが多い。おもしろいところではコモンがキャプテンを務めた〈2020 NBAオールスター・セレブリティ・ゲーム〉に選手として出場している。そういえば、アメリカのメディアに子供の頃の想い出として「僕が音楽を演るのはバスケとチェスの合間の暇な時だった」と語っているのを読んだことがある。

アメリカ国歌を演奏した2020年のNBA開幕パフォーマンス

故郷で育まれた〈人とのつながり〉という思いは、行動の基盤にもなっている。〈ブラック・ライヴズ・マター〉の運動は暴力的な行動で報道されることもあるが、彼は10年前から、政治的なメッセージではなく、純粋に人種差別に抗議する活動として〈平和の行進〉を行っている。彼自身は「愛の暴動」と呼んでいるが、行進の真ん中には音楽があり、彼はピアニカ(鍵盤ハーモニカ)やショルダー・キーボードを演奏している。

「言葉を超えて、一緒に歌い、手拍子したり、踊ったりして、愛を分かち合っている。そういう場所をこの活動を通して僕は作ってきた。とにかく毎回圧倒されるほど人々の熱気がすごいんだ」。

そのエネルギーに満ちた様子は動画で見ることが出来るが、音楽のパレードもニューオーリンズでは日常的に行われていることだ。

ジョン・バティステが2020年6月6日に行った平和的抗議の行進〈We Are〉の様子を捉えた映像

2020年のジューンティーンスにブルックリンの集会で演奏された“We Are”という曲、3月に発売されるアルバムのタイトル・トラックでもあるけれど、レコーディングには彼の祖父が長老を務める教会の聖歌隊や出身校のマーチング・バンドが参加している。彼を知るのに今一番ふさわしい曲としてオススメしたい。

『WE ARE』収録曲“We Are”“I Need You”

 


RELEASE INFORMATION

JON BATISTE 『WE ARE』 Verve/ユニバーサル(2021)

リリース日:2021年3月19日(金)
価格:2,860円(税込/SHM-CD)
品番:UCCV-1186
配信リンク:https://jazz.lnk.to/JonBatiste_INYPR

TRACKLIST
1. WE ARE
2. TELL THE TRUTH
3. CRY
4. I NEED YOU
5. WACHUTALKINBOUT
6. BOY HOOD
7. MOVEMENT 11’
8. ADULTHOOD
9. MAVIS
10. FREEDOM
11. SHOW ME THE WAY
12. SING
13. UNTIL