昨年4月にリリースしたEP『SLEEP ASLEEP...。』のハイブリッドなポップセンスがリスナーはもちろんのこと、TVやラジオなど、各方面で大きな話題となった東京・池袋出身の〈ハッピー・ポップ・ユニット〉、illiomote。ヴォーカル/ギターのYOCOとギター/トラックメイクを手掛けるMAIYAは2歳からの幼馴染みらしいゆるふわな空気感を纏いながら、10代の頃からさまざまな音楽に触れることで育んできたエッジーな感性を楽曲に忍ばせている。
「高校時代は、心持ちとしてはパンクに近くて、〈周りの子たちがやっていることとは違うことをやろう〉と思ってバンドをやってました(笑)。70年代のロックをベースに、いろんな要素が混ざった音楽性だったんですけど、その一方でEDMやR&Bを聴いたり、ネオ・ソウルを聴いたり、いろんな音楽を聴いていましたね」(MAIYA)。
高校卒業を機にバンドは解散し、そのままギター・デュオとして活動を続けていた2人は新たな展開を求めて、購入したパソコンでビート制作を開始。バンドの枠組みから解き放たれた多面的な音楽性は、グランジ・ロックやトラップ、ジャングルのようなベース・ミュージックなど、多彩な色を振り撒くような作風へと発展し、前作『SLEEP ASLEEP...。』から10か月ぶりとなる新作 EP『Teen Trip Into The Future』では、ストリーミングの累計再生回数が400万回超を誇るNYのオルタナティヴ・ラッパー、ボーディとのコラボレーションを敢行。その楽曲“Everybody Nice Guys”は、ブレイクビーツにパンク、ハード・ロック、オートチューンやトラップ・マナーの3連符のフロウなど、2人のポテンシャルの高さを感じさせる多様なスタイルが凝縮されている。
illiomote 『Teen Trip Into The Future』 スピードスター/ウルトラ・ヴァイヴ(2021)
「この曲は一緒に作ったボーディに触発されて、自分たちの好きな音楽をとにかく詰め込んだおもしろい曲になりましたね。ただし、いろんな要素を詰め込みすぎると聴きづらくなったり、聴き手を突き放した曲になってしまいかねないので、今回はその匙加減を意識して曲作りをしました」(MAIYA)。
「前回のEP『SLEEP ASLEEP...。』は何も考えず、作りたいままに作った作品だったもんね」(YOCO)。
「今回も作りたいように作ってはいるんですけど、全体的としては色味でいうと寒色系、サウンドでいうと浮遊感やスペイシーなトリップ感をベースに、ビーバドゥービーにも通じるグランジのテイストやハイパー・ポップの要素を加えたり、現代性も意識しました。ただ、次はまったく別のタイプの曲を作るかも。飽きっぽいというか、意識しないで作ると違うタイプの曲が自然に出来るのが私たちの特徴なんだと思います」(MAIYA)。
ドリーム・ポップ“きみにうたう”や、 1975に触発されたという“It's gonna be you”、ハイパー・ポップ・チューン“Melancholy”、サイケデリックなフォーク・ソング“夕霞団地”など、ヴァリエーション豊かな楽曲をキャッチーなメロディーと柔軟なギター・サウンドで見事にまとめ上げている。
「自分たちの音楽性を言葉で上手く説明できないので、大きな括りのジャンルとして、 〈HAPPY POP〉と名付けました。ただ、それはサウンドというより、精神性を意味しているんですよ。もともと、私たちはめっちゃ明るいわけではなく、みんなと同じように心の闇を抱えているし、音楽を通じてそういう自分を肯定して、幸せになりたいんですよね。illiomoteでは音楽はもちろん、そういう気持ちも伝えていけたらいいなって思っています」(YOCO)。
illiomote
YOCO(ヴォーカル/ギター)、MAIYA(ギター/サンプラー)から成る2人組ユニット。2019年3月にYouTubeへ投稿した“In your 徒然”のMVが話題となり、ファッション誌や音楽系ウェブメディアにピックアップされて知名度を上げる。同年末には配信シングル『Sundayyyy/BLUE DIE YOUNG』を発表し、Spotifyの公式プレイリストに選出。2020年は2月に初の自主イヴェントを開催し、4月には初EP『SLEEP ASLEEP...。』をリリース。9月のワンマン・ライヴも成功させる。さらにはTOSHIKI HAYASHI(%C)とのコラボ曲“24/7”、先行曲“ブラナ#15”“Everybody Nice Guys”も好調ななか、ニューEP『Teen Trip Into The Future』(スピードスター/ウルトラ・ヴァイヴ)を2021年2月3日にリリース。