インタビュー

三浦章宏、愛器J.B.ガダニーニで東誠三と初録音したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ集Iを語る

三浦章宏『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集I《クロイツェル》』

盟友・三浦章宏&東誠三の息の合ったベートーヴェン

 2020年、東京フィルハーモニー交響楽団のコンサート・マスターとして20年目を迎えた三浦章宏が、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ集Ⅰを録音。折しもこの年はベートーヴェン生誕250年のメモリアル・イヤー。共演は幼いころから交流があり、共演を重ねているピアニストの東誠三だ。CDは人気の高い第9番“クロイツェル”からスタートする。

三浦章宏,東誠三 『ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ集I《クロイツェル》』 AKIHIRO MIURA(2020)

「“クロイツェル”は大学生のときに初めて演奏し、なんてインパクトの強い曲かと感動しました。第1楽章はピアノと一体となり、エキサイティング。第2楽章はベートーヴェンが得意とする変奏曲で、とても美しい。第3楽章はワクワク感があり、躍動感に満ちています。今後ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲を録音する予定で、まず“クロイツェル”、第6番、第1番と組み合わせましたが、これらはすべて変奏曲が入っています。私は特に第6番の第2楽章が好きなんです。ぜひ聴いていただきたいですね」

  これは三浦章宏にとって初録音。共演者、録音スタッフ、会場などすべてに恵まれ、スムーズに進んだ。

「初めての録音ですので、ぜひ敬愛するベートーヴェンを収録したかった。東さんとはもう50年のおつきあい。お互いにベートーヴェンに対する熱く深い思いが一致しているため、内容の濃い録音ができました。私はNHK交響楽団時代に多くの名指揮者のもとでベートーヴェンの交響曲を弾いてきましたが、とりわけヴォルフガング・サヴァリッシュや、ホルスト・シュタインという偉大なマエストロからは多大な影響を受けました。東京フィルでもチョン・ミュンフンの厳しさが演奏の糧となっています。こうしたオーケストラでの演奏が、ヴァイオリン・ソナタと対峙するときに大きな意味をもたらしてくれます」

  ヴァイオリニストにとって、楽器との出合も大切である。現在使用している楽器は、1767年製J.B.ガダニーニ。新日本フィルのコンサートマスターを務めた植木三郎(2004年没)の愛器を受け継いだ。

  「この楽器は深くて強くてダークな音色を備えています。でも、最初は自分好みの音にしたいと思って少し手を加えたらうまく鳴らなくなってしまい、10年間試行錯誤を繰り返しました。ようやくいまは楽器本来の響きを取り戻し、私も納得しています。心にグッとくる音が特徴ですね。植木さんが大切にしていた楽器ですので、その遺志を受け継ぎたい」

  いまや三浦章宏のよきパートナーとなったJ.B.ガダニーニで録音されたベートーヴェンは、まさに聴き手の心の奥深く浸透してくるもの。“クロイツェル”で幕開けするインパクトの強さと、ヴァイオリンとピアノの音の融合が絶妙で、ベートーヴェンの偉大さが胸に突き刺さる。全集完結が待ち遠しい。

 


LIVE INFORMATION

三浦章宏 リサイタル
〇2021年6月12日(土)
【会場】福島県三春町まほらホール
【出演】三浦章宏(vn)東誠三(p)

www.town.miharu.fukushima.jp/site/mahora/

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