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――デビュー前の人気曲“温度差”([C]盤)が収録されることも話題を集めています。

磯部「15年くらい前の曲ですね」

川上「デビュー前、いちばん人気があった曲なんですよ。なぜかリリースしてなかったので、この機会に正式に出そうということになって。当時はどうしてこの曲が人気なのかわからなかったんだけど、今振り返ってみると、自分のすべてが詰まっている曲なのかもなって。“ワタリドリ”、“city”、新曲の“風になって”に通じるものもあると思います」

―なるほど。このベストを聴いて、本当に多彩な音楽性を持ったバンドだなと実感しました。

川上「やりたいことは時期によって変わるし、自分たちとしては、そのときにやりたいことをやり続けてるだけなんですよね。その答えが、今回のベストアルバムじゃないかなって。まあ、10年やってればふり幅があるように感じますよね」

――しかも、めちゃくちゃ独創的ですよね。海外のインディー・ロックにもより過ぎず、かといって邦ロックっぽくもなく。トレンドも気にしていないのでは?

川上「いや、けっこう近寄ってる曲もあると思いますよ(笑)。そういうやり方も好きなんですよ。〈最近こういう音が気になってるから、自分たちでもやってみよう〉っていう。あからさまにマネすることはないし、〈みんなが聴いているものを取り入れよう〉ということではなくて、好きだから〈やってみたい〉ということなんですけど。〈もっと先に行きたい〉という気持ちもあるし。流行を取り入れるのは、マイルス・デイヴィスもザ・ローリング・ストーンズもやってきたことですからね」

――確かに。

川上「時代を反映した音楽は、好きかどうかは別にして、正解だと思うんです。それを自分たちなりに取り入れるのはおもしろいし、ロック・バンドにしか出来ないことじゃないかな」

磯部「好き放題やるのはバンドの醍醐味の一つですからね。この10年、音楽的にはいろんなことをやってきたけど、〈なりたいもの〉は変わってなくて。楽しくやって有名になって金持ちになるっていうバンド・ドリームを素直に目指してるので」

――素晴らしい(笑)。

磯部「俺自身はルーツ・ミュージックやいろんなジャンルにそこまで詳しいわけではないので、周りのアイデアに乗っかることにおもしろさを感じていて。ライブで〈どうだ!〉ってやるのがいちばんの目的なんですけどね」

白井「時期によって聴いているものは違うけど、ずっと好きなものは変わってないですね。結局、レッチリやメタリカが好きっていう。もちろん新しいものも聴くし、クラシックなものも聴きますけど、それは〈取り入れよう〉と思ってる部分が大きいかもしれないですね」

――庄村さんはどうですか? 庄村さん自身も幅広く音楽を聴き続けていて、それは[Alexandros]の楽曲の多様性にもつながっていると思うのですが。

庄村「確かにリズム・パターンの豊富さは、俺がどれだけ音楽を聴いてきたかが表れていると思いますね。曲を作るとき、洋平がギターを弾きながら、口でドラムのフレーズを伝えてくれることもあって。お互いの引き出しから〈こういうのはどう?〉とアイデアを出し合いながら作業していたことも印象に残ってますね。俺もいろんな音楽を聴いてきたし、洋平がリズムやドラムをすごく好きでいてくれたことで、相互作用が生れたんだと思います」

――なるほど。川上さんのメロディーメイカーとしての進化ぶりが感じられるのも、このベスト・アルバムの意義だと思います。

川上「ありがとうございます。メロディーに関しては、“Starrrrrrr”で、さらに幅が広がった感覚があって。数万人のオーディエンスの前でライブをするためにはもっとデカい武器が必要だったし、当時はフェスにいっぱい出てたから、そこでどう制覇するか?ということも考えていて。“Starrrrrrr”が出来たとき、そういう場面を思い描くことができたし、実際にそうなったので」

――ポピュラリティーを得ても、ロック・バンドとしての強さをキープしているのも[Alexandros]の魅力ですよね。

川上「自由に好き勝手やるというのはブレてないですね。〈こういう曲をやれば、ファンを喜ばせられる〉みたいなことは考えてなくて、まずは自分たちを満足させることが大事なので。〈自分たちを裏切らない〉ということが正義ですからね」

――最後に[Alexandros]の次のヴィジョンについて聞かせてもらえますか?

川上「まずベストに関して言えば、“風になって”もそうですけど、次の[Alexandros]が垣間見えるんじゃないかなと。『Where's My History?』というタイトルにも〈これからの歴史はどこ?〉という意味も込めていて。もっと上に行くため、成長するためには進化を恐れちゃいけないと思いますね」

磯部「あとはもう、この状況が少しでも改善されたらなと。気持ちよくライブをやれるようになれば、日本はもちろん、世界中どこへでも行ってブチかましたいので」

白井「この先のヴィジョンはメンバー、スタッフとも共有していて。それを一つ一つ具現化していくだけですね」

――このベストで、庄村さんはついに〈勇退〉ですね。

庄村「『Where's My History?』は区切りではなくて、この先にあるものが楽しみになるベストだと思いますね。2020年1月に〈勇退〉を発表したときの文言がすべてだし、その先を設けていただいていることが幸せで。いまもその渦中ですが、幕張メッセのライブでは愛してくれた人たちにしっかりご挨拶したいと思ってます」