類稀なるミュージシャンシップと、常とは異なる活動スタイルが可能にする、互いに意表を突くアイデアの連続。前向きな衝突を通過することで自身のアイデンティティーを確認した彼らのブランニュー・サウンドが到着!
これまででいちばん振り幅が広い
ミステリアスなオープニング“Intro”を抜けた先で待ち受ける途轍もない開放感に胸が震える。先行配信中の2曲――パノラミックなスケール感とダイナミックなドライヴ感を持つ“Shimmer Song”と、いつになくリズミックなメロディーに加えて終盤ではモータウン調のカッティングも飛び出す“Brotherhood”、そしてエモーションをストレートに放出する昨年のシングル“ツバメクリムゾン”……冒頭からバンドの王道と新味が交互に畳み掛けられるNothing’s Carved In Stoneの新作『Strangers In Heaven』。前作『REVOLT』は不穏なエネルギーを湛えた作品だったが、今作はその反動であるかのように極めて風通しの良い楽曲群で幕を開ける。
生形真一(ギター)「今回の曲は、“ツバメクリムゾン”を除くと“Brotherhood”がいちばん最初に出来たんですよ。で、いきなり今回のなかでも新鮮な感じの曲が出来て、みんな、テンション高く制作を進められたのかもしれないですね。それで、次に作ったのが“Shimmer Song”かな? なんかね、トントン拍子で最初に何曲か鍵になる曲が出来ていって」

抜けの良い序盤に続くのは、一発で耳を奪われる個性的なリフを中心に、多様なアレンジで挑発するやさぐれたロック・チューン“Crying Skull”“What’s My Satisfaction”“Idols”。合間にジェントルな熱情を滲ませる7分超のミディアム“雪渓にて”も置かれた中盤からエンディングに近付くと、出会うのはNothing’sの新たな側面。クールなポリリズムのなかに灼熱のスパニッシュ・テイストを織り込んだ“(as if it’s)A Warning”、打ち込みのようにチープな音色の生ドラムが淡々と全編を貫く“Midnight Train”、村松の浮遊するようなヴォーカルが印象に残る“キマイラの夜”、そこからシームレスに加速する人力テック・ハウス“7th Floor”――村松拓(ヴォーカル/ギター)いわく「すごくNothing’sっぽい、でもみんなの新しい一面もちゃんと出てる」という本作は、メンバー自身も意表を突かれた場面が多々あったという。
生形「“Midnight Train”は、オニィ(大喜多崇規、ドラムス)が最初にリズムを持ってきたんですよ。でも、自分で叩いてるんだけどほぼ打ち込みみたいな音で作ってるし、いわゆるドラマーが持ってくるリズムじゃなかったから意外でしたね。ただ、シンプルだけど、すごく完成されたフレーズなんですよね」
村松「俺は“キマイラの夜”のサビのチョーキングが意外だった。真一が絶対自分からは弾かないフレーズっていうか」
生形「セッションで作らなきゃ絶対やらないフレーズですね。あと、ひなっち(日向秀和、ベース)だったら……俺がカッコイイなって思ったのは“Brotherhood”とか。結構スラップが多いなかでサビは白玉で弾いたりしてて、そこでノリを出したり。で、白玉からいきなり16のフレーズでサビを締める感じがおもしろいと思いましたね。あと、拓ちゃんはやっぱ“キマイラの夜”のファルセットとか。ファルセットと生声? その中間みたいな感じだよね?」
村松「そうそうそう」
生形「で、自分としては後ろの9、10、11曲目ですかね。実は俺、“キマイラの夜”のイントロがすごい気に入ってて(笑)。それと“Midnight Train”ではすごく速いアルペジオを弾いてるんですけど、あれもセッションじゃなきゃ絶対出てこないフレーズ。あとは“(as if it’s) A Warning”のギター・ソロか。あそこもスパニッシュな感じだとおもしろいよねって誰かが──オニィかひなっちが言って、それで弾いてみたら〈ああホントだ、カッコイイね〉って。だから全体としては、いままでのなかでいちばん振り幅の広いアルバムが出来たかな、と個人的には思いますね。すごくポップな曲もあるけどマニアックな曲もあるし、そのマニアックさもいままでとは違う方向だったりして、“Midnight Train”とか“(as if it’s) A Warning”とか。あとはまあ、全部出来て通して聴いたときに、思いのほかすんなり聴けたっていう。今回、曲の時間がいつもより長いんですよ。だいたいね、作るとなぜか4分10秒台になることがほとんどなんですけど、今回はそれよりもちょっと長い。5分台の曲も多くて」
それでもいっしょにいる
そんなふうに全12曲で流れるようなグラデーションを描くサウンドに対して、リリックには全体を通しての統一感がある。ときには皮肉に、ときには真っ直ぐに投げ掛けられる言葉の根底に流れているのは、何があっても前を向く意志と覚悟だ。
村松「歌詞は、大半は俺が書いて、真一が毎回2~3曲書くんですけど、芯になる大事なことは真一が書いてくれるから、俺は、そこにストーリーとか色付けをしたいと思ってて。あと、せっかく『REVOLT』を通ってバンドの膿みたいなのを出したのにただ〈がんばりましょう〉とか言ってるだけじゃおもしろくないから、ちゃんと俺たちの息遣いが聴こえるものにしたくて、そこはいろいろ考えました。だから皮肉なこと言ってみたり……これも、ホントは全然皮肉じゃないんですけどね。最終的に行き着くのは同じところで」
生形「ちなみに、みんな気付かないんですけど、“Shimmer Song”の歌詞は俺が書いてるんですよ」
村松「そう、みんなこれ、俺が書いたと思ってるんですよね(笑)」
生形「俺らふたりはわかるんですけどね。拓ちゃんは絶対書かない、こんなストレートな歌詞」
村松「でも“Shimmer Song”はすごい大切なことを歌ってて。うちのバンドをすごい表してると思う。俺ら、みんなそれぞれどっかに繋がりをもってバンドをやってるけど、ひとりになる瞬間って必ずあるじゃないですか。そういうときに支えになるのが音楽で、音楽を支えにしてずっと生きてきてるみたいな。そういう関係性を俺たちとリスナーの間にもいま求めてたりして、そこも映してくれてるんで、いまの自分たちが等身大で届くんじゃないかなって気がしますね」
生形「なんか、最近思うのは、恥ずかしいとかって言葉を躊躇ってたらダメだなって。本当に自分にとってリアルなことを書かないと、どう思われようがいいやって書かないと届かないんじゃないかなって気が、最近特にしますね」
村松「俺は、バンドのなかで歌詞を任されてるっていう自覚があるんで、そのぶんいろんな表情を見せたいなって思ってる部分があって。あとはやっぱり俺、楽器より言葉のリズムを磨いてきた自信があるんで、“Brotherhood”とか“(as if it’s) A Warning”とか、そういう言葉遊びみたいなのに自分の本質があると思いますね。リズム感とか、フロウとか、言葉も音楽的な部分が強い気がします。それとまあ、綺麗ごとじゃない部分を出したいですよね。ハッピーエンドのものは好まれるし、明日の活力にもなると思うんですけど、例えば映画や漫画とかでも、シーンごとに絶望まで楽しめちゃう人っていると思うんですよ。で、ロックは反骨っていう形で絶望も悲しみも見せられる音楽だと思うし、そういう部分をなるべく自分のなかからえぐり出して書けたらな、って書いてますね。だから“Midnight Train”では〈NORAINU〉って言ってて……これがダサいかダサくないか自分ではわからないんですけど(笑)。で、心の繋がりは人それぞれあるんですけど、でもやっぱり、特に若い頃とか、男ってやっぱり孤独なんですよね。さっきの“Shimmer Song”の話じゃないけど、バンドのメンバーもたまたま気が合って、目的地が同じだっただけでいっしょの車に乗ってますけど、みんなまったく違う人間だから、どこか尖ってるし、ささくれ立ってるところはいっぱいあるし。でも、そういう部分はあるけどいっしょにいる、みたいな美学もあるなと思って。それも俺たちらしいなと思うんですよ。そういうことも書けたから、“Midnight Train”はよかったなって」
Nothing’s Carved In Stoneは4人が常に行動を共にするバンドではなく、各々には個別の活動フィールドがあり、そこで得た経験を持ち寄ってNothing’sとしての音楽性を磨いていくというスタイル。そうしたアイデンティティーの確認作業が、作品ごとのサウンドの進化、音と表裏一体の言葉の説得力に繋がっている。その、現時点での最高到達点がこの『Strangers In Heaven』である。
村松「いま話してて思いますけど、4人でバンドやってるってことが自分のパーソナルな部分に深い印としてあるっていうか。ある意味では疵なのかもしれないですけど、そういうものになってるっていうのは最近感じるんで、そこが自然と出てるから、だんだん自信を持って自分の言葉で詞を書けてるっていうのはあるかもしれないです。個人的なことを言ってるんですけどそれが4人の歌になってる、みたいな感覚なんですよ。それが自分にとっては心地良いっていうか……変なんですけどね、そういう不思議な気持ちになるんです」
▼Nothing’s Carved In Stoneの作品
左から、2009年作『PARALLEL LIVES』、2010年作『Sands of Time』、2011年作『echo』(すべてDynamord)、2012年作『Silver Sun』、2013年作『REVOLT』、2013年のシングル“ツバメクリムゾン”(すべてエピック)
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