インタビュー

吉野直子=世界的ハーピストが語る、フォーレらの〈どうしても残したいハープ曲〉に挑んだ新作

©ヒダキトモコ

自主レーベルのシリーズ6枚目はハープのオリジナル作品

 日本が世界に誇る実力派ハーピストの吉野直子が、2016年に創設した自主レーベルのグラツィオーソ(grazioso)の第6弾が登場した。当初このプロジェクトは1年に1枚ずつリリースする予定で5年計画だったが、〈どうしても残したい大事な作品〉が5枚では収まり切れず、もう1枚追加する形となった。

 「ハープのオリジナル作品、小品、現代作品、バッハやブラームスなど多岐に渡る曲目を収録してきました。各録音がハープの多種多様な魅力を伝える選曲になっていて、ひとつの物語を形成していると思います」

吉野直子 『ハープ・リサイタル6 ~トゥルニエ・ルニエ・カプレ・カゼッラ・サルツェード・フォーレ』 grazioso(2021)

  今回はフランスのマルセル・トゥルニエ、アンリエット・ルニエ、アンドレ・カプレ、カルロス・サルツェード(血筋はスペイン系)、ガブリエル・フォーレと、イタリアのアルフレード・カゼッラという構成である。

 「全部ハープのオリジナル作品で、ハーピストが3人含まれています。楽器の特性を知り尽くしている作曲家の作品で難度は高いのですが、楽器に無理を強いることがないため弾きやすいですね」

 吉野直子はデビュー当初からハープの響きの豊かさとこまやかな繊細さのバランスを大切に考えてきた。

 「録音もその両面を考え、思い出のある作品で構成しました。カゼッラは恩師のマクドナルド先生が好んで演奏していた曲で、私は13歳のときにローマのコンクールで弾いたのですが、あまり演奏される機会に恵まれている曲ではありません。難しくてとっつきにくいと思われがちですが、私にとって親しみのある曲ですのでぜひ収録したかった。私はルニエの孫弟子にあたります。この曲はハープのシンフォニックな響きがスケールの大きさとオーケストラが鳴っているような感覚をもたらし、深みのある作品です。カプレは意外な一面があり、ハープの優雅な響きだけではなくいろんな顔を備えていることを示唆して興味深いですね」

 CDのフィナーレを飾るのは、有名なフォーレの〈即興曲〉である。

 「10代のころから弾いているスタンダードの曲ですね。今回は楽譜を徹底的に見直し、テンポ設定はゆったり、豊かで満ち足りた響きを大切にするよう心がけました。信頼できる音楽仲間にも演奏を聴いてもらい、客観的で率直な意見を伺い、参考にしました。ですからいままで見えていた世界とは別次元のものが見えた、新しいフォーレになっていると思っています」

 今後はさまざまな楽器とのアンサンブル、教育面、より新たなプログラムを盛り込んだ録音など、「まだ決まっていないけどアイデアは盛沢山」と語る。ハープの可能性を追求していく姿勢を崩さず、自身の可能性も探求。その前向きな姿勢が音楽から立ちのぼる。

 


LIVE INFORMATION
サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンプレシャス 1 pm ~Vol. 4 管・弦・ハープの豊かな調べ
2021年6月24日(木)東京・赤坂 サントリーホール ブルーローズ(小ホール)
開場/開演:12:30/13:00

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021
2021年8月6日(金)神奈川・川崎 ミューザ川崎コンサートホール
開場/開演:18:00/19:00
出演:アンドレア・バッティストーニ(指揮)/東京フィルハーモニー交響楽団
曲目:ニーノ・ロータ:ハープ協奏曲
http://www.naokoyoshino.com/

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