VINTAGE COLLECTION+plus特別編~没後20年企画 武満徹とその時代
武満徹の没後20年の節目となる今年、タワーレコードではユニバーサルミュージック協力の元、初CD化音源などを復刻していく「VINTAGE COLLECTION+plus」シリーズの中で、武満関連作3タイトルを復刻。ある盤はその偉大なる軌跡を今一度追う為に、またある盤は同時代の日本人作曲家が真に創造的な楽壇を現出していたドキュメントとして、非常に貴重なセレクションとなっている。
『武満徹の軌跡』では1957年の初期代表作《弦楽のためのレクイエム》に始まり、世界にその名を轟かせるきっかけとなった《ノヴェンバーステップス》、遺作となった《エア》まで、作曲年代順に主要作品を収めた武満のベスト盤的な内容のアルバムとなっている。演奏陣も生涯の盟友小澤征爾、ツトム・ヤマシタを始め、武満作品に縁深い奏者が揃っている。武満作品に馴染みの無い方にも是非とも手に取って頂きたい作品だ。
『21世紀へのメッセージ』は岩城宏之を総合プロデューサーに配し、武田明倫による企画監修の元、オーケストラアンサンブル金沢が各作曲家に委嘱するという形式で制作されたもので、シリーズ全4作をセット化して初めての復刻となった。各盤の解説も一挙収録しており、武満自身によるプログラム・ノートも掲載。約50ページにも及ぶライナーノーツは非常に資料的価値も高いものだ。武満はもちろん、同時代日本人作曲家の楽壇を伺い知るにも非常に意義深い復刻が叶った。
最後はクレーメルと吉野直子のデュオアルバム。高橋悠治、ケージ、ペルトといった作品から、サティの武満編曲、また宮城道雄、ニーノ・ロータまで収めた非常にバラエティに富んだ楽曲を取り上げており、クレーメル、吉野の柔軟な姿勢、楽曲に対するフラットなリスペクトの姿勢が伺える。このアルバムの独特な構成は、独学で作曲をものにし、シャンソンや映画にも親しみ、偶然性の音楽~美しい朴訥とした旋律までをその音楽パレットとした武満自身と相似形を描いている様にも感じる。