それぞれのシティ・ポップ
DEENらしさの追求に手を抜かず、ブランド・イメージを守りながら音楽をブラッシュ・アップさせていく。そんな彼らの姿勢がより明確になった本作は、加えてこれまでになく間口の広い作品になっていて、幅広い世代にアピールできる魅力を孕んでいる。そんな作品を完成させた二人に、〈これぞシティ・ポップ〉と思う作品や楽曲について最後に尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。
「僕は山下達郎さんの世界こそズバリ、シティ・ポップだと思う。限りなく洋楽に近いサウンドを妥協せず追求してきた彼の曲には、明確なサビがあるものもあれば、ABAB形式の曲も多いけど、それらがうまく調和しているのが素晴らしい。このスタイルでやりきるんだ!ってこだわりが感じられ、どの曲にも濃い〈印〉が見て取れる。それと、僕らのアルバムの横に置いてもらえたら嬉しいのは、オーレ・ブールードかな。あとAORの理想形といえばリッキー・ピーターソン。ビル・ラバウンティのカヴァー“Livin' It Up”が入った『Night Watch』は完璧なAORアルバムだと思うな」(池森)。
「やっぱり〈シティ〉って付いているぐらいだから、シティ・ポップって洒落てなきゃいけない。そういう意味では、角松敏生さんがいちばんかなぁ。かつて僕らがハード・ロックを聴いて騒いでいた頃、角松さんの曲を聴いて、〈なんだこの洒落た音楽は!〉って。ファンクをやってもすごく洗練されてるし、遠い世界の音楽って感じがしたんですよね。それだけ強烈なインパクトがあったんです。最近のシティ・ポップ系を聴くと、彼のああいう洒落たところを継承しようとしてるのかなって思う。で、今回のアルバムも、そういう要素を持たせられたらいいな、と思いながら作っていたところがあるんですよね」(山根)。
DEENの近作を紹介。
左から、ベスト盤『DEEN The Best FOREVER ~Complete Singles +~』、2019年作『NEWJOURNEY』(共にエピック)