昨年から今年にかけて、デビュー30周年を祝うメモリアル企画を次々に繰り出し、ファンを喜ばせてきたDEEN。ライヴ関係でとりわけ注目を集めたのは、2022年7月からスタートし、延べ50公演を行った全国ツアー〈The Last Journey 47の扉〉。4度目にして最後の全国47都道府県ツアーと銘打たれたこのライヴをコロナ禍のなか無事完走させたことは、彼らと共に走り続けてきた人たちにも簡単に消せないインパクトを残したことだろう。

 またデビュー日から2日遅れの2023年3月12日には、5年ぶりの武道館公演〈DEEN LIVE JOY Special 日本武道館 2023〉も実施。お祭りのフィナーレを飾る大花火のようなそのライヴの余韻をまだいまも引きずっているところ、という向きも多いと思うが、もうひとつのお祝い事の開催が近づいてきていることを伝えないといけない。

 イヴェント名は〈DEEN Premium Symphonic Concert -WINGS TO THE FUTURE-〉。6月17日の大宮ソニックシティ、6月22日のフェスティバルホールと2回のみ行われる本公演では、フル・オーケストラをフィーチャーし、装いを新たにしたDEEN曲を披露するという初の試みが実践される。共演するのはパシフィックフィルハーモニア東京(大宮)、日本センチュリー交響楽団(大阪)といずれも名門と呼ばれるオーケストラであるが、両者が融合するステージではいったいどんな化学反応が発生するのか。

 開催を目前に控えて、いまはどのような心構えでいるのかを本人たちに確認するべく、池森秀一と山根公路の元へ向かった。


 

――フル・オーケストラによるコンサートをやろうというアイデアはどこから?

池森「オファーをいただいたんです。もう断る理由がなかった(笑)」

山根「30周年ということで何か特別なことがやれたら、と思っていたので、お話をいただいたときは、素晴らしいマッチングだ!と感じましたね」

――何かたしかな手ごたえを得られるだろうという予感も働いた?

池森「そうですね。武道館のあとでもあるし、ぜんぜん違ったものをお見せできるんじゃないかと思いました」

――集大成的なライヴとはまた違う、新しい景色が見えるかもしれないと。ところで現時点で作業はどこまで進行しているんですか?

池森「バンドとオーケストラが別々にアレンジ等を進めていて、音合わせは前日にやることになっています」

――あ、そうなんですか?

池森「それまでは僕らのバンドで、オーケストラと合わせればいいだけの状態にしておく。今まで演奏している曲も多いので、準備はしっかりとできています」

――当日ステージ上でどんな景色が広がっているとイメージしますか?

山根「音量のバランス面も含め、普段どおりにいかないことだけは間違いない。でもバンドとオーケストラの演奏がどのように融合し、どんな化学変化が起こるのか、楽しみのほうが勝っていますね」

――セットリストは代表曲がひしめき合う黄金のラインナップになっていると聞きました。

山根「ベストアルバム盤(この3月にリリースされた30周年記念ベストアルバム『DEEN The Best DX ~Basic to Respect~』)の内容につながっている感じですね」

――個人的には、DEENナンバーがもともと備えている〈年齢感〉といったものがどのように変化するのか、そこに興味が湧きます。例えば、成熟度が著しくアップし、印象がガラリと変わる曲が出てくるんじゃないか、とか。

池森「なるほど。どうなるんだろうね……。でもバンドで音を作るというベーシックな部分は変わらなかったりしますから。ただ、通常のコーラス部分を補ってもらう、ということなら何らかの変化があるかもしれませんね。DEENのライヴって全編においてコーラスがフィーチャーされているんですけど、そこを今回はオーケストラに演奏してもらいたいなと。例えば“瞳そらさないで”のサビ前の〈look in your eyes~〉の箇所、曲と完全に一体化したこのフレーズをどんな楽器で表現してみるか。そういったカウンター・メロディー部分を全部補ってもらうとか考えたりしています」

――ところでおふたりがこれまで観たり聴いたりしてきた、フル・オーケストラをフィーチャーしたロック、ポップス系のライヴやアルバム作品で強く印象に残っているものってありますか?

池森玉置浩二さんのシンフォニック・コンサートですね。曲も歌もオケにすごくあっていて、すごいとしか言いようがないライヴでした。自分のライヴがああいうふうな形に近くなるのか、まったく見当がつかない。オーケストラ・サウンドの性質上、音圧がガーンとくる感じにはならないでしょうけど、人が生み出すウネリ、迫力はすごいだろうと容易に想像がつく。その音の渦がどんな形をしているのか、確認するのがいまから楽しみですね」

山根「いつもイヤモニを使っているんですけど、フットモニターを使ったほうが体感的にイイものが得られるんじゃないかなって思います。そこに生まれるサウンドを身体全体で感じてみたい。で、僕が印象に残っているライヴは、前にYouTubeで観たやつで、ウィルソン姉妹のハートが〈天国への階段〉を大人数のコーラスを従えて演奏していたんです(米国の芸術文化に貢献した人物に贈られるケネディ・センター名誉賞をツェッペリンが受賞した際に行われた特別記念ライヴ)。曲のスケール感が一段と大きくなっていて、感動したのを覚えています」

――この1年間、30周年イヤーを駆け抜けてきたわけですが、振り返ってみておふたりの胸のなかにどんな思いが去来しているのかなぁと。

池森「47都道府県ツアーをやり切ったという喜びに浸りつつ、たくさんの人に支えられてきたんだなという実感を抱いていて。47都道府県ツアーはこれがラストだと宣言していたんですが、それをやり終えてから武道館ライヴを実現することができ、その一連の繋がりを振り返ると、みんなといっしょに作り上げてきたんだよな、と強く感じずにはいられない。そこからのオーケストラコンサートだから、かなり強いコントラストがつきますよね」

――ツアーから武道館にかけて紡いできたストーリーの、壮大なアンコールのように思えなくもない。

池森「本当にそうですね」

――これから先、35年、40年とバンドの歴史が積み重ねられていくと思うんですけど、おふたりが考えるDEENの未来像ってどういったものなのでしょうか?

池森「未来。いつも1年ぐらい先のことだけを見つめながら、その目標に向かってしっかりとやる、そういうルーティーンを30年間続けてきたんですよ。だからこれまでどおり、毎年作品を作り、ちゃんとみんなに届ける。その積み重ねをやり遂げれば、35、40という数字がしっかり付いてくるんじゃないかと思います」

――ひとつひとつ作品をきっちり作り上げていく、ってことが前に進む原動力となっていんですね。

池森「それがDEENというチームの大きな使命ですね。そこをずっと曲げることなく続けてこられているのがすごいなと思うんです。周りを見回しても、そうやれている人たちはすごく少ないですし」