風景やイメージが思い浮かぶタイプと、物に命を見ちゃうタイプ
――それでは楽曲作りはTakahashiさんのソロ曲にドラムをつけてもらうことから始めたんですか?
Takahashi「そうですね。最初に曲を2曲送ってみて、ドラムをつけてもらって」
――こういうドラムがいいみたいなリクエストはありました?
Abe「全部お任せでいいって言ってくれたので、全部お任せでやってみて、最初のスタジオに入った時に合わせてみたらいい感じだったんですよね」
――今作を聴いていて、ドラムはなかなか一筋縄じゃないというか、全く同じリズムを繰り返してるところが少ないですよね。どうやって付け足してるんですか?
Abe「ピアノを聴いた時にこう合わせたいなって思い浮かんだことをそのままやることもあるし、あとは、仰ってくれたみたいに同じものを繰り返すのが苦手なんです。自分でも飽きちゃうし、他人にもつまらないって思われるんじゃないかなっていうことで、すぐに面白いことをしたくなっちゃって。だから複雑なことをするために何かをしてるわけではなくて、好きな風につけたらああなっちゃうみたいな」
Takahashi「確かに、2回出てくるフレーズは絶対違うことしてる気がする。面白いですよね」
――もう少し詳しく訊きたいんですけど、Takahashiさんのピアノがどういうドラムを求めているのか、聴くと分かるんですか?
Abe「私は、曲を聴くと景色や風景、抽象的なイメージ、例えばキラキラとかサラサラとかが思い浮かぶタイプだから、それをドラムで表現しようとしてるんです」
Takahashi「素敵なこと言うわね!」
――そのイメージはお二人で共有するんですか?
Abe「しないですね。あんまり言ったことないです」
Takahashi「あんまりないね。それはあえて言わない感じ?」
Abe「いや、秘密じゃないけど、訊かれないから言わない(笑)」
――じゃあTakahashiさんは曲を作る時、どういうことを考えているんですか?
Takahashi「私は、何かを考えて曲を作ってるわけではないんですよ。例えば今作の“First Intention”っていう曲は、ソロ・ライブに誘ってもらったはいいものの、ライブが1か月後で、〈1か月後だよどうする〉ってなった時に出来た曲で。今やらなかったら絶対やらない気がするなと思って、その時の〈やってみよう〉っていう勢いや衝動をちゃんと音にしてあげたいっていう気持ちだったんです。割と物や気持ちが〈死んでしまう〉と思っていて、そういうのは悲しいので、なんとか形にしたいんですよね」
――Takahashiさんは、ピアノを弾いてないと、〈うわー、最近弾いてない!〉ってなるんですよね。
Takahashi「キーボードにもピアノにも、物に命を見ちゃうタイプで、〈弾けなくてごめん〉とか、弾いたら〈やっぱりコレだー! ピアノもやっと喜んでくれてる!〉みたいな感覚になるんです」
――TakahashiさんとAbeさんは、それぞれお互いをどういう人だと思いますか?
Abe「まゆちゃんは常に明るい人で、大変なことがあっても表に出さないタイプ。私と接する時もめっちゃ明るくしてくれるし、だからLean Richはマイペースに進められているし、何かにつまづいて予定が狂っても、〈じゃあ、ここはこう修正してやっていこう〉ってプラスな感じで進めていける人だと思ってます」
Takahashi「いえーい!」
――Takahashiさんから見た、Abeさんは?
Takahashi「実は結構歳下なんですけど、どう考えても私よりしっかりしてて、安心感がすごくある。何かメニューを頼む時も即決だし(笑)、迷いや揺らぎがなくて、それが音にも出てると思うんです。Lean Richは今後もマイペースに活動していくつもりなんですけど、やるならちゃんと、何かを発信して形に残していかないといけないじゃないですか。私は締め切りがないとそういうのがなかなかできないタイプなので、そういうことを決めてやってくれるんですよね」
――真面目なんですね。
Abe「よくそう言われますけど、そんなことないです(笑)」
Takahashi「いやでも、あるよ絶対。周りが感じるんだからあるんだと思う」
Abe「でも、それが少しコンプレックスなところもあって。真面目はいいことだけど、真面目って、イコールつまらない人かもしれないと感じちゃうから、もっと変なことをしたいなって思って、変拍子とかをめっちゃ使うんですよね(笑)」
――大丈夫です、ドラムは相当変ですよ(笑)。
Abe「だから、変と言われたらちょっと嬉しいんですよ。面白くありたいなって」
パズルの欠片を作って曲に
――ソロ曲にドラムを付けるのとは別に、お二人はコロナ禍の間、ずっとTwitterで〈宅録作曲パズル〉というのをやっていましたね。
Takahashi「せっかく活動を始めたけど、コロナがあってまずライブができなくなってしまって、定期的に何かを発信しないと見てもらえないという状況になった時に、私は曲を作るのが好きなので、曲をワンフレーズずつ作っていって、後で繋げたら面白いんじゃないかというのを提案したんだよね」
Abe「そしたら面白かった!」
Takahashi「1週間に1投稿するという感じだったので、週の前半に私がピアノを考えて送って、後半にドラムをつけてもらうみたいな」
――そうやって出来たパズルの欠片は、全部が何かしらの曲の一部になってるんですか?
Takahashi「そうです。全部使ったんですよ! 全ピースどこかに散りばめられています」
Abe「今回のアルバムは7曲中4曲をそうやって作ったので、結構パズルで出来上がっています」
Takahashi「あれをやっていたから、ハイペースで作曲を進められた可能性はありますね。パズルは全部で20回くらいやったんですけど、最初の8回で1曲目。次の8回で2曲目。パズル3は4回だったね」
Abe「最初は8ピース作って、いざ繋げようってなったら、展開が盛り盛りな感じになってしまって」
Takahashi「幕の内弁当みたいなね」
Abe「そうそう(笑)。面白かったからいいんですけど、その後はもう少し試行錯誤していきました」
――ということは、パズルで生まれた曲が4曲、元々曲があったものにドラムを付けたものが3曲ということですね。
Takahashi「そうですね。ソロ・ライブでやった曲のうちの3曲が今回収録されました」
――そういうやり方で作曲していて、大変だったことはありますか?
Abe「ピースを作る時は短い曲で自分の好き勝手に、ちょっと小難しいことも練習したらできるから好きな風に入れていくんですけど、それらが組み合わさってまとまったらめちゃくちゃ難しくなって(笑)」
Takahashi「最初から最後まで気を抜くところがない曲、みたいなね」
――いずれライブで再現できるんですか?
Abe「頑張れば……できるはずです。レコーディングは通してちゃんとしたので」
Takahashi「私もそれに近いんですけど、毎週投稿するために1ピースごとで集中するので、その1ピースだけでも完成してる曲みたいになっちゃうんですよ。なので繋げる時に、全部サビみたいになっちゃって、どうしようってなってしまって。あと転調が好きすぎて、ピースの中に転調を入れちゃってるせいで繋げるのが大変だったりもしましたね。でも大変というより楽しかった方が強いです」
――たしかに転調はちょくちょく出てきます。
Takahashi「それがドラムとピアノのいいところで。ギターやベースがいると転調した時に大変で、なかなか受け入れて貰えなかったりするんですよ。そこは二人だけでやってるメリットですね」