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〈これが最後かもしれない〉

――裏拍を食うサビがカッコいい5曲目の“サイレント”は、鎌鼬や神隠しなどの様々な〈音〉が歌詞に出てきて、最後に〈ハッ〉というユウさんの声が印象的です。

「この曲こそ説明するとしょうもなくなっちゃうんですけど、シンプルに〈怒り〉に近い感情を表しています。誰でも気付いたら傷付いてることってあるじゃないですか。例えばネットの中傷とか、人との会話の中でとか。そういう傷が鎌鼬みたいに知らないうちに付いていて、〈なんか私、傷付いてる〉って後から感じる。私もすぐに傷付くタイプだし、なんでこんなに人に傷付けられるんだろうっていうジレンマがあるので、そういう怒りをストレートに歌詞にしました。鎌鼬って音もなく切れるじゃないですか。神隠しも金縛りも、音もなくやって来る。だからタイトルは“サイレント”なんですけど、自分だけはその無音の何かが近寄って来てることを感じてる。なので最後、音は聴こえないけど何かが来てたことに気付いて〈ハッ〉としてるんです」

――これは鎌鼬や神隠しの音じゃなくて、それに気付いた人の声だったんですね。続く“スノードーム”は、落ちていくイメージなのにサビのコード感は上昇していて、そこがスノードーム感があって美しいなと思いました。ここまで重めのロックが続いていたけど、最後に向けてちょっと力が湧くような印象もあって。

「これもこういうご時世になったからこそ思ったことなんですけど、ずっと家に閉じこもってると家から出られないような感じがしてきて、それがスノードームみたいだなって思ったんですね。それって未来に続きがないような感じもするんですけど、でも最後には自分がスノードームの外から中を覗き込んでる状態に変わるんです。閉じこもってるところからいつの間にか出られてる」

――いつかはこのコロナ禍も俯瞰で見られるようになる、っていうことですか?

「そういうことです。〈綺麗なものから順に沈んでいく〉っていう歌詞も、スノードームって揺さぶらないと中の雪が落ちてしまいますけど、人生もいろんな揺さぶりがないと、綺麗なものから無くなっていっちゃう印象があるんです。それは若さもそうだし。そういうことを表現したくて」

――“アンティーク”もそうでしたけど、若さに対して何か思うところがあるんでしょうか?

「心理カウンセラーみたいですね(笑)。そういうのがバレて恥ずかしいから本当はあんまり言いたくないんですけど、でもやっぱり考えてるんですよね。音楽をやる人生を歩んでるからには、〈いつまでやれるんだろう〉っていう疑問が常に付きまとうんですよ。やっぱり〈まだ受け入れられてるのかな〉〈どんな風に見られてるのかな〉っていうことは考えちゃうし、体力面を考えても永遠にやれるとは思えないし。そういうことを悲観的に考えずに良いように考えたいっていう気持ちが、きっと歌詞に出がちなんだと思います。そういう疑問を歌詞で昇華して、希望が見えるようにしたい。だから、私は歌詞に〈終わる〉っていう言葉を出しがちで、〈いつか終わってしまう〉っていう気持ちがどの歌詞にもこもってしまうんです。だからこそ、〈いつか終わってしまう〉の後に〈……けど〉を付けたいんですよね」

――なるほど。でも、もう毎年連続でのリリースも11年になりましたし、最初に言ったように続いていることが素晴らしいことだと思います。

「毎年アルバムを作ってすごいってよく言われるんですけど、私にとっては日常としてやってるだけで、別に努力してるわけでも苦しんでやってるわけでもなくて。私は特に怠け者なので苦しかったら続かないだろうし、努力するのも本当嫌いなんですけど。何がすごいって私が常に曲を作っていることじゃなくて、それを待ってくれてる人がいるって実感できることがすごいんです。いつもそれを楽しみにしていて、それを評価してくれる人がいるからやれている。それがすごいことだと思います。そういう人たちがいなかったら、きっと辞めてますよね。もちろん辞めたくはないですけど、現実にはそうもいかない時が来るから、〈また来年があるさ〉とは思わず〈これが最後かもしれない〉って常に思ってやっています」

 

出し切ったので、もうこれ以上は出ないかも

――締めみたいになってしまいましたが、最後の“花鳥風月”の話も教えてください。歌詞の前半がひらがなで後半は漢字なのが、子供と大人を対照的に表しているようです。

「まさに1番が子供の世界で、2番が大人の世界を表しています。〈花鳥風月〉っていう言葉は、本当の意味とは違うかもしれないけれど、人の成長を表しているっていう説を聞いたことがあって、〈綺麗な花だな〉みたいに思う感情は年を取れば取るほど敏感になっていくらしいんですね。子供の頃は〈鳥が飛んでるな〉みたいな単純な感想だったのが、歳とともに深くなっていく。そういう人の成長を表現しています」

――子供の頃の歌詞ってユウさんには珍しい気がします。

「無くはないですけど、子供の世界観をストレートに表しているのは初めてかもしれないですね。〈花鳥風月〉という言葉のそういう意味とか、子供の頃の時間と大人の時間って全然違うなっていう気持ちをテーマとして表現したいと思いました」

――アルバムは最後、この曲で世界観が広がって終わる感じがいいですね。

「そうですね。最後以外は考えられなかったです」

――モバイルサイトのユウさんのブログには、「出し切った感が強いので、もうこれ以上は出ないな」と書き綴られていますが、毎回それくらいの手応えがあるものですか?

「それは毎回思ってるんですけど、手応えがあるっていう意味ではなくて、溜めていた曲のストックを使い切っちゃうっていう意味で。だから〈来年からどうしよう〉って毎回思うんですよね。でも次の年になると、気付いたらまた曲の断片が溜まってるし、これ使えないなって切り捨てたものが〈これ、アリなんじゃない?〉って思えたりもする。それをずっと繰り返して〈また作れてよかった~〉って毎年思うんです」

――『結晶』がリリースされて、次なる曲の欠片はもうできているんですか?

「気付けば溜まってますね、携帯の中とかに(笑)」

――ということは、まだまだ終わらなさそうですね。

「そういうことなんですかね。きっと曲は出来ていくんでしょうね。でも、これからも〈これで最後でも悔いはない〉と常に思ってやっていこうと思っています」