(左上から時計回りに)Shizuka Kanata、ユウ、林田順平、須原杏
 

札幌のインディー・レーベル〈Chameleon Label〉を主宰し、sleepy.abら所属アーティストをプロデュースしつつ、ソロ名義の作品も発表しているShizuka Kanata。元GO!GO!7188、現チリヌルヲワカのフロントマンであり、最近はGO!GO!7188のファンを公言するのんとのコラボレーションも話題を呼んだユウ。ともに自らの創作と並行して数多くのアーティストのサポートを務め、Gen Peridots Quartetでは一緒に活動もしているヴァイオリンの須原杏と、チェロの林田順平。世代もバックグラウンドも異なる4人が集まり、〈突然変異〉で生まれたYAYYAYが、デビュー作となるミニ・アルバム『I’m Here』を完成させた。

ヒップホップ、ベース・ミュージック、ノイズなど、様々な要素が混在したエレクトロニックなトラックに、偏執的に繰り返されるストリングスのループ・フレーズが重なり、そこにポップ・ミュージックとしての強度を与える歌が合わさったYAYYAYの楽曲は、ジャンルの混交が一般的になった時代にあっても、強い記名性を持って響く。〈メタモルフォーゼ〉を由来とするMETAFIVEが、強烈な個の融合によって新たな音楽を生み出したのにも通じる時代性と興奮とが、ここにもあると言っていいだろう。いかにこのメンバーが集まり、アヴァンにしてキャッチーな作品を作り上げたのか、リモートで4人に話を訊いた。

YAYYAY 『I'm Here』 Chameleon Label(2020)

 

突然変異で生まれた音楽

――まずは4人の関係性を紐解きつつ、YAYYAY結成の経緯をお伺いできればと思います。

Shizuka Kanata(アレンジ/キーボード/プログラミング/ミックス)「ユウちゃんはGO!GO!7188時代に『てんのみかく』(2004年)というソロ・アルバムを出していて、僕が2曲に編曲とサウンド・プロデュースで関わらせてもらったのをきっかけに、Shizuka Kanataのアルバムにもゲスト・ヴォーカルとして参加してもらったんです。杏ちゃんとJP(林田の愛称)はsleepy.abの2人がやってる成山内っていうユニットの札幌でのライブのときに、Gen Peridots Quartetが対バンで、あまりの素晴らしさに興奮して、その場でお声掛けさせていただいて。その後は僕のお仕事にも参加してもらったり、それぞれ別々に繋がってたんです」

――杏さんと順平さんは成山さんのソロや、田中(一志/Shizuka Kanataの本名)さんがROTH BART BARONと一緒に開催されている〈Strings〉にも関わられていますね。

Shizuka「杏ちゃんはユウちゃんが参加してくれたShizuka Kanataの曲“Happy Ending”をすごく気に入ってくれてたんです。昔、GO!GO!7188をよく聴いていたという話も聞いて、〈今度一緒に何かやれたら〉って話はしていて」

Shizuka Kanataの2013年作『Divine Hokkkaido』収録曲“Happy Ending”
 

須原杏(ヴァイオリン)「でも、最初はこの曲のヴォーカルがユウさんだとわかってなかったんです。中学のときにGO!GO!7188がめっちゃ流行ってて、カラオケに行けばみんなが歌ってるような世代だったので、一志さんから聞いて、〈あのユウさん!〉っていう(笑)」

――そんな4人が実際に集まることになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

Shizuka「実は最初からこのバンドをやろうと集まったわけではなくて、もともと僕が次のアルバムを作ってるなかで、ユウちゃんが〈次の作品にも参加したい〉と言ってくれたので、まずユウちゃんのための曲を作ろうと思って。で、前々から〈弦の素晴らしい人がいて、今度一緒にやれたら面白いと思ってる〉って話もユウちゃんにしてたので、この4人でレコーディングをすることにしたんです。

そうしたら、僕がどんどん楽しくなっちゃって、みんなの個性が曲にガンガン入ってくるし、これは僕のアルバムというよりみんなのアルバムにした方がいいと思って、〈バンドにした方が面白くない?〉って」

――資料にもあるように、まさに〈突然変異〉的にバンドになっていったと。

Shizuka「そうですね。もともとソロ・アルバムのなかの一曲として作り始めたものが、世代の違うメンバーと一緒に作ることで、アレンジも曲調もどんどん変わっていったので、ホントに突然変異で出来た音楽だなって感じがしてます」

『I’m Here』のトレイラー
 

――ユウさんはこの4人で曲を作る面白味をどんな風に感じていますか?

ユウ(ヴォーカル/ギター)「私は基本的にはギター、ドラム、ベースのバンドをずっとやっているので、ヴァイオリンやチェロが入った作品はさっき話に出たソロ・アルバム以来なんですけど、ずっとまたやりたいことではあったし、それは打ち込みにしても同じで、今回願ったり叶ったりというか。しかも、〈弦が入ってる〉っていうと、すごくきれいな音楽を思い浮かべるかもしれないですけど、実際はすごくパンキッシュなアルバムで、かっこいい4人が……自分で言っちゃいましたけど(笑)、でもホントにかっこいいバンドになったなって」

レコーディング・スタジオでの一枚
 

――杏さんと順平さんはいかがでしょうか?

須原「もともと私は一志さんのアルバムをすごく聴いていて、トラックがすごく好きだったんです。面白い音をたくさん使ってて、ミクスチャーな感じっていうか。なので、私としてはわりかし自然な流れで今ここにいるという感じで、いつの間にかバンドになっていったことに関しては、〈光栄です〉みたいな(笑)」

林田順平(チェロ)「僕も杏ちゃんと一緒で、やっぱり一志さんのトラックとかアレンジがすごく好きで、〈一緒にやろうよ〉って言ってくれたら、〈ぜひぜひ〉って感じで。そこに今回はユウさんが加わって、〈またすごいヴォーカルの人が来たな〉と思ってたところに、一志さんから〈バンドにしようよ〉と言ってもらえたので、〈ぜひやりましょう〉っていう」