グルーヴィーな演奏とメロウネス溢れる歌声で〈ツマミになるグッドミュージック〉を奏でる4人組、YONA YONA WEEKENDERS。先日、待望のファーストアルバム『YONA YONA WEEKENDERS』をリリースしました。そんな彼らのフロントマン、磯野くんの連載が〈ラーメンから歌が聴こえる〉です。

磯野くんはとにかくラーメンが大好き。アルバム『YONA YONA WEEKENDERS』の特集記事では、音楽家としてもラーメン好きとしてもリスペクトしているサニーデイ・サービスの田中貴さんとの対談が実現しました。この連載では、そんな彼が愛してやまないラーメンを、音楽にたとえながら紹介してくれます。

今回は、支那そば屋 こうやに入店。驚くほどに辛いというカライカライそばから聴こえる歌は? *Mikiki編集部

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『YONA YONA WEEKENDERS』収録曲“光の中”

 


激辛デトックスがやめられない

〈激辛〉が好きになったのはいつだったろうか。

小学生の頃、健康のためにとしぶしぶ入団した地元のサッカーチームの炊き出しでうどんが振舞われたことがあった。そのときテーブルに置かれていた七味。普段は嗜む程度の七味だが、その場の雰囲気もあって誰からともなく〈一番辛いうどんが食えるのは誰だ〉みたいな七味を使った遊びが始まった。

保護者たちに〈やめなさい!〉と叱られつつも、調子に乗ってビンの半分くらいをドバドバ入れて啜ってみると、あれ? 意外といける……。僕の予想外のリアクションに困惑するチームメイトの顔が今でも脳裏に焼き付いている。多分これが僕の激辛との最初の出会いだ。

激辛の醍醐味はやはり汗をかくことだろう。メガネを曇らせ、びしょびしょになりながら食べる。垂れる鼻水、腫れる唇(韻踏めた)。そして、店を出て外気に触れると、とんでもなく清々しい気持ちになれる。これを僕は〈激辛デトックス〉と呼んでいるが、今流行りのサ活のように〈整う〉し、お腹まで満たされるしでいいこと尽くめなのだ。

言わずもがな、〈激辛〉と〈ラーメン〉も親和性が高い。激辛ラーメンの代表格、上板橋に本店を構える蒙古タンメン中本をはじめ、スパイスと花椒の効いた痺れ系味噌ラーメンを提供する鬼金棒、名古屋のソウルフードである台湾ラーメンでお馴染みの味仙など、僕も刺激的な一杯を求めていろいろな店を訪れたものだ。

 

トテモトテモカライ、支那そば屋 こうやのカライカライそば

ということで今回は、僕がこれまで食べてきた激辛ラーメンの中でも特に印象に残っている一杯をご紹介したい。

それは僕が仕事で外回りをしていたとき、昼食を取るためにふらっと入った店での出来事。何の気無しに注文したそのラーメンがあまりに辛過ぎて肌着に絞れるほどの汗をかき、堪らずシャワーを浴びに無断帰宅をしたのだった。

あの刺激をもう一度味わうべく向かったのは、四ツ谷駅と四谷三丁目駅の間に位置する老舗のラーメン店、支那そば屋 こうや。あっさりとしたスープに、餡ぎっしりの〈雲呑麺〉が人気の店で、あのタモリさんも常連客なんだとか。ディナータイムは飲み屋としても賑わう。僕も会社の同僚と飲みに訪れたことがあるが、青島ビールと紹興酒が進む大人な味わいの料理は、抜群の美味さだった。

しかし今回の目的は雲呑麺でも、酒のつまみでもない。知るひとぞ知る激辛ラーメン、カライカライそば(1,200円)だ。カライカライ……。大事なことなので二回言いましたということなのだろうか。初めてオーダーしたときも、東南アジア系の店員さんに〈タベタコトアリマスカ? トテモトテモカライ〉と脅されたものだ。ちなみに漢字表記だと〈極辣麺〉。字面が怖すぎる。

 

辛い、でも美味い、辛い、やっぱり美味い……

テーブルに着席し待つこと数分、いよいよ〈トテモトテモカライ〉やつが着丼。いわゆる激辛ラーメンと言えば赤唐辛子の真っ赤なスープを想像すると思うが、このラーメンのスープは少し白濁した一見まろやかそうなビジュアル。辛味は島唐辛子で取っているらしい。目を凝らすと細かく刻まれた深緑の物体が浮かんでいるが、こいつが唐辛子の欠片なのか。

具はなんとも独特で、豚肉とエビや貝柱などの海鮮系に加え、いんげん、レタス、トマト、パプリカなどの野菜がたっぷりと入っている。頂上には白髪葱とパクチーが載り、チャーシューやメンマなど定番のトッピングは見当たらない。普通のラーメンのそれとはかけ離れているが、彩り豊かで爽やかな印象だ。

しかし、一口スープを啜ると、その見た目とは裏腹に鋭い辛味が襲う。〈カライ〉というより〈イタイ〉という表現が的確だろうか。まるで舌と唇を洗濯バサミで挟まれているかのようだ。辛さに慣れる為、ゆっくり時間をかけてスープを頂く。もうこの時点で汗びしょびしょ。

少ししたところで麺をリフトアップする。麺は柔らかめに茹でられた細麺。スープがとろみを帯びているので麺にしっかりと絡み付き、これがまたとんでもなく辛い。咽せかえりそうになるのを必死で堪えながら、慎重に食べ進める。

相変わらず辛いままではあるのだが、慣れてくると刺激の向こう側にある動物系の優しい出汁も感じ取れた。ベースは支那そばのスープなのだろうか? どこか食べ慣れた安心感もありつつ、パクチーや魚介、島唐辛子の風味とそのビジュアルも相まって、異国感も感じさせる。そしてシャキシャキの生野菜が今まで味わったことのない食感のハーモニーを奏で、これがクセになる。

初めて食べたときもそうだったが、辛い!のループを抜け出した瞬間に、複雑でいてやさしいスープの旨味や、面白い食感など、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような〈ユーモア〉が次々に感じられ、箸が止まらなくなる。辛い、でも美味い、辛い、やっぱり美味い……。

スープの完飲は流石に難しかったが、麺と具はしっかり完食。ジンジンと熱を帯びた唇を冷ますためお冷を一口。いやはや、やはり激辛を食べたあとの水は至高の美味さだ。汗をしたたらせながらスープだけになった丼を見ると、なんとも言えない達成感に包まれた。

 

汗が噴き出すような刺激とインスピレーションを与えてくれるcero『My Lost City』

そんなこうやのカライカライそばから聴こえるのは、2012年にリリースされたceroのセカンドアルバム『My Lost City』。

 ロック、ジャズ、ファンク、ヒップホップ、南米音楽などさまざまなジャンルを取り込んだ無国籍なサウンドは、レーベルオーナーの角張(渉)氏がリリース時のコメントで〈彼らの才能が爆発した〉と表現していたように、まさにおもちゃ箱をひっくり返したかのようなワクワク感に溢れている。

2011年の震災の記憶がまだ生々しかったことが洪水のイメージへと繋がり、呑み込まれそうになった街が丸ごと船に乗って浮上したという世界設定で進むこの作品は、1曲目“水平線のバラード”から航海が始まると、跳ねるようなピアノとトランペットが印象的な2曲目“マウンテンマウンテン”、エキゾチックな香りのダンスナンバー8曲目“Contemporary Tokyo Cruise”、底なしの多幸感を纏う10曲目“さん!”と、虚構の都市を舞台にユーモアたっぷりにクルーズしていく。

ceroの2012年作『My Lost City』収録曲“マウンテンマウンテン”
 

ラストを飾るのは、航海を終え現実世界に戻る11曲目“わたしのすがた”。無機質なビートには本作の中でも異質な印象を受けるが、このアルバムに鋭い辛味のアクセントを加え、強烈なメッセージ性を感じさせている。複雑だけどポップで、汗が噴き出すような刺激とインスピレーションを与えてくれる、そんな素晴らしい一枚だ。

店の外に出ると冬の匂いを帯びた風が吹き抜け、火照った体を冷ましてくれた。カライカライそばでしっかり〈整った〉僕は、何とも清々しい気分で店を後にした。

その数時間後、僕がトイレの住人と化したのはいうまでもない。

 

支那そば屋 こうや
東京都新宿区四谷1−23 上野KGビル1F
03-3351-1756

 

 


RELEASE INFORMATION

YONA YONA WEEKENDERS ファーストアルバム『YONA YONA WEEKENDERS』

YONA YONA WEEKENDERS 『YONA YONA WEEKENDERS』 スピードスター(2021)

リリース日:2021年11月3日
品番:VICL-65586
価格:3,300円(税込)

TRACKLIST
1. 思い出in the sky
2. 終電で帰ります
3. Open your eyes
4. リルバズ
5. Good bye
6. 泡沫の夢
7. いい夢
8. Night Rider feat. 荒井岳史(the band apart)
9. Tick Tack
10. 光の中

 

LIVE INFORMATION

OSAKA NIGHT PARADE ~Vol.4~ supported by SUPPLIER
2022年1月22日(土)大阪 味園ユニバース
出演:浪漫革命/YONA YONA WEEKENDERS and more
問い合わせ:キョードーインフォメーション TEL 0570-200-888(11:00~16:00 日祝休)

YAJICO GIRL presents YAJICO LABO
2022年2月5日(土)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
出演:YAJICO GIRL/YONA YONA WEEKENDERS
問い合わせ:渋谷CLUB QUATTRO TEL 03-3477-8750

145:FOURTEEN FIVE PRESENTS『"215"-Neeko's Day』
2022年2月15日(火)東京・渋谷 THE GAME
出演:YONA YONA WEEKENDERS/waterweed/HOLLOW SUNS/Bearwear/145:FOURTEEN FIVE/saladdays
問い合わせ:https://boomanix1.shop-pro.jp/secure/?mode=inq&shop_back_url=https%3A%2F%2Fboomanix.tokyo%2F&shop_id=PA01341603

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