4人組オルタナティブロックバンド、pollyの通算3枚目となるアルバム『Pray Pray Pray』がリリースされる。
事務所を独立し、自ら主宰するレーベル14HOUSE.より前作『Four For Fourteen』(2020年)を経て完成させた本作に於いて、全ての楽曲を手がけるフロントマン越雲龍馬はコンポーザーとして飛躍的な進化を遂げている。シューゲイザーやドリームポップ、ポストロック、エレクトロニカ、ゴスペルなど様々なジャンルを横断しつつ、J-Popに影響された美しいメロディーとコードワークを融合。すでに失ってしまった大切なものや、人との〈再会〉を祈る本作のテーマは、多かれ少なかれ誰もが一度は心に抱いたことがあるはずのもの。キャリアに裏打ちされたバンドアンサンブルや、越雲のジェンダーレスなハイトーンボイスも健在だ。
物事の始まりには必ず終わりがあり、だからこそ全てのものは美しく愛おしい。それでもこの一瞬が永遠に続くことを、私たちは祈らずにはいられない。本作『Pray Pray Pray』は、紛れもなくpollyの、現時点での最高傑作である。
インスピレーション源はアイスランドの風景
――新作『Pray Pray Pray』、本当に素晴らしいアルバムでした。
「ありがとうございます」
――まずは、どのようなモチベーションでスタートしたのか、その辺りからお聞かせいただけますか?
「きっかけとなったのはネットサーフィンしているときに見つけた、アイスランドのおそらく白夜の風景を撮影した写真でした。アイスランドの音楽は以前から大好きで、それにも通じる世界というか……白い靄がかかっているような視覚的なインスピレーションを、自分たちのサウンドにも落とし込みたいと思ったのが最初のモチベーションですね。結果的にそういう作品になったかどうかは分からないですが」
――前作『Four For Fourteen』や、その前のEP『FLOWERS』(2019年)とは違うサウンドにしようという意識もありました?
「ありました。これまでの作品を手がけてくださったtriple time studioの岩田純也さんのエンジニアリングも僕は大好きなのですけど、今回のサウンドを目指すにあたって、新たにIvy to Fraudulent Gameの福島由也くんにお願いしたのもそれが理由です」
J-Popをリファレンスに追求したコード感
――今回はメロディーの良さがより際立っている印象があります。
「コロナ禍になって、バンドと一緒にスタジオで合わせることが難しくなったとき、ちゃんと音楽理論みたいなものをイチから勉強し直そうと思ったんです。コードワークも研究しましたし、そのコードワークに対して〈もっとハマるメロディーがあるんじゃないか?〉など、以前よりもさらに突き詰めるようになりました。その際、J-Popからのリファレンスもかなり多かったので、その影響はおそらく出ていると思いますね」
――ちなみに、リファレンスとしていたアーティストは?
「例えば嵐やPerfume、米津玄師さん、Official髭男dismなど、ジャンル問わず様々なアーティストの作品を聴きました。特にヒゲダンは計算され尽くしたと言ってもいいくらい緻密なコードワークとメロディーだと思いましたし、そういうものをアナライズして自分の中に取り込んでいきましたね。〈なぜ、ここで転調すると気持ちいいのだろう〉〈ここにはどんなクッションコードが入っているのだろう?〉といったことを突き詰めていくうちに、だんだん腑に落ちるようにもなっていきました」
――確かに今作は、転調の仕方が印象的な楽曲が多いと思いました。それに、例えば“窓辺”などヨナ抜き音階を用いたオリエンタルなメロデイーが印象的ですよね。その辺りは今おっしゃったPerfumeの楽曲からの印象を感じます。
「それもありますが、僕がPerfumeを好きなのは、バックトラックは洗練されたエレクトロミュージックなのに、メロディーとコードには日本人の琴線を揺さぶる要素がたくさん入っていて、それが違和感なく融合しているところなんです。
そこで肝になるのが〈コード感〉だと思いました。J-PopやJ-Rockで使っているようなコード展開をそのまま用いてしまうと、目指しているものとはかけ離れてしまう。なのでバランスにはこだわりましたね。
今回〈ボウイング奏法〉も多用しているのですが、ずっと同じ音をボウイングしている中でコードが展開しても、ちゃんと馴染むように細かい部分で調整したりしています」