さまざまな別れを経たバンドゆえに鳴らせる、美しさと温かさ
憂いと儚さを帯びたハイトーン・ヴォイスと、シューゲイザーやドリーム・ポップに影響を受けた美しいサウンドが魅力のロック・バンド、pollyが新体制初作品となるEP『Heavenly Heavenly』をリリースする。2022年にメンバー・チェンジを経て、再始動を遂げた彼ら。特に、志水美日（キーボード／コーラス）の加入は大きなトピックだ。
「彼女はクラシックを経由してきたので、ピアノのアルペジオなどに繊細なニュアンスが出せるし、楽曲の情緒を忠実に表現できるようになりました。女性の声が入ったことでコーラスを含め、歌のスケールも広くできています」（越雲龍馬、ヴォーカル／ギター／プログラミング：以下同）。
冒頭の“MORNINGRISE”は、さまざまな想いを錯綜させながらも清々しい余韻を残す。
「僕と高岩（栄紀、ドラムス）はメンバーの脱退。志水はLILI LIMITの解散とMO MOMAからの脱退。EP全曲でベースを弾いてくれて、ライヴにも参加してくれているカミヤマリョウタツはPELICAN FANCLUBの脱退と、演奏した全員がバンドでの別れを経験した事実をテーマに作りました。そんな我々はどこかで過去を羨んでしまうときもあると思う。それでもいまの自分たちがいちばん良いと感じていて、素敵な未来に向け進んでいるということを書きたかったんです」。
サウンドは「ただ綺麗なものにはしたくなかった」そうで、「“ごめんね”ではノイジーなギター・バッキングにクリーンなピアノのアルペジオを、“Kikoeru”では逆の発想でセンシティヴなピアノにファズで歪ませたボウイング奏法のギターを共存させました」と語る越雲。「お互いが会えるうちに伝えておくべきことがあるんじゃないか」という考えから自身の母親に向けて初めて書いた“K”など、温かみが感じられるのも今作の特徴と言える。
「歌詞も肩肘張らずに書けました。排他的だけど人間的というか、両極端にあるはずのものの共存がpollyのアイデンティティーになった気がします」。
pollyの近作。
左から、2020年作『Four For Fourteen』、2022年作『Pray Pray Pray』（共に14HOUSE.）
