DANCE BETWEEN THE LINES
[特集]ダンスフロアはいま、どこにある?
オンもオフもなく、多才な音楽家が自由に活躍する昨今。何かと何かの間に広がる巨大なフロアは、こんなに楽しいダンス・ミュージックで揺れているよ!

 


ただ良い曲だけをめざして〈と〉をいくつも繋いだら……

〈歩〉から〈と金〉へ

 ボカロPからキャリアを出発させたlivetuneがさまざまなヴォーカリストを迎える〈adding〉シリーズ。約2年に渡る同プロジェクトが、このたびついに一枚のアルバムとして形になった。そのタイトルは『と』。それはもちろん〈adding〉を意味する〈と〉でもあるし、他にはこんな背景もある。

 「これをきっかけとして実際に会って、それから友達になった人も多いんです。だから友達の〈と〉だったり、〈together〉の〈と〉でもある。ヴィジュアル・イメージが将棋の駒なのは、僕はひとりでインターネットに曲を上げるところからスタートして、いまはいろんな人と曲を作れるようになったというところで、〈歩〉から敵陣に攻め込んで〈と金〉になるっていう、ヒップホップで言うところのメイク・マネーみたいな意味もあります。そんなこともあって、検索しづらい言葉ではあると思うんですけど、世界一短いタイトルになりました」。

livetune 『と』 トイズファクトリー(2014)

 〈と〉の輪は広がりを増し、今作には新たに原田郁子(クラムボン)、YUKA(moumoon)、NIRGILIS、鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)といった具合に、livetuneでしかあり得ない豪華絢爛な面々が集結している。

 「原田さんは単純に昔から好きで。クラムボンのリミックスをやらせてもらったりして、最近はミトさんと話すことも多いので、ミトさんに〈原田さんに歌ってほしいんですよ〉って言いました。立石の飲み屋で(笑)。“ファンタジア”はクラムボンを好きな方にも気に入ってもらえるような曲にしたいなと思って作りました。原田さんの包み込むようなヴォーカルは何かが始まる感じがするというか、(アルバムの)スタート感が合うと思うんです。1曲目がピアノと原田さんの声で始まるっていうのは最初から僕のなかで決まっていました」。

 制作の順序としては「まずヴォーカルを決めていきました。その歌い手の人がどういう曲を歌ったらいちばんピッタリくるかなっていうのを考えてやってます」とのことで、結果的にその音楽性の幅広さは途轍もないものになっている。アルバムに先駆けてシングル・カットされる“千の翼”は9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎をヴォーカルに迎えたハードでカオティックなロック・ナンバー。これがlivetune作品として収録されていることに驚く人も多いのではないだろうか。

 「何が9mmの凄さなんだろうって考えたときに、卓郎さんのヴォーカルの存在感はもちろんなんですけど、やっぱり滝善充さんのギターが凄いよなと思って。じゃあギターだろうということで、がんばって弾いて作りました。本番では滝さんに弾いてもらっているんですけど、フレーズはだいたい自分で考えてます。それとこの曲はアニメ(『Re:␣ハマトラ』)の主題歌なんですけど、スタッフ側から〈ソリッドなバンド・サウンドが欲しい〉っていうオーダーもあったので、こういうサウンドになりました。ギターはいままでも生っぽいニュアンスが欲しいときにちょこちょこ登場してはいたんですけど、僕もここまでやるとは思ってなかったですね(笑)」。